ガジ丸が想う沖縄

沖縄の動物、植物、あれこれを紹介します。

クロイワツクツク

2011年06月03日 | 動物:昆虫-カメムシ・セミ

 夏の終わりを告げる声

 男の子の癖に昆虫に興味の無かった私は、子供の頃、友達に誘われて蝉採りなどをやったのではあるが、セミの正式名(和名ということ)はちっとも覚えなかった。ただ、友人たちが言うナービカチカチ(アブラゼミ)、サンサナー(クマゼミ)などの方言名は覚えた。でも、怠け者の私は、どのセミがどれであるかは特定できなかった。
 「ジーワッ、ジーーーーーーーワッ」と鳴くセミがいる。方言名をジーワと言う。夏休みが終わる頃に鳴くので、何だか切ない気分になる鳴き声だった。これもその方言名は覚えた。姿は特定できないが、鳴き声だけはしっかり脳味噌に刷り込まれている。この鳴き声を聞くと、大人になった今でも何となく切ない気分になってしまう。

  アブラゼミ、クマゼミは今でも家の周りでよく聞くが、ジーワの声が数年前から少なくなった。去年今年は、家の周りではほとんど聞いていない。地球温暖化のせいで生息数が少なくなったんだろうかと、ちょっと心配になる。
 9月、鹿児島から友人Nが遊びに来た。ヤンバル(沖縄島北部の通称)ドライブを楽しむことにした。朝、Nを拾いに恩納村山田にあるホテルへ行く。Nを待つ間、ホテルの近辺を散歩する。私の家の近辺では1回しか聞こえなかった「ジーワッ、ジーーーーーーーワッ」の声が、そこではたくさん聞こえた。地球温暖化は進行していても、ヤンバルの自然は、そう簡単には衰退しない逞しさがあるのかと、ちょっと安心した。

 
 クロイワツクツク(黒岩つくつく):半翅目の昆虫
 セミ科 南九州、琉球列島に分布 方言名:ジーワ
 クロイワは、たぶん黒岩恒さんの名に由来している。黒岩さんは高知県の人であるが、明治後半から大正にかけての約30年間沖縄に住み、沖縄の教育、文化に大きな貢献をした人。であるが、不勉強の私はその名前の読みさえ知らなかった。恒はひさしと読む。クロイワと名のつくものは他にクロイワゼミ、クロイワザサなどがある。
 本種はツクツクボウシと亜種関係にあるためツクツクとつくが、ツクツクとはツクツクボウシの鳴き声からきているとのこと。「おおしいつくつく」と鳴くらしい。ただし、クロイワツクツクはそのような鳴き声では無い。「ジーワッ、ジーーーーーーーワッ」というふうに聞こえる。そこから方言名がジーワとなっている。
 沖縄では夏の終わりを告げるセミとして知られている。耐えに耐えていた夏の暑さが、もう少しで終わるという安堵感を「ジーワッ、ジーーーーーーーワッ」は与えてくれ、緩やかな時間の流れに溶けていってしまいそうな気だるさも感じさせる。
 体長30ミリ内外。成虫の出現は8月から11月。
 ちなみに、本種の学名はMeimuna kuroiwae。Meimunaはツクツクボウシ属のこと。その本家ツクツクボウシの学名はMeimuna opalifera。沖縄には他に、
 オオシマゼミMeimuna oshimensis、イワサキゼミMeimuna iwasakiiなどがいる。

 記:ガジ丸 2006.11.28 →沖縄の動物目次

 参考文献
 『ふる里の動物たち』(株)新報出版企画・編集、発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄昆虫野外観察図鑑』東清二編著、(有)沖縄出版発行
 『沖縄身近な生き物たち』知念盛俊著、沖縄時事出版発行
 『名前といわれ昆虫図鑑』偕成社発行