おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

緋牡丹博徒

2023-02-04 08:49:05 | 映画
「緋牡丹博徒 お竜参上」は2020/2/11に掲載しています。
「緋牡丹博徒 花札勝負」は2021/10/6に掲載しています。

「緋牡丹博徒」 1968年 日本


監督 山下耕作
出演 藤純子 高倉健 若山富三郎 待田京介 大木実 山本麟一
   若水ヤエ子 疋田圀男 金子信雄 土橋勇 清川虹子 山城新伍

ストーリー
九州の博徒矢野組の一人娘竜子(藤純子)は、堅気の男との結婚をひかえて父に死なれた。
父が暴漢に闇討ちを受けたのだ。
竜子は一家を解散し、矢野の死体のそばに落ちていた財布を手がかりに犯人を探そうと旅に出た。
小太刀の免許を持ち、博奕にも優れた腕を持つ竜子は全国津々浦々の賭場を流れ歩くうち、五年の歳月が過ぎていた。
明治十八年の晩春、岩国のある賭場ですでに“緋牡丹のお竜”の異名をとっていた竜子が胴師のイカサマを見破ったことから、いざこざが起り、竜子は旅の博徒片桐(高倉健)に助けられた。
片桐の人柄に惹かれた竜子は一部始終を打ち明けたが何故か片桐は無言だった。
やがて二人は別れたが、その時には証拠の財布は消えていた。
一方、竜子の唯一の子分で矢野殺しの犯人の顔を覚えているフグ新(山本麟一)が道後でいざこざを起し、岩津一家と熊虎一家の対決騒ぎにまで発展した。
それを知った竜子は早速道後に向ったが、彼女の気っぷの良さに大阪堂万一家の女親分おたか(清川虹子)が仲裁に入り、竜子と熊虎(若山富三郎)は兄弟分の盃を交したのである。
やがて竜子とフグ新はおたかの勧めで千成一家二代目加倉井(大木実)の圧力下にある大阪に出た。
賭場で竜子と対した加倉井は、その後、彼女を手寵めにしようとしたが、竜子を救ったのは、片桐だった。
片桐は加倉井の兄貴分で、竜子の父を殺した犯人が加倉井だった。
だが片桐は博徒の義理から、加倉井をかばって真相を打ち明けなかった。
そんな時、犯人の顔を知るフグ新が加倉井に会い、すべてを悟ったのだった。
しかしそのフグ新は卑怯にも加倉井に斬られ、竜子に真相を打ち明けると、息を引き取ってしまった。
得意の小太刀を持ったお竜が熊虎の子分である不死身の富士松(待田京介)と千成一家に殴り込んだのは間もなくのことだった。


寸評
藤純子を当時当代一の人気女優に押し上げた人気シリーズの第一作で、シリーズで常連となる登場人物が紹介されるように出てくる。
若山富三郎が四国道後の熊虎一家の親分熊虎としてひょうきん役を引き受け、待田京介がその子分の不死身の富士松を演じて渋い役回りを見せる。
清川虹子が大阪堂万一家のお神楽のおたかとして貫録の女親分を演じてお竜を助ける。
若水ヤエ子も熊虎の妹清子として時々顔を見せることになる。
タイトルが出る前の藤純子による口上、クレジットタイトルの背景に描かれる本引き賭博の様子などで作品のムードは最初から盛り上がりを見せる。

物語は第一作とあって、お竜が呉服問屋へ嫁ぐことになっていたのを、一家を構える父親が辻斬りに会って亡くなったことから、渡世人の道に入る経緯が先ず描かれる。
お竜は父の仇を探して旅に出るが、岩国で不死身の富士松と知り合いになり、熊虎と兄弟分の盃を交わすことになるのだが、そのきっかけとなるのが岩津組の金子信雄とのもめ事である。
悪役として定評のある金子信雄だけに、この一家との争いがメインになるかと思っていたら、金子信雄はおたかのとりなしですぐに消えてしまう。
代わって登場するのが大木実で、彼がおたかと争う千成組の二代目として出てきた時点で、高倉健との関係やお竜が探し求める仇の正体など、大体の筋書きが読める。
簡単に筋書きが読めるのも任侠映画を肩を凝らさずに見ることが出来る一因となっている。

竜子は緋牡丹のお竜と名乗るので、この作品では牡丹の花が何回も出てくるし、藤純子も緋牡丹の入れ墨を何回か見せる。
きりっとしたたたずまいが魅力の緋牡丹お竜なので、片肌を脱いで女の魅力を見せるシーンはシリーズの中では珍しく、これだけ見せるのはこの第一作を置いて他にない。
そのようなサービスも大いにあるのだが、全体としての仕上がりとしては雑なところがある。
クライマックスの殴り込みシーンでは、高倉健の片桐がいつそんな瀕死の重傷を負っていたのかわからない。
大木実の加倉井にわざと斬られてやる演出があっても良かったのではないかと思う。
大阪を去ることになっていた高倉が加倉井の所へ戻ってくる経緯も端折り過ぎの感がある。

任侠映画全盛の時には何本かのシリーズ物が撮られていたが、その中では高倉健の「昭和残侠伝」とこの藤純子主演の「緋牡丹博徒」シリーズが双璧だった。
両シリーズとも、主演俳優が唄う決して上手くはない主題歌が僕の耳に残る。
東映は男優の会社で、僕が映画を見始めた時代劇の時代から多くのお抱え女優さんがいたが主演女優と呼ぶにふさわしい人はいなかったように思う。
藤純子は主演を張り続けることができた初めての女優だったように思う。
それを決定づけたのが緋牡丹のお竜だった。
あの何とも言いようのない色香は娘の寺島しのぶには出せないものである(演技力は娘が上だけど)。


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