芸術家のカミキリ
20年ほど前の数年間、私は木工を趣味としていた。趣味の範囲を少々超えることもあったりして、木工を本職としている人たちと知合うことができた。彼らからは木工に関する様々なことを学んだ。切り方、組み方、磨き方、塗り方など。そして、材に関することも学んだ。材とは木材のこと、木工に使用する木材のこと。
沖縄の木工材としては、その頃、リュウキュウマツが注目されていた。リュウキュウマツは大径材が入手しやすいという利点はあったが、油分が多く、乾燥した時に変形しやすいという欠点があった。県の施設に大型乾燥機が導入されて、その欠点をある程度和らげることができたらしい。で、リュウキュウマツの使用が増えたらしい。
昔から木工材、家具材として利用されたのはセンダン。センダンは木肌、木目がとてもきれいで、加工しやすいとのこと。それについては、私も実体験して確認している。
他に、「これは面白い」と思ったものがシマグワ、木工家の一人に見せて貰ったシマグワの材は、くねくねと曲がった穴がいくつも空いてて、それが面白い模様になっていた。穴の空いた原因を訊いた。「カミキリムシの幼虫に食われているんだ。」とのことであった。それからだいぶ経った2、3年前に、リュウキュウクワカミキリの存在を知る。
リュウキュウクワカミキリ(琉球桑天牛):甲虫目の昆虫
カミキリムシ科 沖縄島と奄美大島の特産種 方言名:カラジクェー
カミキリムシの漢字、天牛は広辞苑にあった。広辞苑には他に髪切虫ともある。天の牛は想像しにくいが、髪切虫なら何となく解る。カミキリムシは顎が強いらしい、髪の毛をスッパリ切るほど、という意味であろうと思う。本種はクワを寄主とし、奄美諸島、沖縄群島に分布することからリュウキュウクワと付く。
方言名のカラジクェーは『いちむし』(アクアコーラル企画発行)に「顎で髪の毛を切らせる遊びがあったことからカラジ(髪の毛)クェー(食う者)」とあった。
体長は28~40ミリ内外、成虫はシマグワの樹皮を食べ、幼虫はシマグワの幹に潜入して、内部を食害する。八重山にはヤエヤマクワカミキリが生息する。
顔
記:ガジ丸 2009.9.3 →沖縄の動物目次
参考文献
『ふる里の動物たち』(株)新報出版企画・編集、発行
『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
『沖縄昆虫野外観察図鑑』東清二編著、(有)沖縄出版発行
『沖縄身近な生き物たち』知念盛俊著、沖縄時事出版発行
『名前といわれ昆虫図鑑』偕成社発行
『日本の甲虫』(株)北隆館発行