おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

塀の中の懲りない面々

2024-03-04 07:22:17 | 映画
「塀の中の懲りない面々」 1987年 日本


監督 森崎東
出演 藤竜也 植木等 山城新伍 小柳ルミ子
   花沢徳衛 柳葉敏郎 川谷拓三
   なべおさみ 上杉祥三 

ストーリー
前科13犯の安部直也(藤竜也)は恐喝罪、銃刀法違反で懲役3年3カ月の刑を受けて服役中。
受刑者たちには窃盗前科21犯で、国公立の場所でしか仕事をしない老懲の忠さんこと小山忠造(花沢徳衛)、紙喰いのメエこと山崎明(川谷拓三)、看守たちにチクる岩崎源吉(なべおさみ)、色白の二枚目、松沢英二(上杉祥三)、脱獄の日に備えて毎日ランニングをする革命の闘士、城山勉(柳葉敏郎)などがいた。
ある日、安部は工場での労働で新入りのサブこと飯田三郎(森山潤久)と再会した。
彼は持ち込んだシャブを安部に渡すが源吉にチクられて、入所したその日から軽塀禁になってしまった。
定年間近の看守の鉄っつぁん(江戸家猫八)が、ドク・西畑(植木等)に腰痛を診てもらいにやって来た。
ドクは医師法違反、前科15犯のニセ医者だが、皆の医療を診て重宝がられている。
人情家として親しまれている鉄っつぁんと対称的なのが看守長の鬼熊(山城新伍)で、彼は何かにつけて安部を目の仇にして挑発する。
一方シャバでは、安部の別れた妻、風見待子(小柳ルミ子)が経営する赤坂のクラブ“カサブランカ”で、安部の母、春代(丹阿弥谷津子)が安部からの手紙を読んでいた。
離婚の原因は安部の浮気だったが、ふたりは別れた今も愛し合っている。
針を入手したことが発端で独居房に入れられた安部は、隣にかつて小菅刑務所で一緒だったオカマの上州河童(ケーシー高峰)が入っているのを知る。
彼は相思相愛の大学生に逃げられ、恐喝したのだった。
冬になり、出所していたメエが安部に教わった新種の仕事が失敗して戻って来た。
それは金融会社を依頼人と訪ねて、社員が借用書を出すと同事にメエがそれを食べてしまいズラかるというものだったが、下剤を飲まされてしまったのだ。
春、安部は出所するドクに待子にある伝言を托した・・・。


寸評
原作は刑務所暮らしの経験がある阿部譲二の同名作品で、懲りない面々のエピソードは原作に紹介されている内容の方が面白い。
原作もなんてことのない読み物だと思うが、「懲りない◯◯」が流行語となって作られた本作もなんてことのない作品になってしまっている。
もう少し工夫すれば面白い作品になっていたのではないかと思われる。
ほとんどが喜劇的なシーンの連続なのだが、時々しんみりさせるシリアスな話が盛り込まれている。
そのバランスが何とも中途半端になってしまっていたような気がする。

登場人物のキャラクター設定は面白い。
小山忠造は国立大学や国立病院や役所など官庁関係専門の泥棒で、捕まった時に心証が悪いと警察と裁判所には入っていない老人である。
彼は娑婆にいるころに、同じ町内出身のレビューに出ている女の子の後援会などをやっていて応援していたことがあり、刑務所でのテレビ鑑賞で彼女の姿をみて懐かしんでいる。
それを見た安部は看守の鉄っつぁんに恩を売り、彼女の慰問を実現させるが、忠造は病気がこじれ医療刑務所送りになってしまう。
これなどもドタバタする作品の中にあって、しんみりさせるエピソードだと思うが結末がどうなったのか分からずお終いだった。
オカマの上州河童がみる幻想も、若い少年との戯れだとは分かるがインパクトはない。
脱獄のために体を鍛えていた城山勉がどのようにして脱獄するのかと楽しみにしていたら、なんだか肩透かしを食ったような結末だった。

この手の映画の特性かも知れないが、あまり映画にでない元プロ野球選手の江夏豊や、コピーライターの糸井重里などが看守役で出ていてセリフもあるのだがキャスティングが生かされていない。
江夏などはピッチングを披露するが往年の姿はなく、投げるボールをトリックでごまかさざるを得ず、ましてやこの野球対決は何だったのかというシーンになっていた。

面白かったのは看守の鬼熊こと熊井と安部の格闘シーンだった。
鬼熊は囚人いじめをとも思えるスパルタ指導を行っている看守なのだが、安部を目の敵にしていてある時、他の看守を追い出しておいて安部を叩きのめそうとする。
ところが逆にのされてしまい、体面を保つため安部にやられた格好をさせる。
安部は「ひとつ貸しだ」といって床に倒れてやるが、権力者を皮肉っているシーンとしては一番だった。

一度娑婆に戻ったドク・西畑が安部の彼女が今も安部の帰りを待っていることを伝えて映画は終わるが、その前に安部の両親の面会があり、母親が語った一言が安部の笑顔を増幅させていた。
待っていてくれる人がいるということは、塀の中だろうが塀の外だろうが幸せなことなのだと思う。


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