礫川全次のコラムと名言

礫川全次〈コイシカワ・ゼンジ〉のコラムと名言。コラムは、その時々に思いついたことなど。名言は、その日に見つけた名言など。

生長の家、安倍晋三首相の政治姿勢を批判

2016-06-23 03:34:14 | コラムと名言

◎生長の家、安倍晋三首相の政治姿勢を批判

 一昨日、昨日に続いて、「日本会議」という組織が、なぜ、ここへ来て、急に注目を浴びるようになったのかについて、考えてみたい。
『週刊朝日』の二〇一六年六月二四日号(六月一四日発売)を買ったのは、表紙に大きく、「日本会議と安倍首相」という文字があったからである。しかし、特集記事「日本会議と安倍首相」は、わずか五ページしかなく、しかも、昨日のコラムで指摘した通り、この時期、なぜ、「日本会議」という組織が注目されているのかについては、踏み込んだ分析がなかった。
 その後、『週刊ポスト』の二〇一六年七月一日号(六月二〇日発売)を買った。新聞広告で、「宗教戦争に異変!?あの教団が安倍を見捨てた」という記事が載っていることを知ったからである。記事は、四ページだったが、『週刊朝日』の五ページの記事より、よほど内容が充実していた。少なくとも、「日本会議」という組織が、注目を浴びるようになった理由を考えていた私にとっては、『週刊ポスト』のほうが、『週刊朝日』よりも、ずっと有益であった。
 ともかく、記事を引用してみよう。

 参院選が事実上スタートした6月9日、宗教法人・生長の家がウェブサイトに掲載した声明が永田町に衝撃を与えた。
 安倍政権の原発再稼働や安保法制による憲法解釈変更を批判し、
〈来る7月の参議院選挙を目前に控え、当教団は、安倍晋三首相の政治姿勢に対して明確な「反対」の意思を表明するために、「与党とその候補者を支持しない」ことを6月8日、本部の方針として決定し、全国の会員・信徒に周知することにしました〉
 そう「反安倍」を宣言したのである。
 生長の家といえば「明治憲法復元論」を唱えた初代総裁・谷口雅春氏が生長の家政治連合を立ち上げ、自民党右派の一翼を担ってきたことで知られる。現在も、憲法改正や靖国神社参拝など安倍首相の政治路線を強く支持する保守系民間団体「日本会議」の創立メンバーには生長の家出身者が多く、同会議の中核組織と見られていた。
 それだけに、参院選真っ最中の自民党内には動揺が隠せない。【中略】
 一体、何が起きているのか。
 日本会議と安倍政権との関係を掘り下げて反響を呼んでいる『日本会議の研究』(扶桑社刊)の著者、菅野完【たもつ】氏はこう見る。
「日本会議は生長の家の元信者を中心に運営されてきたが、教団は元信者たちの愛国運動を時代錯誤だと受け止め、元信者に対する批判として非難声明を出したと見るべきでしょう。一方で教団関係者や信者らの情報によれば、教団のなかには今回の参院選で、野党統一候補に投票するよう信者に呼びかける動きがある」【中略】
 国政選挙で巨大な票を動かすのが宗教団体だ。
 いずれも公に政党支持を表明してはいないが、自民党の2大宗教基盤とされるのが、全国約8万社の神社を統括する神社本庁と伝統仏教59宗派が加盟する全日本仏教会(全日仏)であり、「神道政治運盟国会議員懇談会」会長を務める安倍首相はとくに神社本庁との結びつきが強い。
 宗教評論家の清水雅人氏が語る。
「神社本庁系の政治団体である神道政治連盟の主張は靖国神社公式参拝、自主憲法制定、国旗掲揚と国歌斉唱など安倍政権の政策と一致している。日本会議の役員にも神社本庁など神道系の宮司が役員に就いており、日本会議と神社本庁などが一体となって安倍政治を支えている。
 政界の慣例では、総理になると議員連盟のトップの役職を降リるものだが、安倍首相が総理就任後、神政連〔神道政治連盟〕国会議員懇談会の副会長から会長になったことを見ても、いかに神道系団体を重視しているかがわかる」
 日本会議や神道系団体に対する最高の選挙アピールになったのが、伊勢志摩サミットだった。
 安倍首相はオバマ大統領ら各国首脳と伊勢神宮を訪問した際、鷹司尚武〈タカツカサ・ナオタケ〉・大宮司に迎えられて一般の参拝者が入れない「御垣内〈ミカキウチ〉」まで進んだ。ちなみに、鷹司大宮司は日本会議の顧問でもある。
「総理が伊勢志摩を選んだのは、皇室の祖霊を祀る伊勢神宮に各国首脳を案内することに主眼があった。安倍支持層への強いアピールになった」(自民党幹部)
 しかし、この安倍首相の神道への傾斜が仏教団体との軋礫〈アツレキ〉を生んでいる。【中略】
「安倍首相は一般の自民党議員より神道系宗教団体との関わりが強い。そのため、仏教系など他の教団が自民党支援に複雑な意識を強めている」(清水氏)
 仏教票と神道票は靖国参拝問題で正反対の対応を求めており、自民党の候補たちはその矛盾を抱えながら双方から票を得るという〝曲芸〟を演じている。【後略】

 記事は無署名だが、そうとう力量のあるライターが執筆していると思われる。
 ライターは、「宗教戦争に異変」というタイトルの通り、今回の「日本会議」をめぐる一連の動きを、「宗教戦争」として捉えている。一連の動きとは、すなわち、『日本会議の研究』の発刊(四月三〇日)、「日本会議事務総長 椛島有三」名義、扶桑社あての出版停止の申し入れ(四月二八日)、生長の家による声明「今夏の参議院選挙に対する生長の家の方針」(六月九日)などを指す。
 また、ライターは、この「宗教戦争」という捉え方を、「日本会議」という組織における紛争に限定していない。安倍首相の政治姿勢(宗教政策)をめぐって、宗教界に、「政治と宗教」という大きな問題が提起され、有力宗教各派も、それに対応せざるをえなくなっている。こうした状況を、「宗教戦争」として捉えているのである。
 なぜその問題提起が、この時期だったのか、ということについて、ライターはハッキリと指摘しているわけではないが、七月の参議院選挙を念頭においた動きとして、捉えていることが、文脈から読みとれる。安倍首相の政治姿勢を問い、その根底にある宗教問題の存在を強調するのは、たしかに、選挙前のこの時期がふさわしい(衆参同時選挙という予想も、一時はなされていた)。そのことは、『日本会議の研究』の企画・刊行についても、もちろん指摘できるし、それに続いた類書の企画・刊行についても指摘できるはずである。
 さて、生長の家は、戦前に大弾圧を受けた大本教(「皇道大本」の俗称)の流れを汲む新興宗教である。そして、大本教も生長の家も、神道系の宗教であることに注意したい。
 神道系の宗教である生長の家が、「日本会議」や神道政治連盟に傾斜する安倍首相の政治姿勢(宗教政策)に異を唱えたことが持つ意味は大きい。なぜなら、それは、仏教団体(創価学会含む)に対する、強いメッセージになるからである。「なぜ、あなた方、仏教団体は、各国首脳を伊勢神宮に参拝させた安倍首相に、何らの抗議もしないのか」。【この話、さらに続きます。なお、黒木勇治伍長の「日誌」、六月二三日以降分の紹介は、数日後に延ばします】

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