おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

世界最速のインディアン

2021-04-26 08:26:58 | 映画
「世界最速のインディアン」 2005年 ニュージーランド / アメリカ


監督 ロジャー・ドナルドソン
出演 アンソニー・ホプキンス
   クリス・ローフォード
   アーロン・マーフィ
   クリス・ウィリアムズ
   ダイアン・ラッド
   パトリック・フリューガー

ストーリー
ニュージーランド南端の町、インバカーギルで独り暮らしのバート・マンロー(アンソニー・ホプキンス)は、1920年型インディアン・スカウトという40年以上も前の古いバイクを改良し、数々のスピード記録を出している。
バートにはライダーの聖地であるアメリカのボンヌヴィル塩平原で世界記録に挑戦する夢があった。
とはいえ、バートの収入は年金のみ。
倹約精神を発揮してマシンの改良にも廃品を利用しているが、渡航費が足りない。
しかし、やるなら今しかないと決心を固めたバートは、銀行から借金し、いよいよ出発の日を迎える。
貨物船にコックとして乗り込み、ロサンゼルスに上陸したバートは、入国審査で『インディアン』と口にしてあらぬ嫌疑をかけられたりしながらも、どうにかモーテルにチェックイン。
ロングビーチの税関へマシンを引き取りに行くと、木枠は無惨に破損していたにもかかわらず、インディアンは奇跡的に無傷だった。
こうしてユタ州のボンヌヴィルへ向かって出発するバート。
様々な人との出会いと別れを繰り返し、『スピード・ウィーク』の開幕直前、ついにバートは見渡す限りの白い平原に立ち感無量だったが、思わぬ障害が待ち受けていた。
出場するには事前の登録が必要であることを知らなかったため、受付で門前払いされたのだ。
知り合ったばかりの出場者ジム(クリス・ローフォード)が係員を説得してくれたおかげでマシンの点検は受けられたものの、時代遅れのポンコツとバカにされ『整備不良』の烙印、おまけにバート自身も『年齢オーバー』と言われる始末。
この日のために手塩にかけた愛車インディアンとともに、はるばる地球の裏側からやって来たバート。
果たして、彼は世界一の夢を達成できるのか?


寸評
上質のロードムービーだ。
作品を見れば原題、および「世界最速のインディアン」という邦題も理解できるが、最初に抱くイメージからすれば、この邦題は失敗だったと思う。
僕たちの世代は、インディアンと言えばアメリカの先住民族を連想してしまう。
もう少し内容を思い起こさせる題名が付けられなかったものかと残念な気持ちになる。
そう思わせるほど中身はいいのだ。

独り暮らしをしている初老のバート・マンローは人はいいのだが近所迷惑な存在で、早朝からバイクの改造のために騒音を立てるし、庭は草ぼうぼうで景観を壊している。
ついにはガソリンをまいて燃やし、消防車が駆けつける騒ぎも起こしたりしている。
しかしその人の良さは隣家の少年を引き付け、少年はバートの家に入り浸っている。
タイヤを削る為に肉切り包丁を依頼すると、少年は母親の目をごまかし持ってくるという仲の良さである。
この少年との交流だけでも一本の映画が撮れそうな関係が微笑ましく描かれる。
バートは独り暮らしだが、支えてくれる女性がいる。
彼女との交流はうらやましいぐらいに優雅だ。
決して裕福ではない暮らしだが、心は裕福だし優雅なゆとりを感じさせる。
地元の若いバイク仲間連中が、バートにバイクでの喧嘩をふっかけていて険悪ムードかと思いきや、バートの旅立ちには選別の金をもってバートの車を先導する。
バートは彼等にも愛される人間であることがわかる。
老人はさもすれば社会から疎外され迷惑がられる存在だ。
死亡通知を受け取っても迷惑だと言わんばかりのことあって、死んでも迷惑がられるのかと悲しい気持ちになってしまうこともあるのだが、バートはそんな老人ではない。
いい加減にしろと言われている隣人からも、どこか愛されている所があるのだ。
老後はかくありたいと思わせる。

バートは南半球のニュージーランドから、北半球のロサンゼルスに旅立つが、旅先では皆から親切にしてもらう。
乗せてもらった貨物船の船長や船員たち。
モーテルの女性(?)とも心を通わせるが、それはバートが人を差別しない広い心を持っているからだ。
同年輩のご婦人たちには愛を与え、愛をもらう。
その様子も微笑ましい。
地元警察も彼には寛大な処置を取るが、警官もやり取りから彼の人の良さを感じ取るからだろう。
レースの地ボンヌヴィルは塩湖が干上がったような場所で、白い平原が延々と続いているのだが、世界には目を見張るような自然が作り出した場所があるものだと思わされる場所だ。
事前のすったもんだもあって、そこでのレース・シーンはやはり手に汗握る。
彼の記録がいまだに破られていないことに驚くと共に、自然と笑みがこぼれる老人賛歌の作品だった。


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