おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

ハッピーエンド

2018-03-20 09:27:46 | 映画
ハッピーエンド 2017年 フランス / ドイツ / オーストリア


監督 ミヒャエル・ハネケ
出演 イザベル・ユペール   ジャン=ルイ・トランティニャン
   マチュー・カソヴィッツ ファンティーヌ・アルデュアン
   フランツ・ロゴフスキ  ローラ・ファーリンデン
   オレリア・プティ    トビー・ジョーンズ

ストーリー
フランス北部の港町カレー。
風光明媚な海岸沿いの大邸宅で三世代同居するブルジョワジーのロラン家では、建築業を営んでいた家長のジョルジュ(ジャン=ルイ・トランティニャン)が高齢のため、すでに引退しもっぱらどうすれば死ねるかを考える日々。
家業を継いだ娘のアンヌ(イザベル・ユペール)は、取引先銀行の顧問弁護士を恋人に、ビジネスで辣腕を振るっていた。
だが、専務を任されていたアンヌの息子ピエール(フランツ・ロゴフスキ)は、ビジネスに徹しきれない。
使用人や移民労働者の扱いに関して、祖父や母の世代に反撥しながらも、子どもじみた反抗しかできないナイーヴな青年だった。
また、アンヌの弟トマ(マチュー・カソヴィッツ)は家業を継がず、医師として働き、再婚した若い妻アナイス(ローラ・ファーリンデン)との間に幼い息子ポールがいた。
さらに、幼い娘を持つモロッコ人のラシッドと妻ジャミラが、住み込みで一家に仕えている。
一家は同じテーブルを囲み、食事をしても、それぞれの思いには無関心。
SNSやメールに個々の秘密や鬱憤を打ち込むばかり。
ましてや使用人や移民のことなど眼中にない。
そんな中、トマは、離婚のために離れて暮らしていた13歳の娘エヴ(ファンティーヌ・アルドゥアン)を、前妻が入院した為に一緒に暮らそうと呼び寄せる。
こうしてジョルジュは、疎遠になっていたエヴと再会。
意に添わぬ場面ではボケたふりをして周囲を煙に巻くジョルジュだったが、死の影を纏うエヴのことはお見通しだった。
一方、幼い頃に父に捨てられたことから愛に飢え、死とSNSの闇に憑りつかれたエヴもまた、醒めた目で世界を見つめていた。
秘密を抱えた2人の緊張感漲る対峙。
ジョルジュの衝撃の告白は、エヴの閉ざされた扉をこじ開けることに・・・。

寸評
「ハッピーエンド」とはすごいタイトルだ。
どこがハッピーエンドなんだと思うし、最後のエヴの行動はやはりハッピーエンドだったんだろうかとも思う。
大邸宅に住んで使用人がいるということを除いては、どこにでも潜んでいそうな内容だし、誰しもが心の奥底に抱いている心理のような気がする。
看病に疲れた夫が妻を殺すという事件は時々目にするし、腹立たしい人間をどうにかしたい気持ちは誰しもが持っているだろう。
見ているうちに「こいつらは何なんだ」という気になってくるロラン家である。
冒頭からして少女のエヴがとる行為に、これはサイコ・スリラーかと思ってしまう展開だ。
子供が動物をイジメたり殺したりして喜ぶことはあるだろうけれど、この少女がハムスターを殺すシーンはそれが理由ではない。
トマは前妻が入院したために別れていた娘を引き取り同居するのだが、どうやら母親の入院にはこの娘が絡んでいそうなことを前述のシーンで想像させている。
本格サスペンスではないので、それに至る詳細は描かれないけれど、エヴが父親のトマと病室を訪ねるシーンはゾッとさせた。
肉親との別れに悲しみの感情はないのか?
そんな決別もあるのかもしれない。
肉親の死にホッとすることってあるもんなあ・・・。

ジイさんは正気なのかボケているのかよくわからないが、贖罪の気持ちを持ち続けていたことはわかる。
身体が不自由になりながら贖罪の気持ちが高まっていく中で、ただ生きているだけという時間はつらいだろうなと思うし、自殺願望が湧き出ても不思議ではないと思う。
能力以上の責任を負わされたり、生きていくためには本来向いていない仕事でもやらねばならないことだってあるだろうが、ピエールはそんな重圧に押しつぶされていく。
エヴは家族の秘密を自身の中でどんどん暴いていく。
ジョルジュ爺さんにとってはエヴは死神のような存在だ。
死神は冷たくジョルジュ爺さんを見ていたが、この死神はSNSという仮想社会の中でしか生きられない。
取りついた相手の死にゆくさまをネット上に投稿しようとする。
どこか狂っている。

普通の人はやらない。
でもどこかにそんな気持ちを抱いている。
人間という動物の怖いところである。


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