おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

赤ちょうちん

2023-07-09 06:59:55 | 映画
「赤ちょうちん」 (1974) 日本


監督 藤田敏八
出演 高岡健二 秋吉久美子 河原崎長一郎 横山リエ 長門裕之
   石橋正次 山科ゆり 中原早苗 悠木千帆 三戸部スエ 陶隆
   南風洋子 山本コウタロー 小松方正

ストーリー
有料駐車場に勤める政行(高岡健二)と修(河原崎長一郎)の二人が、新宿の雑踏の中で幸枝(秋吉久美子)とその友人ミキ子(山科ゆり)の二人の少女と交わした会話から、政行と幸枝の間に愛が芽生えた。
その夜、二人は、政行のアパートで何気ない一夜を過した。
電車の轟音に耐えきれず政行は幡ケ谷へ引っ越した。
そんなある日、政行は幸枝と再会し、彼女は政行のアパートに移って来た。
数日後、二人が外出から帰ってみると、部屋に小太りの中年男(長門裕之)が寝そべっていた。
男は保険屋だといい、腹痛を理由に居候をきめこんだ。
奇妙な三人の同居生活が始まった。
政行は駐車場をやめ、修とコンビでトラックの長距離輸送を始めた。
そんなある日、政行が仕事から戻ってみると、幸枝と中年男は床を並べて眠っていた。
「火葬場が近く一人で寝るのがこわくて……」そんな幸枝をいとおしく思いながらも、二人の間に冷たい風が吹き抜けた。
二人は修の住む、新宿のアパートへ移った。
そして、ここで幸枝が妊娠していることを知った。
「おろせよ」政行は冷たく突き放した。
幸枝にとっては身の切られるほど切ない夫の言葉だった。
家賃の問題、赤ん坊のこと、二人はむしゃくしゃした気持ちを振切るべく調布に引っ越した。
やがて男の子が生まれ、とやかく言った政行も親馬鹿振りを発揮し、二人は幸福だった。
しかし、管理人のクニ子(悠木千帆)は、いつもこの夫婦を好奇な眼で見ていた。
さらに幸枝の最愛の田舎のおばあちゃんが死んだという知らせにより幸枝の心が乱れ、気分転換のために、また引っ越すことにした。
今度は下町の葛飾区で格安の家を見つけた。
隣のおばさん文子(南風洋子)はとても親切にしてくれた。
実は政行たちの家は、昔一家心中があり、長く空き家になっていたのだった。
政行は恐怖に堪えながら、幸枝には知らせなかった。
しかし、数日後、幸枝が分不相応なダブルベットを買ったことから、政行は幸枝も心中の事を知っているのだろうと思った。
かつて血で汚れた畳の上では寝られなかったのだ。
その日、隣の主人敬造(陶隆司)が鳥の羽を剥いでいた。
その羽が幸枝の鳥アレルギーを刺激し、その夜から幸枝の挙動が一変し、突如政行を殴りつけたりした。
翌日、幸枝は米屋の店員をビールビンで殴って大怪我をさせ、彼女は目を異様に光らせて、トリ肉に食いついていた……。
幸枝は精神病院の鉄の扉の中へ保護された。
数日後、政行は引っ越しをした。
今度は赤ん坊と二人きりで……。


寸評
幸枝と政行はふとしたきっかけで知り合い、再会したことから同棲を始める。
「漫画アクション」における上村一夫の漫画「同棲時代」の好評を受け、この頃に同棲物の作品として1973年に「同棲時代-今日子と次郎-」と「新・同棲時代-愛のくらし-」が撮られ、大信田礼子の歌う主題歌「同棲時代」もヒットし、同棲が時代を著していたとも言える。
この作品もその流れを汲んでいると思うのだが、主人公たちの純愛は破滅へと向かっていく描き方は藤田敏八らしい。
幸枝と政行は身の回りに変化が起きると転居することを繰り返していく。
その間に保険屋と称する長門裕之が登場して、奇妙な共同生活を始めるのだが、この男の役割は何だったのだろう。
幸枝の優しさを示すための人物だったのだろうか。
それともチャランポランなように見える幸枝と政行たちは案外と真面目に生きていて、いい加減な大人の代表者として彼は存在していたのだろうか。
彼の生死と保険金の受取人が不明のまま画面から消え去っていく。
幸枝と政行の最大の転機は幸枝の妊娠だろう。
若い二人にとって大問題であることは容易に理解できる状況だ。
政行が堕せと言うのに対し、幸枝は産む決心をするのも考えの相違としては普通だろう。
結局子供が無事に出産されることになり、政行はいい父親振りを見せる。
二人の第二の転機とも言えるのが、南風洋子が大家さんという家に引っ越したことだ。
政行は南風洋子の息子である山本コウタローが勤める工場で働くことになるが、ここで政行はミキ子と関係を持ってしまい、そのことを山本コウタローにかばってもらっている。
政行の浮気問題はそれ以上描かれていない。
隣の主人がニワトリを調理しようとしていることで、鳥アレルギーの幸枝が変調をきたし結末を迎えることになるのだが、なんだか軽い展開に感じてしまう。
出産問題はあったけれど、生活費の苦労もなさそうだったし、幸福感から絶望へと向かう悲壮感もなかったのだが、突然の破局のような感じがしてしまう。
僕はこの頃の秋吉久美子を気に入っていて、演技もしっかりしている若手俳優のNo1と思っていたのだが、歳を取っても若い頃のイメージのままで頑張っていることに拍手を送りたい。
秋吉久美子はこの後、同じく1974年の「妹」「バージンブルース」で藤田敏八とコンビを組んでいる。
藤田敏八は随分と秋吉久美子を気に入っていたのだと思う。


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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
なんとなく意味不明でしたね (指田 文夫)
2023-07-09 15:26:02
藤田敏八・秋吉久美子の3部作の1本ですが、やや中途半端な感じがしますね。
私は、『妹』が一番好きです。
この3本は、実はロマンポルノではなく、一般映画なんですね。

区別はよく分かりませんが。どれにも、三戸部スエさんをはじめ、藤田弓子、藤原釜足など、普通の俳優が出ているのも興味深いですね。

『妹』の秋吉久美子が殺した男は、大門正明ですが、殺人罪ではなく、傷害致死罪くらいだと思われ、罪を感じる必要はなかったと思うのですが。林隆三の映画としても、ベストだと思います。
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その時代 (館長)
2023-07-10 07:07:34
当時の風潮と言うか、時流に乗った作品でしたね。
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3部作は (指田 文夫)
2023-07-14 09:01:27
秋吉久美子、藤田敏八の『赤ちょうちん』『妹』『バージン・ブスール』の3部作は、ポルノではなく、一般映画だったんですね。

それから、梢ひとみ主演の『スケバンデカ・ダーティ・マリー』も一般でした。
梢は、好きだったのですが、早くいなくなって残念でしたね。
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一般映画 (館長)
2023-07-15 12:59:34
ロマンポルノ作品にも、どこがポルノだという作品が結構ありますね。
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