ガジ丸が想う沖縄

沖縄の動物、植物、あれこれを紹介します。

クース

2011年03月20日 | 飲食:飲物・嗜好品

 継ぎ足して伝わる美味

 60年前の戦争で、沖縄は人命だけでなく多くの文化財をも失った。戦前は300年のクース(古酒:泡盛を寝かせたもの)もあったらしいが、それらも失われてしまった。どこぞに100年のクースがあることを、何年か前の新聞の記事かなんかにあったが、沖縄のあちこちに酒好きの人がいて、密かに古い酒を残しているのだろう。

 100年のクースは10年経てば110年のクースになるわけだが、その110年のクースが入った酒壷の中に入っている酒の量は、10年経っても減ることは無い。それは、クースの保存に「しつぎ」という方法を用いることによる。
  100年の酒壷(あるいは酒甕)の他に90年もの、80年もの、70年ものなどとより新しい酒の入った壷も保存しておく。10年ごとで無く20年ごとでも良い。100年の酒を1合飲んだら、90年ものを1合掬い、100年ものへ加える。90年ものへは80年ものを、80年ものには70年ものをと順次継ぎ足していき、最後の10年ものには新酒を継ぎ足す。そういうことで、100年ものの酒がいつまでも無くならないようにするわけだ。これを「しつぎ」という。旧家では床下(酒の保存に良い環境)に、そういった酒壷をいくつも置いて、「しつぎ」をしていたとのことである。
 クースそのものも世界に誇れる文化であるが、クースを楽しむための手間や、酒をがぶ飲みするのではなく、じっくり味わうという文化もまた、優れた文化だと言える。
 台風が近付いていて、外は強い風が吹いている。明日未明には沖縄本島も暴風圏に入る可能性が高いとのこと。そんな今日、9月4日はクースの日とされている。歴史的な謂れがあってのことでは無く、単に語呂合わせなのだろうが、私は今宵、20年ものクースを飲む予定でいる。4合瓶で1万3千円の、なかなか高価で、旨い奴。
      
 クース(古酒)
 泡盛を寝かせて3年以上経ったものをクースという。3年以上ということであるが、3年以上経ったものに新酒を混ぜても、それは3年以上のクースであるらしい。市販のクースは概ねそういったものだということを耳にしている。が、クース100%を手に入れるのはとても簡単。泡盛を買って、自分で寝かせておけばいいいのだ。温度変化の少ない冷暗所においておけば良い具合に熟成するらしい。
 3年以上とはいっても、3年とか5年程度では酒の刺激がまだ舌を刺す。10年、15年くらいになるとまろやかになる。寝かせる前の元の酒の出来具合も大事で、良い酒を良い環境で寝かせればとても良いクースになる。そのようなクースの、一升で数万円するものが、私がこれまでに飲んだクースの最も高価なもので、そして、それが、私がこれまでに飲んだクースで最も旨いものであった。その味は、ワインを蒸留してできるブランデーの高価なものに比べても、けしてひけをとらない芳醇な香りと味を持っていた。 

 記:ガジ丸 2005.9.4 →沖縄の飲食目次

 参考文献
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『泡盛』沖縄県観光文化局文化振興課企画、財団法人沖縄県文化振興会発行