おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

オリエント急行殺人事件

2022-04-18 07:47:23 | 映画
「オリエント急行殺人事件」 1974年 イギリス


監督 シドニー・ルメット
出演 アルバート・フィニー
   ジャクリーン・ビセット
   アンソニー・パーキンス
   マイケル・ヨーク
   ローレン・バコール
   イングリッド・バーグマン

ストーリー
イスタンブールで事件を解決した私立探偵エルキュール・ポアロ(アルバート・フィニー)は、新しい事件のためオリエント急行で急遽ロンドンに向かうことになった。
ポアロは国際寝台車会社の重役である友人のビアンキ(マーティン・バルサム)に再会する。
イスタンブールを出て2日目の夜、雪のために列車はバルカン半島内のある場所で停車してしまう。
そしてその翌朝、一等車に宿泊していた裕福なアメリカ人の乗客ラチェット・ロバーツ(リチャード・ウィドマーク)が死体で発見される。
ポアロとビアンキは、二等車の乗車で捜査対象外とされたギリシャ人医師コンスタンティン(ジョージ・クールリス)、フランス人車掌ピエール・ミシェル(ジャン=ピエール・カッセル)と共に捜査に乗り出す。
コンスタンティン医師の検死により、ラチェットは合計で12回刺されており、そのうち少なくとも3回が致命傷になるほど深かったことが分かった。
手掛かりを元に、ポアロは一等車の乗客の尋問を開始する。
そしてポアロは「ラチェットの隠された過去」を暴き出す。
実はラチェットは、カッセッティと呼ばれるマフィアのボスだったのだ。
ラチェットは、正義の名の下に殺されてもやむをえないような人物だった。
かといって、このまま殺人犯を見逃すわけにもいかない。
果たして殺人を遂行したのは一体誰なのか?
国際色豊かな乗客たちには相互に何のつながりもないと思われたが、彼らには他の乗客を証人とする完璧なアリバイがあったのだが、ポアロの灰色の脳細胞が導き出した事件の真相は、予想もつかないものだった。


寸評
僕は外国のミステリー作家としては「シャーロック・ホームズ」の生みの親であるコナン・ドイルと本作の原作者であるアガサ・クリスティしか知らない。
逆に言えばそれだけ両者は著名な作家ということになる。
中でもこの「オリエント急行殺人事件」は有名なもので、一体誰が犯人なのかは映画を見る前から知っていた。
僕の認識は、犯人は分かっているのだが、それがどのような関係の人だったのかは明確なものではなく、このような人が犯人だったのだという漠然としたものだった。
従って、作品を見る前の興味は、出演者がどのような演技を見せ、主人公のポアロがどのようにしてなぞ解きを興味深く見せてくれるかに尽きていた。

主人公の探偵ポアロにアルバート・フィニー、殺されるラチェットにリチャード・ウィドマーク、その秘書役にはアンソニー・パーキンス、多彩な乗客としてアーバスノット大佐はショーン・コネリー、同じく乗客の中年のスウェーデン人宣教師にイングリッド・バーグマン、ハンガリーの外交官にはマイケル・ヨーク、アンドレニイ伯爵の若くて美しい夫人にはジャクリーン・ビセットなどそうそうたるメンバーが揃っていて、彼らの演技合戦を見ているだけでも面白い作品である。
アルバート・フィニーのポアロはイメージなのだろうが、オーバー演技とその風貌に演劇的なものを感じる。
そう、これはまさしく映画に名を借りた集団舞台劇なのだ。
実際イングリッド・バーグマンはこの作品でアカデミー賞助演女優賞を獲得した。
これだけ多くの登場人物を描き分けたシドニー・ルメットの力量はやはり大したものだと思う。

冒頭でニューヨークのロングアイランドに住む大富豪アームストロング家の三歳になる一人娘が誘拐され、20万ドルという巨額の身代金が犯人に支払われたにもかかわらず、幼児は死体となって発見された事件がダイジェスト的に描かれる。
観客である我々はこの時点で、この後に起きる出来事はこの事件に関係しているということを感じ取る。
これを描いておかないと、オリエント急行の中で起きた殺人事件の関係者のことが理解できないのだが、しかし誘拐事件を描くことで犯人はこの事件の関係者だと判ってしまい、犯人探しのスリルとなぞ解きのだいご味は半減されていると思う。

登場人物の中で犯人から除外されるのが主人公の探偵ポワロと、彼の友人でこの鉄道会社の重役であるビアンキ、それと車両が違っていた医者のコンスタンティンであるのだが、このコンスタンティンのジョージ・クールリスが滑稽な役割を演じている。
ポアロが尋問した人物をその都度犯人に違いないと決めつけるのである。
これは日本映画でも市川崑が横溝正史の金田一耕肋シリーズの中で加藤武に演じさせていたのと全く同じだ。
このような謎解き映画にはそのような役割の人物を登場させたほうがエンタメ性に富むのだろうか?
それとも両巨匠とも同じような感性を持っていたのだろうか?
ちょっと面白い共通点だった。


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