おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

春江水暖~しゅんこうすいだん

2023-11-22 07:19:54 | 映画
「春江水暖~しゅんこうすいだん」 (2019) 中国


監督 グー・シャオガン
出演 チエン・ヨウファー  ワン・フォンジュエン
     スン・ジャンジエン  スン・ジャンウェイ
   ジャン・レンリアン  ポン・ルーチー
   ドゥー・ホンジュン  ジャン・グオイン
   ジェアン・イー    スン・ズーカン

ストーリー
杭州市、富陽。大河、富春江が流れる。
しかし今、富陽地区は再開発の只中にある。
顧<グー>家の家長である母の誕生日の祝宴の夜。
老いた母のもとに4人の兄弟や親戚たちが集う。
その祝宴の最中に、母が脳卒中で倒れてしまう。
命は取り留めたものの認知症が進み、介護が必要になってしまう。
「黄金大酒店」という店を経営する長男、漁師を生業とする次男、男手ひとつでダウン症の息子を育て、闇社会に足を踏み入れる三男、独身生活を気ままに楽しむ四男。
恋と結婚に直面する孫たち。
彼らは思いがけず、それぞれの人生に直面することになる。


寸評
三国志の孫権が統治していたところが舞台である。
孫権の部下だった周瑜が水軍を率いて活躍したとも聞くから、河川が入り組んでいる地域なのだろう。
その河をとらえたシーンはどの場面であれ美しい。
歴史的な景観、山水画を思わせる美しいショットが映し出される。
俯瞰的なカメラワークと音楽が重なった相乗効果によって、悠久の時を感じる。
グーシーとジャンが川べりの公園で語り合っている。
そこでジャンは目的地まで泳ぐ自分が早いか、歩いていく彼女が早いか競争を持ち掛け、ジャンは河に飛び込み泳ぎ始める。
川岸には柳並木が続いている。
大河を泳いで行く男とその周りに悠然と広がる風景を遠景で何分間にも及ぶ長いトラベリングで追い続ける。
石段のある場所に泳ぎ着くとグーシーが先に到着待っている。
服を着て、船の時間がないからと船着き場に急いでいき、船に乗り込み会場に上がり、二人はデッキに出て大河を眺める。
そこまでを遠景でとらえて一気に見せる。
長回しと言うより、ロングテイクと言った方が似合う、とても長いワンカットである。
長いカットは度々使われて、その緩やかなカメラワークによって、時間と空間という概念を感じさせられる。
このカメラワークと映像がすべてと言ってよい作品である。

母のユーフォンは2度目の結婚で富陽へやってきた。
誕生日を祝う場面は、中国の家族、親戚関係を感じさせる。
認知症を発症しても、グーシーを理解し励ます姿に感動する。
長男のヨウフーは「金大酒店」オーナー兼料理人で、昔はシングの選手だったようだ。
金に苦労しているらしく、漁師の弟に魚代が払えずにいる。
ヨウフーの妻フォンジェンは娘のグーシーが金持ちと結婚してくれることを望んでいてジ
ャンとの結婚には反対である。
相手の家にすがろうとする気持ちと共に、娘の幸せを願う親心もある。
この感情はグー家に限ったことではないだろう。
次男のヨウルーは富春江で漁をして船上暮らしだ。
家はあるが、その家も立ち退き・取り壊しになり、立ち退きの金で息子に家を買おうとして
いる。
製紙工場で働いている息子のヤンヤンが近々、結婚の予定なのだ。
ヨウルーの妻アインは息子の幸せだけを願っている極普通の母親である。
三男のヨウジンは妻と別れ、男手一つでダウン症の息子カンカンを育てている。
息子の治療費と借金返済の為にイカサマ博打に手を出している、兄弟の中ではハグレ者な
のだが、グーシーに言わせれば兄弟の中で一番情があるらしい。
四男のヨウホンは再開発の取り壊し現場で働いていて、気ままな独身暮らしをしていたが、
兄の薦めで女性と会う。
映画はこれらの家族が織りなす群像劇なのだが、特に大きなドラマがあるわけではない。
三男ヨウジンの賭博行為がアクセントになっているが、それがメインではない。
物語は母親の発病で始まり、母親の死で終わる。
北京や上海ではない田舎の市井の人々の暮らしはこんなだろうと思わせる。
爆買いをする大金持ちは大勢いるのだろうが、大多数の中国人は描かれたグー家のような
暮らしと意識のもとで生きているのではないかと想像するが、僕は中国社会がよく分から
ないでいる。


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