この頃、春らしい気持ちの良い日が続いている。島のあちらこちらに咲いているユリの花が、甘い匂いを漂わせている。その匂いに浸りながら村の中を一回り散歩して、いつもより早い時間にユクレー屋に向かった。散歩の、ほど好い疲れにはビールが合う。
道の途中でマナとケダマンに会った。
「おっ、どこかへ行くの?それとも、どこかからの帰り?」と訊く。
「うん、天気良いからね、ちょっと山を散歩してきた。」とマナ。
「それじゃあ、もう帰るんだ。良かったよ。ビールが欲しかったんだ。」
「おう、俺も同じだ。山歩きで疲れた体がビールを欲しがってるぜ。」
そして、ほどなくしてユクレー屋に着いた。店に入る前からケダマンが連呼する。
「ビール、ビール、ビール、・・・」私もそれに乗って、合唱する。ドアを開け、中へ入り、カウンターに座ってからも連呼は続いた。
「ビール、ビール、ビール、・・・」
「煩いねぇ、止めな、子供じゃあるまいし。」と言いつつ、マナはジョッキを出してくれた。幸せな女は他人にも優しくなるようである。
グビグビグビとビールを三口四口飲んで、プハーっと息を吐いた。
「いやー、気候も良いし、運動の後のビールは格別だなあ。」(私)
「運動って、何かやってきたの?」(マナ)
「君らと同じ散歩だよ。村をブラブラしてきた。」
「村か、そういえば、マミナ先生に会わなかったか?」
「いや、何で?」
「前にマミナと話をした時にな、未来から来た虎形ロボットのトラエモンって物語はどうだ?って言ったらな、そんな盗作みたいな話は書けないよって答えだったんだが、だけど、『そのトラエモンって名前は頂き。今書いている絵本の主人公の名前にするよ。』って言ってたんだ。その絵本、もうできたかな、と思ってさ。」
噂をすれば影である。そのすぐ後にマミナ先生がやってきた。その手には新作の絵本があった。タイトルは『すまとらとらとらいだー』で、いつものように絵はガジ丸。ただ今回は、唄は無し。落語みたいな物語なので、唄が思いつかなかったらしい。
まあ、それはともかく、今回はマミガジの絵本その3の紹介。
記:ゑんちゅ小僧 2008.3.21 →絵本『すまとらとらとらいだー』