正月のウバ
同僚の若いMはヘビースモーカーである。車を運転しているとき、あるいは休憩時間のときなどはチェーンスモーカーとなる。禁煙したら、と言いたくなる。
という私もじつは喫煙者である。喫煙については、私は「依存症にならない程度であればいいんじゃないの」という緩い考えを持っている。「タバコなんて世の中から抹殺してしまえ」と望んでいる人々も多くいるであろうが、まあ、抹殺されたとしても構わないのであるが、「抹殺してしまえ」という気分が、私は好まないのである。
タバコは、吸っている人の健康だけでなく、その周りにいる人々の健康も害しているから悪である。というのであれば、地球温暖化は人類の命を縮める可能性が大きい。したがって、人類の健康のためには電気を使わない、車に乗らない、飛行機も電車も使わないような生活を人間はするべきである、とも言って欲しい。
「鯨を食ってはいけない」などとおっしゃる人々も多くいる。絶滅の危機にあるからという理由であったが、絶滅の危機が去ると、今度は知能の高い動物だからという理由をつけてきた。いったい、鯨と 牛の知能にどの程度の差があるというのだろう。獣を飼って食うのが人間の自然の営みであるならば、獣を狩って食うのはなおさらのこと。命を頂き、それを我が命に替えるという人間の崇高な営みである、と私は思う。
沖縄の正月の伝統料理には、豚肉、かまぼこ、天ぷらなどどこにでもある普通の食品がほとんどだが、他の地域ではあまり見ないものもある。題に「正月のウバ」と書いたが、正月の婆さんは料理の準備に忙しいという話などでは無い。ウバは姥のことでは無く、正確にはンバと発音し、さらし鯨のことを言う。鯨の脂を茹でたもの。
年末に、才色兼備の若妻から珍味を頂いた。鯨の筋を煮たもの。これがなかなか美味しくて、鯨と言えば、しかも正月と言えばンバがあったじゃないかと思い出したのである。さほど美味しいものでは無く、私の好物でも無く、ここ十年くらい食っていなかったのだが、思い出したのも何かの縁と、久々に、買って食ったのであった。
記:ガジ丸 2006.1.4 →沖縄の飲食目次
参考文献
『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行