おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

黒衣の刺客

2023-11-02 08:22:27 | 映画
「黒衣の刺客」 2015年 台湾


監督 ホウ・シャオシェン
出演 スー・チー チャン・チェン 妻夫木聡 忽那汐里
   シュウ・ファンイー ニー・ターホン ニッキー・シエ
   イーサン・ルアン シュー・ユン

ストーリー
8世紀後半、唐王朝時代の中国。
美しき黒衣の女、聶隠娘(ニエ・インニャン)は師匠である女道士・嘉信(ジャーシン)の元で修行を積んだ暗殺者である。
殺しの腕前は確かだが、弱点は時折「情」が顔を覗かせることで、この日もあと一歩で標的を仕留め損ねた隠娘に対し、嘉信は新たな使命を課す。
それは隠娘の幼馴染であり、かつての婚約者だった田季安(ティエン・ジィアン)の暗殺指令だった。
13年ぶりに故郷に舞い戻ってきた隠娘は両親の厚い歓迎を受けたが、かつての頃とは打って変わって冷ややかな表情を浮かべる隠娘の姿に周囲は戸惑いを隠せない。
隠娘は地方組織である「藩鎮」(はんちん)の中でも特に有力者にのし上がっていた田委安の屋敷に潜入するが、この日は結局任務を果たさずに立ち去る。
しかし、その際に室内にかつて婚約していた時に分かち合った玉玦の片割れを残し、それを見つけた田委安は隠娘の狙いを悟る。
その後、田委安の怒りを買って左遷させることになった隠娘の伯父・田興(テェンシン)は隠娘の父・聶鋒(ニエ・フォン)の見送りを受けていたが、そこに謎の刺客が襲い掛かってきた。
そこに偶然居合わせていた鏡磨きの青年(妻夫木聡)が駆け付け、聶鋒らを助けようとした時に隠娘が現れて刺客たちを撃退する。
鏡磨きの青年は日本出身で、妻(忽那汐里)を地元に残し、遣唐使として派遣されてきたのだが、帰りの船が難破したために現地に留まることになっていたのだ。
隠娘は青年に自分の傷の手当てをしてもらい、次第に青年に対して心を開いていく。
その後、再度田委安の館に潜入した隠娘は、田委安の妾である瑚姫(フージィ)が呪術により苦しんでいるところを助ける。
その場を目撃していた田委安は隠娘の仕業だと勘違いし二人は刃を交えるが、隠娘は田委安を殺さずに立ち去る。
その直後、田委安は瑚姫に呪術をかけた首謀者は自らの正妻・元氏(ユェンシ)だということを知り、呪術師を殺害すると元氏をも殺そうとするが思いとどまる。
その頃、隠娘は嘉信の元を訪れ暗殺失敗を報告、「委安を殺しても、後継ぎはまだ幼いので混乱は必至だろうから」と理由を述べた。
隠娘は嘉信と刃を交えるが、もはや暗殺者稼業から足を洗うことを決意していた隠娘は刃を収め、師と決別して去っていく。
その後、完全に暗殺者から引退した隠娘は馬を引いて鏡磨きの青年が滞在する辺境の村を訪れる。
彼女の表情には、これまで見せたことのなかった笑顔が浮かんでいた。


寸評
邦題から受ける印象と違ってカメラワークが実にゆったりとしている静かな映画である。
主人公が刺客なので時々アクションシーンが盛り込まれているが、お得意のワイヤーアクションを期待していると裏切られる。
僕は中国語が分からないので字幕頼りになるのだが、人名が読みづらいことに加え、描き方において大胆な省略を行っているために物語として分かりにくいところがあるのが欠点だ。
もっとも、この大胆な省略はホウ・シャオシェン監督の意図したものであろう。
カメラワークは巧みで、自然が漂う遠景の中にとらえられる人物のシーンなどは山水画を見ているようである。

田委安は皇帝ではなく地方の行政官のように思えるが、セットは唐時代の地方権力者の生活空間はこのようなものだったろうと感じさせる雰囲気がでている。
隠娘は刺客として修業を積んでいるが刺客の持つ冷徹さを持てないでいる。
むしろ情に厚い女刺客で、殺すべき相手を全く殺していない。
彼女だけでなく、この映画では内容の割には人が殺されるシーンが極めて少ない。
冒頭で隠娘は標的を殺していない。
田委安を殺さないのは分かるが、田委安も愛する瑚姫を呪術によって殺そうとした元氏を殺していない。
隠娘は師である嘉信と戦うが、すさまじい戦いではなくあっさりと刃を収めている。
派手なアクションを期待していた僕は裏切られ続けた内容である。
独特の雰囲気を持った作品だが、僕には面白みに欠ける映画だった。


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