礫川全次のコラムと名言

礫川全次〈コイシカワ・ゼンジ〉のコラムと名言。コラムは、その時々に思いついたことなど。名言は、その日に見つけた名言など。

『日本会議の研究』をめぐる「騒動」

2016-06-22 04:17:57 | コラムと名言

◎『日本会議の研究』をめぐる「騒動」

 昨日の続きである。なぜ、「日本会議」という組織が、ここへ来て、急に注目を浴びるようになったのだろうか。
 このことに関して、『週刊朝日』二〇一六年六月二四日号(六月一四日発売)の特集記事「日本会議と安倍首相」は、次のように解説している。

 この組織が今、大きな注目を集めるようになったきつかけは、著述家の菅野完【たもつ】氏が5月に出版した『日本会議の研究』(扶桑社新書)をめぐる騒動だ。
 当の日本会議側が同書の発売直後、版元の扶桑社社長に対し、内容に事実誤認があるなどとして出版停止を申し入れたことが発覚。初版8千部に過ぎなかった同書の存在がクローズアップされたのである。
 この新書は増刷を重ね、現在4刷12万6千部のベストセラーになっているという。扶桑社の担当者も「予想以上の売れ行き」と驚きを隠さない。
 組織のルーツは右派の学生運動
 都内の大手書店の新書ランキングでは軒並み上位。どの書店でも関連本とともに、目立つ位置に大量に平積みされていた。
「発売してからとにかく売れ方が異常。在庫が瞬く間になくなって、『いつ入るんだ』と問い合わせが相当数来た。そもそも新書は政治関連がいちばん売れるジャンルですが、それにしても異常な売れ方をしてますね」(都内大手書店担当者)
 今後、『日本会議の全貌』(俵義文著、花伝社)、『「日本会議」の正体』(青木理著、平凡社新書)など関連本が続々と発売される予定だ。
 扶桑社に経緯を尋ねてみたが、「現在係争中の案件にも触れるためコメントは控えさせていただきます」(担当者)とのこと。
 日本会議にもどんな抗議をしたのか問い合わせたが、同会広報部は書面で以下のように回答してきた。
「長年扶桑社の出版事業の普及拡大に協力関係のある本会の立場で扶桑社社長に申し入れたものです。申し入れ書の内容がインターネットを通じて即時公開されたことは極めて遺憾」
「申し入れ内容の詳細、および具体的箇所の開示については現時点では差し控えます」
 同書の中で日本会議の中心人物として名前が挙げられているのが、椛島有三〈カバシマ・ユウゾウ〉事務総長だ。日本会議の事実上の事務局として機能している団体「日本青年協議会」の会長でもある。
 同書によれば、椛島氏は宗教団体「生長の家」の出身者。生長の家は創始者の谷口雅春〈タニグチ・マサハル〉氏の国家主義的な思想により、83年に路線転換するまで政界に強い影響を及ぼしていた。
 椛島氏は長椅大学在学中に左派学生と戦った右派の学生運動で頭角を現した人物という。その後、他の生長の家出身者とともに70年に「日本青年協議会」を結成。集会や地方議会での決議を通して主張を浸透させていく現在の活動手法を確立し、現在も「実動部隊」として、日本会議を主導する役割を果たしているという。
 安倍首相の〝お友達〟の筆頭格で、同国会議員懇談会の幹事長を務める衛藤晟一首相補佐官も生長の家出身で、椛島氏と同じ右派の学生運動の闘士だった。【以下略】

 この記事によれば、『日本会議の研究』(扶桑社新書)をめぐる「騒動」がキッカケとなって、「日本会議」という組織が注目を浴びるようになったのだという。
 そうかもしれない。しかし、この本のあとを追うように、上杉聰氏の『日本会議とは何か』(合同ブックレット)や俵義文氏の『日本会議の全貌』(花伝社)という本が出ていることを忘れてはならない。これらの本は、当然、『日本会議の研究』の発刊前に、あるいは同書をめぐって「騒動」が起きる前に、企画され、準備されてきたはずである。ということであれば、この時期、「日本会議」という組織が注目されたことに関しては、何らかの理由や背景があって、それゆえに、『日本会議の研究』、『日本会議とは何か』、『日本会議の全貌』といった本が、ほぼ同時期に企画され、若干の時間差をもって刊行された、と見るべきなのである。
 しかし、『週刊朝日』六月二四日号の特集記事は、そうした「理由や背景」にまで踏み込んでいない印象があった。【この話、続く】

*このブログの人気記事 2016・6・22(7位にかなり珍しいものが入っています)

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