住職のひとりごと

広島県福山市神辺町にある備後國分寺から配信する
住職のひとりごと
幅広く仏教について考える

雲照大和上遺墨展によせて

2018年10月28日 09時00分07秒 | 仏教に関する様々なお話
雲照大和上を学ぶ会の松本宣秀師が23日来訪された。来月14日から18日まで倉敷市立美術館にて、倉敷仏教会主催「雲照大和上遺墨展と講演・明治150年を雲照大和上に問う」が開かれるにあたり、國分寺所蔵の雲照和上直筆の書額などをご覧になるためである。因みに、当寺からは、「戒為清涼池」「観蓮知自浄見菓覚心德」「如寶」の三額、「了・・時無可了」の一軸を出品させていただくことになった。

なお、倉敷美術館での講演は、11月17日(土)午後1時半から智山講伝所田中悠文師による「雲照大和上と日本の教学」、東洋大学名誉教授伊藤宏見師による「雲照大和上の信仰と事蹟」が1時間半ずつ予定されている。是非御参集下さい。なお、問い合わせは、雲照大和上を学ぶ会/岡山市北区大内田581千手寺内☎086-293-0713まで。






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雲照律師についてご存知ない方のために、かつてこちらに掲載した、中外日報の記事を再掲します。

中外日報2月22日付『近代の肖像』危機を拓く第103回

釋雲照① 略伝

釋雲照律師(一八二七ー一九〇九)は、その学徳と僧侶としての戒律を厳格に守る生活姿勢、そしてその崇高なる人格に山県有朋、伊藤博文、大隈重信、沢柳政太郎など、明治の元勲や学者、財界人が帰依し教えを請うた明治の傑僧であった。

雲照は、文政十年、現在の島根県出雲市東園町に農家の五男として生まれ、十歳で得度。十八歳で高野山に登り伝法灌頂を受け、地方一寺院の住職となる。

しかし、二十二歳のとき高野山に登り金剛峯寺衆徒となり真言宗学を悉く学ぶと共に、全国の名山大寺に高僧を訪ね天台十不二門、唯識論述記、止観、梵網経など宗派を超えた修学受法に努めている。この間幾度となく虚空藏求聞持法、八千枚護摩供を修した。

明治維新を四十二歳で迎えると、廃仏毀釈の嵐が吹き荒れる中、一沙門として、「三道一致国体建白」「廃仏毀釈に対する建白」など建白書を携えて京都、東京の政府当局に出頭して「仏法は歴代天子の崇信するところにして、皇国の神道及び儒教の忠孝と相助け国家を擁護せるものなれば、一旦にしてこれを排棄すること甚だ非なり」などと剛毅不屈の気迫をもって建白を重ねた。翌年には諸宗同徳会盟に参加。

また四十八歳の時京都勧修寺門跡。五十三歳で大学林学頭になり、真言宗各本山が独立の機運ありと知ると、大崎行智らと湯島霊雲寺に各派代表九十五名を集め真言宗大成会議を開催。委員長となり、真言宗新古統一の宗制を定め、戒律中心主義に基づき厳格なる宗規を定めた。そして、真言宗僧侶養成の機関として東寺内に総黌(今の種智院大学の前身)を設立。

明治四年の諸山勅会廃止により中絶していた宮中後七日御修法の再興を東寺長者三條西乗禅、土宜法龍らとともに関係諸氏に懇願。玉体加持に代わり御衣を下附され、東寺灌頂院にて明治十六年より再興するに至る。

同年久邇宮殿下の外護を得て「十善会」発足。しかし翌十七年に真言宗宗制会議が開かれると、戒律中心主義は根底から覆され教学中心主義の宗制が制定されるにいたり、宗団の改革見込みなきことをさとった。

明治十八年、雲照の護法に掛ける情熱に敬服していた政府大書記青木貞三氏は、首都東京での護法民衆教化にあたることを進言。五十九歳で雲照は東京に出て、明治十九年現在の文京区関口二新長谷寺(後の目白僧園)住職。

そこで、戒律学校を開き、常時四十名程の僧侶が薫陶を受けた。また、通仏教を標榜し国民道徳の復興を目的に社会の一道徳的教会として「十善会」を再興し、「夫人正法会」を発足。会報として『十善法窟』『法の母』を発刊。後に共に天覧に供された。

那須野に雲照寺開創、備中宝島寺に連島僧園を開設し、目白僧園と併せ三僧園とし、持戒堅固な清僧の養育にあたった。 六十二歳の時わが国で初めて大蔵経の和訳事業を開始し、六十八歳頃からは、早稲田大学で「金剛経」をまた哲学館(後の東洋大学)では「仏教大意」を講義。

七十歳からは、説法教化のために全国各地を巡り、七十三歳の時仁和寺門跡となる。日露戦争戦歿者慰霊のために光明真言百万遍講を組織して霊を弔い、八十歳にして、満韓戦場戦死者回向のため満州朝鮮に渡り、各地で追悼法会を営んだ。

さらに、八十二歳で、東北、北海道、樺太巡教。西洋化する社会を憂えて神儒仏三道一貫の精神をもって本義とする国民教育を施す場として徳教学校設立運動を開始する。

しかし、志半ばにして明治四十二年四月十三日遷化。不惜身命の精神で、仏教護法にささげた八十三年の生涯であった。


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コメント (4)
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