田舎だった名残
現在、私は首里石嶺町に住んでいて、職場も首里石嶺町にある。高校生の頃の一時期、石嶺町の隣りの汀良町に住んでいたこともある。5分も歩けば石嶺町になる辺りだ。その頃既に、石嶺町には大きな市営団地があり、町は発展していたが、それより以前、私が小さな子供だった頃はまだ、サトウキビ畑の残る田舎だったらしい。
田舎だった名残は今も少し残っている。私の実家のある那覇市泊に比べれば緑が断然多い。虫や鳥の数も多い。「最近、スズメを見ないが、お前の所にはいるか?」と先日、父に聞かれたが、確かに泊ではスズメを見ない。スズメ以外のヒヨドリやシロガシラ、キジバト、メジロ、イソヒヨドリなどもほとんど見かけない。それらは、私の住む近辺には煩いほどいる。お陰で私は、名前と姿と鳴き声が一致する鳥の数が父より多い。
上に挙げた鳥は、シロガシラ以外は父も知っている。シロガシラは近年になって定住するようになったものだが、それ以外は昔からいる。豊かな自然が残っていた昔、それらの鳥は、今の石嶺町よりもっとずっと多くいたに違いない。
ヒヨドリは、父の歳くらいだとスーサーという方言名で有名。形はヒヨドリに似ているが、ヒヨドリより少し小さく、色はまったく違う鳥がいる。その鳥もまた、知り合いの年配の人はスーサーと呼んでいた。いろいろなスーサーがいるもんだとその時は思ったのだが、後日調べると、それはイソヒヨドリであった。ヒヨドリとは科が違う。
イソヒヨドリと同じ位の大きさで、顔も姿も似ているが、よく見るイソヒヨドリと色模様が違うものもいる。それはイソヒヨドリの雌。石嶺町ではどちらも多くいる。
イソヒヨドリ(磯鵯)
スズメ目ツグミ科の留鳥 方言名:イシスーサー、カーラバンサー
ヒヨドリと付くが、ヒヨドリはヒヨドリ科で、本種はツグミ科となる。見た目(私の経験ではおそらく雌の)が似ているということであろう。方言名も和名と同様のイシスーサー(磯のヒヨドリ)。もう一つの方言名カーラバンサーが面白い。カーラは瓦、バンサーは番をする者。高い所でさえずる習性があることからその名がきているらしい。
イソと付くくらいだから生息場所は海辺なのだろうと思ったが、文献には海岸などの岩場の他に、市街地ともある。また、「近年市街地でも普通に繁殖している」とも書かれてある。確かに、私の住む近所でもよく見かける鳥の一つとなっている。
全長は23~24センチ、雄のさえずりはツツ、ピーコッコと文献にある。私にはチュルチュルチルーとかいう風に聞こえる。高いところで長く鳴いている。
イソヒヨドリ雄正面から
近年市街地でも普通に繁殖しているとのこと。近所でもよく見かける。
イソヒヨドリ雌横から
方言名のカーラバンサー、カーラは瓦、バンサーは番をする者。
イソヒヨドリ雌正面から
高い所でさえずる習性があるが、低い塀の上でもよく見かける。
記:ガジ丸 2009.11.10 →沖縄の動物目次
参考文献
『ふる里の動物たち』(株)新報出版企画・編集、発行
『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
『沖縄の野鳥』沖縄野鳥研究会編、(株)新報出版発行
『いちむし』アクアコーラル企画発行