ガジ丸が想う沖縄

沖縄の動物、植物、あれこれを紹介します。

発明021 ニーブタワタブタ

2007年11月16日 | 博士の発明

 マナが恋をして、振られて、旅に出て、マミナ先生がユクレー屋の手伝いをして、マナが帰ってきて、モク魔王が久々に顔を見せて、グーダもやってきて、などなど、このところいろいろあってすっかりご無沙汰していたが、先日、久しぶりにシバイサー博士の研究所を訪ねた。ドアをノックすると、「はーいっ」とゴリコの声がして、ドアが開いた。ワンワンワンとガジポも歓迎してくれる。ゴリコとガジポとも久々であった。
 「やあ、ゴリコちゃん、久しぶりだね。元気そうだね。」
 「ハイサイおじさん。ちゃー元気さあ。」
 「何だいそれ、博士に教えてもらったの?ウチナーグチ。」
 「うん、ハイサイおじさん、ハイサイおじさんって歌、教えてもらった。面白い歌、もっとあるよ。」
 「へぇー、そうなの。歌ってみて。」
 「うん、いいよ。せーの、ニリル、ウジル、ワジル、ダリル、チビでハゲデブ、もいっちょ、ニリル、ウジル、ワジル、ダリル、チビでハゲデブ、だってさ。ね、可笑しいでしょ?でも、博士のことじゃないよ、チビでハゲデブって。」
 「だよね、博士はデブでハゲだけど、チビではないからね。」元々明るい性格のゴリコだが、博士との生活も楽しくやっているようだ。
 「ところでさ、博士はいるの?」
 「うん、いるよ。中だよ。」と言って、ゴリコは私を案内するように先になった。

 博士はたいていそうであるように、作業場兼休憩所にいた。いつものように昼間から飲んでいるようで、作業台の上には酒瓶と湯飲みが置かれてある。そしてまた、多くの場合そうであるように、博士は寝ていた。私は、そっとしておこうと思ったのだが、ゴリコが博士に飛びついて、耳元で大声を出した。
 「はーかせっ!お客さんだよーーー。」
 「うへー、へっ、へっ、へっ、ハイハイハイ、なんだ、なんだ、なんだ。」と寝ぼけた声を出しながら、博士は目を覚ました。
 「やあ、博士、お早うございます。といっても、もう昼過ぎですが。」
 「あー、はい、あー、君か。うん、お早う。」と博士は言って、「はあー」と伸びをして、それから湯飲みに手を伸ばし、まだ半分ほど残っていた酒をゴクリと飲み込んだ。
 「ふー、はいっ、目が覚めたぞ。」
 「博士、久しぶりです。」
 「おー、ゑんちゅ君、まあ、座りなさい。」
 「はい、どうも。で、早速ですが、最近、何か発明はありますか?」
 「ある、ある、ある。」と横からゴリコが口を挟んだ。「ニリル、ウジル、ワジル、ダリル、チビでハゲデブがあるよ。そこ。」と言って、部屋の隅を指差す。見ると、そこには高さ1mほどの太った豚が座っていた。
 「何ですか、それ?」
  「うん、ニーブタワタブタという名前のロボットだ。シェイプアップのための間接的な機械だ。人がこれの前に立つと、その人の体の状態を分析し、ロボット自身が体を変化させ、その人の将来の姿を見せてくれる。怠けていると、そのロボットも太っていく。吹き出物もできる。自分がいかに太っているか、美容健康に悪いことをしているかを客観的に見ることのできる機械だ。シェイプアップしなくちゃ、と思うわけだ。」
 「ここにあるということは、博士自身のために作ったんですか?」
 「いや、私は太ろうが痩せようが、健康には何の関係も無い。世の中の痩せたいと思っている多くの人に売れるんじゃないかと思ったのだ。で、先ずはと、マミナの所へ持っていったんだ。ところが、『私には無用』と断られたよ。」
 「ニリル、ウジル、ワジル、ダリル、チビでハゲデブって歌さあ、この豚さんのテーマソングなんだよ。」とゴリコが楽しそうに歌う。
 「ニーブタは吹き出物、ワタブタは腹の出ていること、ニリルは飽きる、ウジルはうんざりする、ワジルは怒る、ダリルはだれるって、みんなウチナーグチですね。」
 「あー、ニーブタワタブタって言葉が先に浮かんでな、それで、こんなもん作ってみたんだ。自分の醜い将来の姿を見て、うんざりしたり、腹が立ったりするだろう。ということでニリル、ウジル、ワジル、ダリルって歌も思いついたんだがな、『自分の醜い将来の姿なんて誰も見たくないよ。売れないよ。』とマミナにキッパリ言われたな。」
 そりゃあまあ、確かに、マミナ先生の言う通りだと、私も思った。というわけで今回もまた、博士の発明は失敗作となったが、博士はさほど気にしている様子では無かった。その日はゴリコの遊び相手をしつつ、夕方まで博士の酒に付き合った。
     

 記:ゑんちゅ小僧 2007.11.9