住職のひとりごと

広島県福山市神辺町にある備後國分寺から配信する
住職のひとりごと
幅広く仏教について考える

薬師巡拝

2006年09月13日 19時54分56秒 | 様々な出来事について
中国5県に薬師霊場が出来て、今年で10年ほどになろうか。ここ國分寺も中国49薬師霊場の第12番札所になってはいるが、まだまだできたての霊場である。今日様々な霊場が雨後の竹の子のように各地にできている。薬師霊場は個々のお寺は古刹ばかりとは言え、それらの一つということになるのであろう。

歴史ある霊場としては西国や板東の33観音や、四国88カ所遍路が特別に有名で全国から参詣者が絶えない。これらの発祥を考えれば、もともとそれらを札所としてではなく、心から観音様を慕い、遠くからでもお参りに来る、そうした多くの信仰を集める霊場がいつの時か、一つの巡路として観音様に縁のある33という数でお寺を繋ぎ参ることが、より御利益ある参り方として定着していったのであろう。西国33観音は平安末期ごろ開創と言われている。

四国であれば、四国の辺境を辿る辺路の修行者たちが作った道を歩き、各々の行場で修行した弘法大師に因む沢山の霊場を後にへんろ道として多くの人が辿ったということであろう。そして、数も語呂が良く末広がりの八を重ねる数として88と限り、四国88カ所としたのではないか。

だから、先に霊場として誰かか企画を作り人々が後について参ったということではないのであろう。先に遠くからも参る人々の道が出来て、そして数を限り33観音霊場というように後々に決めていったのではないか。

実は、昨日一昨日と地元のお寺さんがたとともに団体を組み中国49薬師霊場の岡山鳥取17ヶ寺を巡拝した。朝6時半、福山市神辺から国道313号線を北東に進み、備中高梁市の第2番薬師院さんを皮切りに、真庭郡落合町の第3番勇山寺では明治42年に国宝に指定されたお薬師さんを拝み、また同じく国宝丈六不動明王を間近に拝ませていただいた。

また、蒜山高原に位置する第4番福王寺では、土地に疫病が蔓延しその平癒のために護摩を焚くときお薬師さんの左手に持つ薬壺をくべて焚いたため薬壺を持っていない珍しいお薬師さんではあるけれども、代わりに薬壺を天井に描いたとか、また水害があったので本堂の龍の彫り物の尻尾に杭をしたとか、秀吉の養女で宇喜多秀家の室お豪が静養したため立派な伽藍が出来たが、お豪がキリシタンだったため、後に取り壊しにあったというような興味深い話を伺った。

それから米子市内の寺町第40番安国寺に参り、全国に足利尊氏が南北朝の戦乱で死んだ敵味方の霊を弔う怨親平等供養のために造らせた安国寺66ヶ寺の一つで、ここでは米子城主中村一忠が城下町を造る際に9軒のお寺を外郭に一直線に並べて城壁とすべく余所の地から移転されてきたという話を伺った。

また、有名な国宝投入堂のある三徳山三仏寺皆成院では、三仏寺は役行者が1300年前に開創した修験の寺で、三徳とは、幸福と智恵と寿命の三つを言い、その三つを授かり一度死んで汚れた体と心をもう一度生まれ代わらせるために、この修験の山がある、是非体験して欲しいという話を。

鳥取のお城のあった久松山の麓にある第46番最勝院では、老住職さんが京仏師松久宗琳の門下生として指導を受け自ら彫った2メートルの薬師立像や愛染明王などへの信仰について話され、参拝した一人一人の背中をさすって慈悲深いひと言アドバイスを授けられた。師は、今の時代に珍しい誠に慈愛溢れる老僧である。

そして、鳥取から岡山津山に抜け、最難所第7番佛教寺の札を打ってこの度の巡礼を終えた。今回参詣した17ヶ寺、いずれも、歴史ある古刹であった。時代の栄枯盛衰を目の当たりにした思いがする。

と同時に、特にこの度温泉地に出来たお寺が多かったせいか、その歴史を思うと、人々の健康への願いと信仰、それに土地の繁栄や観光が結びついたお寺の姿が見えてくる。いつの時代も様々な要素が結びついてはじめて繁栄発展が繰り返されていくのであろう。信仰だけでも、観光だけでもいけない、それらに伝説や伝統が加味されてはじめて霊場の発展があるのかもしれない。そんなことを思いつつ神辺へ戻る山陽道から夜景を眺めた。

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2 コメント

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投入堂 (湖南)
2006-09-17 13:22:07
初めまして



一度死んで汚れた体と心をもう一度生まれ代わらせるために>>というのがいいですね。



修験の勉強をしてみようといろいろ拝見しているうちに、こちらにたどり着きました。



おもしろそうな記事が多そうなので、以後時々拝見させていただきます。



とりあえずTBさせていただきましたのでよろしくお願い申し上げます。

ではでは

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精神世界の本 (全雄)
2006-09-17 15:01:17
湖南さんはじめまして。



精神世界の本というコーナーが昔はあったものですが、今はどうなのでしょうか。最近は本屋さんで本を買わなくなりました。



私も若いときには、いろいろムーという雑誌に出ているようなことも色々読んでみたものです。今は仏教ばかり。なかなか勉強が進みませんが。



どうぞよろしく。
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