おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

Ray/レイ

2023-05-30 06:25:59 | 映画
「Ray/レイ」 2004年 アメリカ


監督 テイラー・ハックフォード
出演 ジェイミー・フォックス ケリー・ワシントン クリフトン・パウエル
   ハリー・レニックス リチャード・シフ アーンジャニュー・エリス
   シャロン・ウォーレン カーティス・アームストロング 

ストーリー
ジョージア州の貧しい家庭に生まれたレイ・チャールズ・ロビンソン。
彼は、病弱ながらもけなげな母アレサによって弟と仲良く育てられた。
だがある日、弟が溺死してしまい、そしてレイも7歳の時、視力を失った。
1948年、17歳のレイ・チャールズ・ロビンソン(ジェイミー・フォックス)は、故郷の南部ジョージア州からシアトルに出て、音楽の活動を始める。
やがて彼は盲目の天才と呼ばれ、やがてバンドの一員としてツアーに参加するが、その頃に麻薬を覚える。
1954年にはゴスペル・シンガーのデラ・ビー(ケリー・ワシントン)と結婚し、ソロのレコードでヒットを飛ばす。
やがて息子が生まれたが、レイはバック・ヴォーカルのメアリー・アン・フィッシャー(アーンジャニュー・エリス)と愛人関係にあり、さらに1957年、レイは契約したヴォーカル・トリオ、レイレッツのメンバーであるマージー(レジーナ・キング)を新しい愛人にする。
1959年、一家はロスに移り、2人目の息子も誕生。
レイはアトランティック・レコードからABCレコードに移籍し、60年に『我が心のジョージア』で初のグラミー賞を受賞したが、しかしレイは名声の裏でヘロイン浸りの生活を続けていた。
やがてマージーが麻薬で死亡。
1965年、レイはボストンの空港で麻薬の密輸で逮捕され、彼は更生クリニックに入り、麻薬から足を洗った。
そして1979年、ジョージア州は、かつてコンサートの契約違反で永久追放を宣告したレイの名誉を回復し、『我が心のジョージア』を州歌にするのだった。


寸評
レイ・チャールズと言えば、僕が知る外国ミュージシャンのなかでもその存在感は、ビートルズなどと同様に間違いなく上位に入るミュージシャンだ。
「ファッド・アイ・セイ」「愛さずにはいられない」「アンチェイン・マイ・ハート」「 ユー・アー・マイ・サンシャイン」などは深夜ラジオを聞いていると自然と耳に入ってきた曲だ。
伝記ものとしては親しみがあるだけに、最初から興味を持って見ることが出来た。
彼が麻薬の常習者で、しかも薬物使用の逮捕歴があることを知ったのは後年のことで、耳にしていた頃はそんな事実は知らなかった。

映画を見ているとお母さんが立派だったのだと思わされる。
視力を失った彼を厳しく育てる姿に感動する。
自分の手元ではもう教えることがないと盲学校に入れる。
レイにとっては悲しい別れだが、母にとっては自分の亡き後のレイの人生を考えてのことだ。
僕が在職中に身障者のお母さんと話す機会があったのだが、その方々もやはり自分の亡き後の子供たちの自立を真剣に考えておられた。
立派だった母親の教えをレイは時々思い起こす。
レイにとってはそんな母親だったことが幸いしたと思うし、ビーと出会ったことも幸いだったと思う。
それでも愛人を持ってしまうのは男の性なのかなあ。

レイは小さい頃に、不注意から仲の良かった弟のジョージを死なせてしまっていて、その時のトラウマに悩まされ時々幻覚を見る。
ジョージが洗濯用の桶で溺れ死んだために、自分が水たまりでもがき苦しむ姿だ。
水たまりはあちこちの場面で出現するが、この雰囲気が全編を覆えばもっと違った作品になっていただろう。
幻覚シーンと共に描かれるのが、少し色彩のトーンを変えた幼少期の出来事で、母親との触れ合いが描かれる場面を通じて、彼の精神的支柱が亡くなった母親であったことがうかがえる。

彼は盲目で黒人だし、田舎者なのでいろんな人から搾取されたり差別を受けたりする。
報酬をごまかされたり、人種差別を受けたりしているが、ジョージア州での公演時には人種差別の反対運動に同調するまでになっている。
ミュージシャンとして世間に受け入れられてはいたのだろうが、もう少し人種差別で受けた理不尽さを描いていれば、後日「わが心のジョージア」が州歌に採用された感動が得られたのではないか。
薬物依存から抜け出すシーンも、もっと過酷に描いていれば立ち直った時の感動をもう少し味わえたように思う。
全体的には大人しい映画だ。
主人公が盲目なので激しいシーンは少ないが、レイを演じたジェイミー・フォックスはそれらしかった。
何より、当時はこうであったろうと思われる演奏シーンでの観客の盛り上がりが伝わってくるのがいい。
映画を見終ると彼の音楽が聴きたくなってくるから不思議だ。
音楽の持つ魔力だ。


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