おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

ビジランテ

2021-09-25 09:06:52 | 映画
「ビジランテ」 2017年 日本


監督 入江悠
出演 大森南朋 鈴木浩介 桐谷健太
   篠田麻里子 嶋田久作 間宮夕貴
   般若 吉村界人 岡村いずみ 菅田俊

ストーリー
真夜中の川を三人の兄弟が渡ろうとしていて、長男が何かを入れた箱を埋めたところ、首から血を流した三兄弟の父が追いついてきた。
三兄弟は連れ戻されて激しい暴行を受け、耐え兼ねた長男は家出、そのまま消息を絶った…。
30年後、地元の有力者だった父親(菅田俊)が亡くなり、次男・二郎(鈴木浩介)は葬儀の喪主を務めていた。
父の後を継いだ二郎は今や市議会議員となり、妻・美希(篠田麻里子)を娶り、出世コースを歩んでいた。
葬儀に参加しなかった三男・三郎(桐谷健太)は地元の暴力団・石部組の大迫護(般若)の企業舎弟としてデリヘルの雇われ店長をしていた。
二郎は父の遺産であり、大型複合商業施設の建設予定地でもある土地の権利を相続しようとしており、父に憎しみを抱いていた三郎も了承していた。
そんなある日、二郎と三郎の前に30年前に生き別れた長男・一郎(大森南朋)が現れた。
一郎は生前の父から託されたという遺言書を持っており、土地相続の権利は自分にあると主張した。
二郎が会長を務める自警団「けやき防犯会」は町の治安維持の活動をしていたが、在日中国人が多く住む地域でメンバーの一人・石原(吉村界人)が中国人相手に暴力沙汰を起こしたことから大騒動に発展、中国人らは報復として石原の片目を失明させた。
三郎は大迫から、一郎が持つ土地の権利を譲り受けるよう要求されるが、一郎は先祖代々から受け継がれてきた土地を商業施設ごときのために手放す訳にはいかないと拒否した。
結局権利を得られなかった三郎は裏社会から足を洗おうとしたが、激昂した大迫に暴行を受け、更には翌日17時までに土地の権利を得られない場合は三郎の店のデリヘル嬢全員を殺すと脅された。
その頃、病院から抜け出した石原は仲間たちと共に在日中国人の居住区域にガソリンを巻き、火を放った。
三郎は二郎に助けを求めたが、放火の報を受けた二郎は三郎を突き放し、美希と共に火災現場に向かった。


寸評
ビジランテとは変わったタイトルだが自警団のことらしい。
僕は町内の防犯委員会に属して活動を行っているが、ここで描かれた自警団「けやき防犯会」は我々の防犯委員会と状況が少し違う。
市会議員である次郎の妻が自警団の会長は出世コースなんだからと言っているが、我々の防犯委員会は出世とは関係のない全くのボランティアである。
そしてこれが大きなことなのだが、彼らが担当している地域には中国人が多く住んでいる地域があり、地元住民との間に溝を作っているということで、幸いなことに僕の町内には外国人差別を生み出す要因は存在していない。
しかしそれでも、昔からの住民と新しくやってきた住民との間には意識的な溝が存在している。
昔からの土地柄には、いわゆる「よそ者」との軋轢が生じることは分らぬでもないし、それがアジア系の外国人となればなおさらだろう。
ここではそれが誇張されたように最悪の事態として描かれている。
人種差別にみられるように人にも闇の部分があり、時としてその闇は兄弟の中にもある。
社会にも裏社会を初め、政治権力や利権を巡る闇の部分が存在している。
その為なのかこの映画には夜のシーンが多い。
夜のシーンのカメラはなかなか良くて、いい雰囲気を出している。

子供の頃は仲の良い三兄弟だったのだろうが、大人になるとそれぞれが違った生き方を選んでいる。
長男は家出していたこともあって、すさんだ生活を送っており借金地獄にもあえいでいるようだ。
しかしあれだけ嫌っていた父親とは連絡がとれていて、問題の土地を相続する話が出来ていたようだ。
ひどい父親だが、父親は長男は先祖が最初に手に入れた土地を手放さないことを分かっていたのだろう。
しかしどうつながっていたのかは全く不明だし、想像することもできない。
一郎は長男として弟たちの身代わりとなってやる優しさは持っていたようだ。
二郎は意気地がないのだが、妻の美希がその穴埋めを行っている。
美希を演じる元アイドルの篠田麻里子が夫の出世に体を張るしたたかな女を好演している。
夫の出世に生き甲斐を見出しているようだが、本当は幼い息子の立身出世にかけていたのかもしれない。
二郎は妻のとる行動を分かっていたのだろうが、何も言えない。
火災現場に向かう時も、自分の意思を妻によって押しとどめられている。
彼が委員会のメンバーに選ばれたのも、妻が体を提供したからであることを匂わせている。
それでいながら、感謝の意を演説して頭を下げる二郎なのである。
三郎は裏家業のような仕事をしているが、根はやさしい男である。
風俗をやめて去っていく女の子にお金を渡してやる気遣いを見せているし、捕らわれた女の子たちからは三郎がきっと助けに来てくれると信じられている。
三人の中では一番兄弟思いなのではないか。
桐谷健太は内面からほとばしり出るような悲劇性をにじませるいい演技をしている。
手に刺さった箸を抜くシーンは、こちらも力が入った。
女の子がスヤスヤ眠る車に、三郎はきっとたどり着けたに違いないと思う。


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