おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

昼下りの情事

2023-02-09 07:13:19 | 映画
「昼下りの情事」 1957年 アメリカ


監督 ビリー・ワイルダー
出演 オードリー・ヘプバーン ゲイリー・クーパー
   モーリス・シュヴァリエ ジョン・マッギーヴァー
   ヴァン・ドード

ストーリー
クロード・シャヴァッス(モーリス・シュヴァリエ)はパリの私立探偵である。
御依頼ともあれば、アメリカの億万長者フラナガン(ゲイリー・クーパー)とX夫人(リーゼ・ボウルディン)の濡れ場を盗み撮るという仕事も、やらねばならない。
依頼人のX氏(ジョン・マクギバー)がその写真を見て、フラナガンを殺すといきまく。
これを聞いたのが、シャヴァッスの娘アリアーヌ(オードリー・ヘップバーン)である。
彼女は父の扱う事件記録を読むのを楽しみにしていたが、チェロの勉強にコンセルヴァトワールへ出かけたものの、この事件が気になってたまらない。
フラナガンの泊まっているホテルへ来てみると、X氏がピストルをポケットに忍ばせているところにアリアーヌは出くわした。
アリアーヌの機転でX夫人は逃れ、危ういところを助かったフラナガンは、彼女と明日の午後を約束する。
食事と美しいムードミュージック、フラナガンのお定まりの手に、アリアーヌはすっかり参ってしまう。
何ヵ月後のある夜、アリアーヌはオペラ劇場で恋しいフラナガンに再会し、明日の逢瀬を約束する。
翌日ホテルを訪れたアリアーヌに、皮肉にも今度はフラナガンが参ってしまい、彼女がことありげに話した男たちのことに、気が揉めてたまらない。
偶然出会ったX氏に相談すると、彼の答は、シャヴァッスに頼め、だった。
シャヴァッスが調査してみればなんと、フラナガンが恋する女性は自分の娘アリアーヌであった。
事実を告げることもできず、シャヴァッスはフラナガンに、あの娘を愛しいと思ったら、パリを離れることだと報告したのだが・・・。


寸評
原題の「Love in the afeternoon = 午後の愛」を「昼下がりの情事」という邦題にしたのはヒットだ。
随分と扇情的なタイトルだが、内容は全く違っていてそのギャップが面白い。
この邦題を見てみだらな映画を期待する者はまずもっていないだろう。
なぜなら主演がオードリー・ヘップバーンだからだ。
「ローマの休日」の妖精が主演とあっては、みだらなものを期待する方がおかしいのだ。
中身はビリー・ワイルダーお得意のラブ・コメディである。
僕は一時期オード―リーの大ファンだったが、この映画のオードリーには魅力を感じない。
濃い眉、大きな瞳、愛くるしい笑顔は紛れもなくオードリーなのだが、それでも魅力はイマイチだ。
なぜ?
ヒロインのオードリーが輝くばかりの美しさなのに対し、相手のゲーリー・クーパーがどうみてもオジイチャンにしか見えず、プレーボーイのムードが感じられない事に尽きる。
この時ゲーリー・クーパーは56歳なのだが、「麗しのサブリナ」のハンフリーボガードだって55歳だった。
「ローマの休日」のグレゴリーペックだって彼等に比べれば若いとはいえ37歳で、この頃のオードリーは結構な年配と共演している。
ゲーリー・クーパーがミスキャストだと思うのは、最初はオードリーがゲーリー・クーパーに思いを寄せるからだ。
やがてその立場が逆転すると言うのがこの映画の見どころなのだが、中年の男が若いオードリーに夢中になるのなら納得なのだが、オードリーが中年のおじさんを追っかけるとなれば、それは違うんじゃないかと思ってしまう。
さらに問題なのはゲーリー・クーパーが、女性を虜にするオーラを発していないことである。
ゲーリー・クーパーはハリウッドを代表する大スターで、若いころは二枚目として恋愛映画も立派に努めていたと思うが、この映画の時点では西部劇の主役が似合う感じになっていて、ロマンスの香りがしないのが欠点だ。
どうやらビリー・ワイルダーはこの役をケ―リー・グラントにやってほしかったようで、それならば納得できる。
ケーリー・グラントとは1963年スタンリー・ドーネンの「シャレード」で共演を果たし、こちらはピッタリだった。

モーリス・シュヴァリエがいい役柄で娘を想う父親を好演している。
父と娘の二人暮らしだが、娘を可愛がり大人として扱っている姿が微笑ましい。
娘を心配する余りの行き過ぎたしつけを行っておらず、預かり物のコートを持ち出しても機知にとんだやり方で問い詰めている。
フラナガンの所へ報告に行く場面は、コメディのなかで少しホロリとさせられる。
それでも父親は娘を笑顔で見送るのだが、最後に父親のナレーションで二人が結婚したことを告げられるのは、やはり前述の年齢差が気になった為の処理だったのではないかと推測する。
コメディ要素があるので軽い映画となっているが、それにしても盛り上がりを感じなかったなあ。
可愛い盛りのオードリー・ヘプバーン主演映画だけに残念な思いが残る。
脚本にも参加しているビリー・ワイルダー痛恨のミスを感じる。


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