おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

裏窓

2019-01-31 07:12:26 | 映画
「裏窓」 1954年 アメリカ


監督 アルフレッド・ヒッチコック
出演 ジェームズ・スチュワート
   グレイス・ケリー
   レイモンド・バー
   セルマ・リッター
   ウェンデル・コーリイ

ストーリー
ニューヨークのダウン・タウン、グリニッチ・ヴィレッジのあるアパートの一室、雑誌社のカメラマン、ジェフは足を骨折して椅子にかけたまま療養中なので、つれづれなるままに窓から中庭の向こうのアパートの様子を望遠鏡で眺めて退屈をしのいでいた。
胸が自慢の女、新婚の男女、ピアノに向かって苦吟している作曲家、犬を飼っている夫婦者などが見える。
そのうち病気で寝たきりの妻と2人暮らしのセールスマン、ラース・ソーウォルドが荷物を送り出した翌日から、妻の姿が見えなくなった。
ジェフは注意して彼の動静を観察し、妻を殺して死体をトランクに詰め、どこかへ送ったものと確信した。
この調査には恋人のリザや看護婦のステラにも一役買ってもらった。
リザは早速調査を始めたが確証がつかめないので、ジェフがいい加減のことを言っているのではないかと思うようになった。
やがてソーウォルドは自分が疑われていることに気づき、ジェフが警察に密告したことを知って殺意を抱いた。
ジェフが1人で部屋にいるとき、ソーウォルドが襲ってきて体の自由のきかぬジェフを窓からつき落とそうとした。
こうして意外なクライマックスが展開、事件の謎がとけるのである。

寸評
カメラアングルはジェフの部屋の様子を除いて、ジェフの部屋から見える景色がほとんどで、退屈しのぎにジェフが窓の外を眺めていることがよくわかる。
建物はセットなのだが凝っているのは、わずかに見える通りの様子が細やかに描かれていることである。
走る車、遊ぶ子供、通り過ぎる人々が一瞬の点描として写し込まれている。
向かいのアパートの窓を通して見える部屋で生活する人たちの姿も描かれるが、時としてパントマイム的で観客は住人たちの様子を想像することになる。
観客がジェフと同じ立場になって想像するという作り方がこの映画の最大の魅力となっている。
したがってアパートの住人たちの様子は上手く描かれているし、演じた俳優たちの演技も評価される。
ジェフの目線なので大抵が遠景での演技だ。
複数の部屋が同時に写るシーンもあって、それぞれをシンクロさせる苦労があったのではないかと想像できる。

それぞれの部屋の住人のキャラクターも、寸描しているだけなのに想像できるような描き方をしていて上手い。
作曲家は新曲に苦しんでいたようだが、やがていい曲を完成させたことが判る。
ミセス・ロンリーと名付けた夫人は孤独に耐えかねて一人芝居をしている。
ミス・グラマーは男性を次々引っ張り込んでいるが、案外と身持ちは固くフィットネスに余念がない。
新婚夫婦は新婦の方が積極的な様で、新郎は彼女の呼び声に辟易してきている模様。
老夫婦はベランダで寝そべっている呑気な人たちだが、彼らが可愛がっていた犬が事件を進展させる。
やがて病気の妻を看病している男が殺人事件を引き起こしたらしいことが推測されるようになる。
その間に、ジェフとリザの煮え切らない関係が甘ったるく描かれ、ラブロマンスの雰囲気も出てくる。
ジェフ達に新婚夫婦をだぶらせ、自殺を試みたミセス・ロンリーが作曲家の奏でるピアノを聞いて思いとどまるなど副次的な物語も散りばめていて楽しめる。

楽しめるのは物語だけでなく、グレース・ケリーその人の美貌と彼女のファッションだ。
ジェフはそんなに裕福ではなさそうだが、リザはかなり裕福そうなことが分かる。
運び込んだ料理の豪華さで彼等の所得格差を面白おかしく表していた。
グレース・ケリーの様なエレガンスさを持った女優は今はいなくなってしまった。

主人公のジェフはカメラマンなのでカメラを効果的に使っている。
先ずは双眼鏡と共に使用される望遠レンズだ。
極めつけは暗闇の中で使用されるストロボだ。
住人たちが見ているの目の前でジェフを突き落とそうとするのは簡単過ぎると思うけれど、全体的にはよくできた脚本だと思う。
ジェームズ・スチュアート、グレース・ケリーという見るからに善良そうな二人が主人公だけに、非常に健康的なサスペンス劇となっていた。
ヒッチコックの作品群の中でも上位にあげて良い作品だ。


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