アクセントは正確に
名詞のアクセントを後半につけるような言い方が流行りだしたのは、もう数年前のことになるだろうか、正しい(というか、従来のと言った方が正確か)日本語なら彼氏のことをカレシとカにアクセントを置くが、若い女性たちはカレシとシにアクセントを置く。
そのような事例、カレシの他に何かあったっけと考える。日本語の名詞には元々後半にアクセントのくるものが多いようで、なかなか思いつかないが、たとえば、映画、電車、カメラなども、彼女らはエイガ、デンシャ、カメラなどと言うのであろう。
世の、日本語の伝統を大切に思うオジサンたちにとっては、彼氏はカレシであり、映画はエイガ、電車はデンシャ、カメラはカメラである。カレシ、エイガ、デンシャ、カメラなどと言うような若者たちの言葉遣いには眉をしかめる人も多いであろう。であるが、同じオジサンでも、ウチナーンチュのオジサンである私には、アクセントが後半にあるということにあまり違和感が無い。なぜなら、ウチナーグチが概ねそうだからである。
ウチナーグチに、頭にアクセントがある言葉は少ない。もしかしたら、そういうのはほとんど無いのかもしれない。ウチナーグチでは、名詞の発音は概ね平坦になる。
倭国からの友人たちと飲みに行ったりすると、時々、違和感のある言葉を耳にする。彼らは沖縄の食い物を、その頭にアクセントをつけて言ったりするのだ。
「ミミガー」なんて、ミにアクセントを置いて言われたら、何か別の違った料理、たとえば、ちょっと上品なお菓子かなんかが出てきそうな印象を受ける。「ミミガー」とちゃんとしたウチナーグチ発音で、平坦に言うと、それはもう、しっかり、豚の耳が思い浮かぶのである。豚の耳をね、茹でてね、薄く切ってね、・・・などと。
過日、ありがたいことに、21歳の可愛い娘とデートする機会を得た。その日の夕食は那覇の、沖縄料理を多く置いてある居酒屋にした。そこで、私が頼んだウチナームン(沖縄物)はスクドーフ(別項で紹介)とミミガーピーナッツ和え。
ミミガーは、キュウリなどと酢味噌で和えたり、酢醤油で和えたりする。私の好みは酢醤油であるが、もっともポピュラーなものはピーナッツ和え。ピーナッツと言っても、ピーナッツを入れるわけではない。ピーナッツバターで味付けするということである。香りと甘味があって、ミミガーピーナッツ和えは子供にも好かれる。美味しいので、豚の耳という気持ち悪さなんか吹き飛んでしまう。21歳もまた、私より多く食っていた。
なお、ピーナッツバターは、60年前、進駐軍と共にやってきたものだが、ポークランチョンミートやコンビーフハッシュ、ホリデーマーガリンやエゴーマヨネーズなどと並んで、戦後沖縄の食生活に欠かせない食材となっている。これは、別項で紹介する。
記:ガジ丸 2006.4.17 →沖縄の飲食目次
参考文献
『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行