枯葉より寂しい?
秋、枯れ葉の季節は倭国での話。沖縄で数少ない落葉樹が葉を落とすのは晩秋から。記録的残暑が12月まで続いた2015年は、畑の周りにある落葉樹、モモタマナとサクラの葉が落葉し始めたのは12月中旬だった。記録的残暑、何しろ12月下旬になっても那覇の最高気温はずっと20度超え、時には27度超えもあった。「冬、来るかなぁ、葉っぱ落としてもいいのかなぁ」と沖縄の落葉樹たちは迷ったに違いない。
さて、地球温暖化も気になるが、ここは蛾の紹介。
朽葉は広辞苑に「朽ちた落葉」とあり、枯葉は同じく「枯れた草木の葉」とある。朽ちると枯れるどう違うか解りにくいので、ならばこう表現しよう、「朽ちた人」と「枯れた人」。これなら想像しやすいと思う。「朽ちた人」は「死んだようになった人」で、「枯れた人」は「欲望が消えた人」と想像できる。ということで、「枯れた人」はまだ話ができるが、「朽ちた人」はもはや話しかけることもできない。とても寂しい人に感じる。
クチバと名のつくガの種類はいくつもある。その由来は、正確なところは判らないが、おそらく朽葉の意で、体色がそのような色をしているからだと思われる。図鑑の写真を見て私が感じた限りで言えば、確かにどれも地味な色をしている。
地味なのでモテない、モテないのでクリスマスも独りぼっちなのだろうか?いやいや、それは私のことだ。ガたちはきっと、恋人がいて子孫を残している。
ナタモンアシブトクチバ(鉈紋足太朽葉):鱗翅目の昆虫
ヤガ科 琉球列島、台湾、インド~オーストラリアに分布 方言名:ハベル
名前の由来は資料が無く不明。漢字表記の鉈紋脚太朽葉は全て私の想像。鉈紋、脚太、朽葉の内、鉈紋については『沖縄昆虫野外観察図鑑』に「翅は・・・黒褐色帯の内側は強く湾曲し、外側は2ヶ所で後方へ突出する」とあるその黒褐色帯の形が鉈の形に見える。脚太については、文献の写真も私の写真も足が見えないが、たぶん太いのであろう。朽葉は、クチバと名のつく蛾は『沖縄昆虫野外観察図鑑』に載っているだけでもヤガ科に17種ある。そのどれも翅色が赤褐色とか黒褐色とか灰褐色とある。~褐色というその色が朽葉に喩えられているのではないかと想像する。枯葉でもいいのではと思うが。
食草が琉球列島以南に分布する植物ということで、本種の分布も琉球列島から南。沖縄では「山麓や平地の林で採れる普通種」とのこと。
前翅長23~25ミリ。成虫の出現は3~11月。食草はオオシマコバンノキ。
成虫
記:ガジ丸 2015.12.28 →沖縄の動物目次
参考文献
『ふる里の動物たち』(株)新報出版企画・編集、発行
『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
『沖縄昆虫野外観察図鑑』東清二編著、(有)沖縄出版発行
『名前といわれ昆虫図鑑』偕成社発行
『いちむし』アクアコーラル企画発行