おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

ビッグ・ウェンズデー

2021-09-27 07:21:13 | 映画
「ビッグ・ウェンズデー」 1978年 アメリカ


監督 ジョン・ミリアス
出演 ジャン=マイケル・ヴィンセント
   ウィリアム・カット
   ゲイリー・ビューシイ
   リー・パーセル
   バーバラ・ヘイル
   パティ・ダーバンヴィル

ストーリー
1960年代初め、アメリカの西海岸で遊び暮れるマット、ジャック、リロイの若者がいた。
毎日働きも学びもせずにサーフィンにのめりこみ、その日暮らしを楽しんでいる仲良し3人組は数十年に一度来る伝説の大波ビッグウェンズデーに挑戦することを夢見ていた。
彼らは、地元では有名な凄腕サーファーで、毎晩、女たちとパーティを繰り広げ、踊り、酒を浴びるように飲み、大麻を楽しみ、そして、どんなにベロベロに酔っぱらっても、朝には、ビーチに行きサーフィンを楽しんだ。
そんな能天気な日々に、水を差すベトナム戦争が勃発する。
ベトナム戦争の招集令をあの手この手で交わす能天気な西海岸のメンバー。
そんな中、生真面目なジャックだけ志願して戦争に行く。
そこから3年が経つ中で、引っ越しする者、結婚して家庭をもつ者、戦死する者などが出てきて、西海岸で遊び暮れていたメンバーはサーフィンから遠ざかりバラバラになる。
かつて子供たちの憧れだったマットは、サーフィンから遠ざかり落ちぶれた日々を過ごしている。
戦争からかえってきたジャックは、恋人が他の男と結婚していること、かつての町並みが失われていることに落胆する。
みんな、かつてのような笑顔がなくそれぞれの場所でそれぞれ小さな不幸を抱えながら生きている。
それは、青春に終わりを告げれずにズルズルいろんなものに流された結果だった。
そんなある日、夢見ていた大波ビッグウェンズデーが来る噂を聞きつけた3人は、かつての海に集結する。
彼らは青春にピリオドを打ち、明日をしっかり見つめるために、伝説の大波ビッグウェンズデーに挑戦する。
仲間たちが次々に波乗りに失敗する中、マットはビッグウェンズデーの波乗りに成功する。
マットは海岸で羨望している若者に手に持っているサーフボードをプレゼントする。
青春にピリオドを打てた3人は、すがすがしい気持ちで、それぞれいるべき場所に帰っていく。


寸評
サーファーのバカ騒ぎ映画かと思っていたら、実に様々な要素が散りばめられている作品となっている。
見る年代によって受ける感覚は違うだろうと想像する。
歳をとった僕は、青春時代の楽しき日々、その中で育んだ仲間との友情を懐かしんでいた。
描かれた彼らは、夢を持ち、故郷を愛し、そして大人になることへの恐れを有して苦悩する若者たちだ。
それらを大きな時代のうねりの中で、時には温かく、時には爽やかに、そして時には厳しく見つめている。
流れてくる音楽も心地よいものがあるし、サーフィンのシーンは臨場感があり見応えがある。

僕も彼らほどではないが、あの時代には随分とバカをやった。
我が家に集まった連中は、流石に彼らのようなパーティと大騒ぎは出来なかったが随分と騒いだものだ。
映画でも店主の女性が若者の大騒ぎを咎めもせずに見守っているが、階下で眠っていた母も同じ思いだったのか、それとも息子の体たらくに悲しみ諦めていたのかもしれない。
青春時代が楽しければ楽しいほど、青春時代との決別は淋しいものだ。
僕はこの映画を見ていて、社会人になるときの虚脱感を思い出した。
卒業が決まって、夢中になったものが中心にあった世界の崩壊への淋しさが襲ってきた。
何をしてよいのか分からず、相変わらず短期のアルバイトをするだけだった。
会社勤めが始まっても、空いた時間は映画館にいるだけの生活だった。
社会人としての自覚が持てるようになったのは随分経ってからだったように思う。

ジャックは志願してベトナム戦争に行き、帰って来てかつて付き合っていた女性を訪ねると別の男と結婚していたというエピソードが描かれているが、ジャックの落胆はよくわかる。
かつて愛し合った女性の結婚を聞くと、どうすることも出来なかった自分が情けなくなってくる。
兵役逃れの芝居が過ぎて徴兵されてしまったワクサーは戦死して帰郷を果たす。
何歳になっても友人の死は辛いものだ。
僕も若くして亡くなった後輩が居たし、この間まで元気だった友人が連絡を取ると亡くなっていたこともあった。
人の生死のはかなさと言えばそれまでだが、親の死よりも淋しいものがある。
マットは請求書に追われる落ちぶれた生活を送っているが、彼の救いはペギーといういい伴侶を得ていることで、結婚後のペギーはあまり登場しないが、落ちぶれ亭主を支えるいい奥さんだと感じ取れる。
マットをビッグ・ウェンズデーに送りだすときのさりげない態度に、僕は妻の理想像の一端を見た。
かつてはサーフィンのスターだったマットがビッグ・ウェンズデーに向かうと、自分は忘れ去られて新しいスターが登場している。
若い時にたむろしていた場所から海に向かうと、ジャックとリロイが待ち構えている。
彼らはありったけの力で大波に挑戦するが、その姿が美しい。
そして自分たちの時代が終わったことを悟り、それぞれの居場所に戻っていく。
青春時代は誰にでもあり、そして誰もが通り過ごして新しい生活を始める。
不本意なことも有るだろうが、強く生きていくしかない。
又会おうと言って別れられる、いつまでも仲間でいられる者がいる幸せを守りたいものである。


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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
公開時に見ました (FUMIO SASHIDA)
2021-09-27 10:26:00
最後、変なテーマソングが流れてきたのには、場内爆笑でした。
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あの頃は (館長)
2021-09-28 07:47:32
私の学生時代はボーリングが大ブームで、サーフィンなんてやってる人を見たことがありませんでした。
冬のスキーは居てたかな?
ゴルフブームの到来はしばらくしてからでした。
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