チマグーでなけりゃ
今でこそ、コラーゲンで美肌効果云々と、食べ物として多少は認められつつあるテビチであるが、今でもなお、ウチナーンチュでありながら「テビチは気持ち悪い」と言って食べない若い女性、あるいは若い振りをしているオバサンなども多くいる。
食堂や居酒屋のメニューに「テビチ汁」とある料理は、豚足を昆布や大根などと一緒に煮込んだ汁料理であるが、正確には「ティビチ」と発音され、また、「ティビチ汁」ではなく、「足ティビチ」と呼ばれるものである。「ティビチ」とは肉と野菜を煮込んだ汁料理全般のことを指す。豚の足と野菜を煮込むから「足ティビチ」となる。
このHPにたびたび登場する従姉は、ウチナーンチュでありながら足ティビチを嫌うオバサンの一人である。彼女はまた、山羊汁も嫌い、ゴーヤーも嫌っている。お陰で、彼女の息子や娘もそれらの料理が食えない。せっかくウチナーンチュとして生まれたのに勿体無いことであるとオジサンは思うのだが、従姉の息子が昔言った。「別にそんなもん食わなくたって十分幸せに生きていける」と。おっしゃる通りです。
まあ、でも、沖縄の田舎に行って、土地のオバーと知り合いになって、「まあまあ、私の家においで、晩御飯食べていきなさい」と親切にされて、足ティビチを出された時に、それが美味しいと思うか、不味いと思うかでは幸せ度に雲泥の差がある。「土地のオバーに親切にされなくても十分幸せだ」と従姉の息子は言うであろうが。
このHPにたびたび登場する三段腹E子は逆に、沖縄料理が大好きである。彼女は食べることだけで無く、作ることも好きである。その料理をたびたび私も馳走になる。彼女はもちろん、足ティビチも好きで、作る。彼女の足ティビチは正統派である。豚足の脚だけでは無く、足(つまり豚でいうと蹄)も使う。ウチナーグチではチマグーと言う。
「はっさ、チマグーが一番美味しいさあ。できたらチマグーだけにしたいくらいよ」とE子は言い、チマグーだけの足ティビチを作ったりもする。それは私も旨いと思う。「チマグーでなけりゃ」と言うE子は、同級生の中ではきっと沖縄料理をよく知って、上手に作れる人トップ10に入るだろう。よく食べ、よく笑い、よくしゃべって、あと20年もすれば、彼女はきっと立派な「沖縄のオバー」となっているに違いない。
記:ガジ丸 2006.7.14 →沖縄の飲食目次
参考文献
『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行