おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

ゼア・ウィル・ビー・ブラッド

2023-12-09 08:09:11 | 映画
「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」 2007年 アメリカ

                     
監督 ポール・トーマス・アンダーソン        
出演 ダニエル・デイ=ルイス ディロン・フレイジャー
   ポール・ダノ ケヴィン・J・オコナー
   キアラン・ハインズ

ストーリー            
20世紀初頭、石油採掘によって莫大な富と権力を得た一介の炭鉱労働者ダニエル・プレインビューは、ある日ポールという青年から自分の故郷の土地に油田があるはずだとの情報を得て、さらなる鉱脈を求め息子のHWとともにカリフォルニア州リトル・ポストンへ向かう。
そこは不毛の地で、街の人々はポールの双子の兄弟で住人の信頼を一手に集めるカリスマ的な牧師イーライ・サンデーが主宰する教会にのみ頼って生きていた。
プレインビューはすぐさま土地の買い占めに乗り出すが、イーライはプレインビューへの警戒を強めていく。
幸運にも再び油田を掘り当てたプレインビューだったが、そのあまりに旺盛な欲望と欺瞞に満ちた心は、闘争を引き起こし、さらには人々の価値、希望、信用、そして親子の絆さえも脅かしていく。


寸評
人間の欲望は宗教や親子の情を超えても尽きぬものなのかと思わせる重い映画だ。
宗教者であるイーライ・サンデーも金に執着している俗物でもあるようだし、最後には俗物として破滅していく。
親子とはいえプレインビューは単に孤児を親子と偽り利用しているにすぎなく、その関係も最後に破綻をきたす。
ではプレインビューは富を求める金の亡者で極悪人かといえばそうでもなさそうなのだ。
事故死する者が出れば葬ってやり掘削も休んだりするし、事故現場から息子を必死で助け出す。
実にいい親分とも見て取れるのだが、邪魔になったH.Wを非常にも見捨てたりする。
石油のためには屈辱的な入信儀式にも耐える。
欲望に突き進むプレインビューを演じたダニエル・デイ=ルイスあっての映画だった。
映画は決してアメリカン・ドリームを、あるいはアメリカン・ドリームをつかみ取るための暗部を描いたものでもなかった。
僕にはアメリカという国が、このようなすさまじい人間たちによって建国されたように思われて、仲間意識を強く持って成り立ってきた日本とは違うなといった感じを強く持った作品だった。
それにしてもプレインビューという人物の設定は複雑だった。
息子を道具として使い、邪魔になったらあっさりと遠ざけるのに、なんとなく彼への屈折した愛情を感じるし、異母弟が現れたりすると、その素性を疑いながらも肉親の情を垣間見せたりする。
この男の孤立した心、富、成功、権力欲は一体どこから来たのかと考えさせられてしまう。
そして最後には宗教の欺瞞をも糾弾し、イーライとプレインビューは同類なのだと示し、プレインビューに「終わった」と言わしめる。
何だか重い映画だったなあ・・・。
音楽はすこぶるいい。


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