ガジ丸が想う沖縄

沖縄の動物、植物、あれこれを紹介します。

ブタ

2011年03月11日 | 沖縄の動物:哺乳類

 沖縄の古い民家、例えば、国指定重要文化財となっている中村家住宅などを訪ねると、屋敷の中に豚を養うであろう一角を見ることができる。中村家住宅は300年くらい前の建物だが、そんな大昔まで遡るまでもなく、私が子供の頃、ほんの4、50年前だって、豚小屋のある家はさほど珍しいものでは無かった。当時、私の家は那覇市三原という、現在のモノレール安里駅から徒歩10分とかからない場所にあったが、そんな街中でも豚小屋を見ることができた。識名園から徒歩10分とかからない那覇市繁多川に伯母一家が住んでいたが、伯母の家は山羊、鶏、アヒル、そして、豚を飼っていた。
  子供の頃、それほど身近な動物だった豚だが、今は全く身近では無い。確かな記憶では無いが、私はここ20年ばかり豚さんの姿を見ていないと思う。動物としての豚を紹介しようと思って、写真を撮らなきゃあと思って、あちこち散歩をしている最中も「豚小屋ねぇかなぁ」と意識しながら歩いていたのだが、見つからない。
 「昔は豚小屋なんてどこにでもありましたよねぇ」と、行きつけの散髪屋で、髪を切って貰いながら親父に訊いた。「あー、あったよ。石嶺は田舎だったからなぁ、すぐ近所にもいくつかあったよ。」とのこと。私の記憶は正しかった。
 
 某スーパーで仕入れ担当の親分をしている友人のKYに、「豚さんの顔が見たい。昔はあちこちで豚さんに会えたんだが、今は、田舎を散歩していても、牛や山羊や鶏は見つかるが、豚はまったく見えない。どこに行けば会える?」と訊いた。
 「昔みたいに個人が小規模で養っている豚はもういない。今の養豚はある程度の規模を持った養豚場に集約されている。だから、養豚場へ行けば豚はいる。しかし、養豚場は個人が勝手に入ることはできない。口蹄疫の問題があるからだ。」とのこと。
  その数日後、友人の脱サラ農夫KSに、「そっちの畑の近くに養豚場ってないか?」と訊いた。「あるよ、畑から車で5分とかからない場所だ。」ということで、さっそく、その場所へ出かけた。養豚場はあった。しかし、門があり、門は門扉で閉じられていて、中に入ることができない。豚舎はまた、そこから2、30メートルは離れていて、豚の姿どころか、鳴き声もよく聞こえなかった。警戒は厳重なようであった。

 それから一ヶ月ほども経って、仕入れ担当親分から連絡があった。「仕事で養豚場へ行くことがあ る。俺と一緒なら豚に会える」と彼は前に言っていて、その連絡であった。彼は行かないが、彼の部下が行くので「彼と一緒に」ということであった。
 その部下、Yさんから事前にメールがあった。私への質問だった。「最近、外国に行った事はありませんか?また他の畜産関係の農場に出入りしていませんか?かぜやインフルエンザにかかっていませんか?家族にインフルエンザがいませんか?」といった内容。その全てに「いいえ」でないと、案内はできないらしい。厳重である。

 全てが「いいえ」であった私は、Yさんに案内され て、豚舎を見学することができた。豚さんの顔を見るのはおそらく十年から二十年以上ぶり。豚さん達は相変わらずの顔をしていたが、何か、昔の豚さんとは印象が違う。どこだ?体つきだ。
 「私が以前によく目にしていた豚とは体格が違いますね、スマートですね。」
 「昔は残飯などを与え、豚が栄養過多になって、健康状態も肉質も悪かったのですが、現在では配合飼料によって豚の肉質や健康が管理されています。」とYさんは言う。
 そう、豚は雑食性で、昔は餌とするために農家の人が家々を回って残飯を集めていた。そういう 光景は私が中学生の頃まではよく見かけた。

 ブタの餌というと、戦前までは人糞だったと『沖縄身近な生き物たち』にある。トイレの下にブタを飼い、人が糞をすると、それをブタが食べる、そのトイレのことをウヮーフール(フールが便所の意)と言う。ブタの餌が人糞であったことも、ウヮーフールというものがあったということも、戦前を生きた父母から私は聞いている。
 ブタは食用として世界に広く飼育されている。沖縄でも日常に欠かせない食材。倭国が仏教の普及で肉食が禁じられていた頃も、仏教の教えは無視して沖縄はブタを食った。その頃は庶民の日常食ではなく、盆正月などの特別食だったらしいが。
 沖縄にブタ肉料理は数多くある。赤肉や脂を食い、顔も食えば、耳も食い、内臓も食って、爪先まで食う。戦後は庶民の日常食となり、ブタに感謝している。
 
 イノシシを家畜化したもので、沖縄では17世紀頃から養豚が広がった。
 
 私が子供の頃は、豚の餌は残飯だった。そのせいか、豚は臭かった。
 
 私が子供の頃は無かったと思うが、もっと昔、豚の餌は人糞だった。
 
 現在、豚の餌は配合飼料で、匂いも和らいだらしいが、やはり臭かった。
 
 臭いと言っても、たぶん昔ほどでは無い。十分我慢できる。
 
 口蹄疫の関係であまり近付けなかったが、触っても構わない程の臭さ。

 ブタ(豚):ウシ目の家畜
 イノシシ科の哺乳類 イノシシを家畜化したもの 方言名:ウヮー
 ブタの名前の由来は資料が無く不明。イノシシを家畜化した後にブタと名前が付いたと思うが、シシ(イノシシの古い呼び名)がブタとは革命的な変化だ。何事があったのか興味が湧く。あるいは、「太いシシだなぁ」とどこかの誰かが仰って、「太い」が「フト」→「ブタ」と変化した、なんて、単純な話なのかもしれない。
 方言名のウヮーは、鳴き声からだと私は思う。ブタの鳴き声、倭国では「ブー、ブー」のようだが、沖縄のブタは「ウヮー」と鳴く。少なくとも私にはそう聞こえる。
 『沖縄大百科事典』に、沖縄への伝来はいつごろか不明で、甘藷(サツマイモ)を栽培するようになって庶民の生活が安定した17世紀ころから養豚が広く普及したと記述されている。『沖縄身近な生き物たち』も同様の記述があった。
 イノシシを家畜化した結果、野山を駆け回るイノシシとは体型が異なっていった。運動せず食べてばかりの人が太るのと同じようになった。太って、皮下脂肪が増えた。きっと運動能力も低下している。ただ、嗅覚はイノシシと同じく鋭いとのこと。
 肉は食肉として、世界で広く食されている。皮は皮革製品に利用される。多くの品種があって、沖縄ではアグー(純粋種はごく少ないらしい)豚が有名。

 記:2011.1.25 ガジ丸 →沖縄の動物目次

ジャンル:
ウェブログ
この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加
« お疲れ様いろいろ | トップ | ヒージャー »

トラックバック

この記事のトラックバック  Ping-URL
  • 30日以上前の記事に対するトラックバックは受け取らないよう設定されております。
  • 送信元の記事内容が半角英数のみのトラックバックは受け取らないよう設定されております。
  • ※ブログ管理者のみ、編集画面で設定の変更が可能です。