ささやんの天邪鬼 座右の迷言

世にはばかる名言をまな板にのせて、迷言を吐くエッセイ風のブログです。

2018年をふり返る(3)

2018-12-26 17:52:22 | 日記
最近はNHKのテキスト「100分 de 名著 スピノザ エチカ」を読んでいる。スピノザは私が好きな哲学者で、現役の頃、彼の著書には何度か目を通したことがある。このたびこのテキストを読んでみたいと思ったのは、一般視聴者向けのスピノザが一体どんなものとして提供されるのか、また、國分功一郎という異才がこの哲学者をどんなふうに料理するのか、とても興味があったからである。

期待は裏切られなかった。素晴らしい言葉に出あった。スピノザをこんなふうに切り取るなんて、私には思いもよらないことだった。國分氏によって切り取られたスピノザ哲学のキラキラ光る一切片、ーーそれを表現する言葉を、以下に抜き書きしておこう(残念ながら、コピペはできない)。

「スピノザは力が増大するとき、人は喜びに満たされると言いました。するとうまく喜びをもたらす組み合わせの中にいることこそが、よく生きるコツだということになります。世間には必ずネガティヴな刺激があります。これはスピノザの非常に強い確信でもありました。それによって自分をダメにされないためには、実権を重ねながら、うまく自分に合う組み合わせを見つけることが重要になります。」(46頁)

今にして思えば、現役だった頃、私が長らく身をおいた職場は、ストレスが多く、決して私に喜びをもたらしてくれるような職場ではなかった。私は「うまく喜びをもたらす組み合わせの中にいること」ができなかった。私は、力をむしろ減少させるような生き方をしていたのだ。なんと愚かな生き方だったことか!
「転職をすればよかったではないか」と言う人がいるかも知れないが、私が身をおいていた業界は、簡単に職場を移れるような業界ではなく、かといって、潰しが効かない私は、この業界からオサラバすれば、路頭に迷うことは目に見えていた。転職をしても、「うまく喜びをもたらす組み合わせ」は決して見つからなかっただろう。ブラック企業で、精魂尽き果てる毎日を送りながら、それでも辞められないサラリーマンのように。あるいは、愛情が醒め、砂漠のような味気ない家庭生活を送りながら、それでも離婚できないでいる老夫婦のようだと言おうか。

ともあれリタイアした私の場合、その意味では、今がーー年金暮らしで、独り引きこもりの毎日を送っている今こそがーー「うまく喜びをもたらす組み合わせの中にいる」状況だと言えなくもない。上に抜き書きした言葉に出あったとき、「これだ!」と、思わず私が膝を打った理由が、読者にはお解りだろう。

哲学に人生論を期待すると、たいていは裏切られるが、コクブン・スピノザはそれを裏切らない。

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【4月】
★南北融和から米朝首脳会談へ。そのプロセスに関われない日本。
(関連記事:4/2《半島情勢 蚊帳の外でも聾(つんぼ)桟敷は》、
      4/10《河野発言 身から出た錆》、
      4/11《拉致家族会 見限られたのか安倍首相》、
      4/22《米朝首脳会談 非核化のゆくえ》、
      4/26《白衣の大王 閲覧注意!》)

★大相撲巡業の土俵上で、救命を要する緊急事態が起き、女人禁制のしきたりが物議を醸す。
(関連記事:4/5《救命と女人禁制》、
      4/6《女人禁制のその後》)

★米軍がシリアを攻撃
(関連記事:4/12《シリア 歴史はくりかえす》)

★森友文書の改ざん問題、関西財務局の口裏合わせ問題、首相秘書官による加計学園「首相案件」発言、そして自民内から首相批判続出。
(関連記事:4/13《泥舟のイタチたち》)

★自衛隊のイラク派遣時の活動報告(日報)が見つかったと話題に。
(関連記事:4/14《日報問題 矛盾から目を背けるな》、
      4/17《日本国憲法 この矛盾をどうする》、
      4/24《日報問題に関する決定版が出た》)

★民進党の参院議員が、現職の自衛官から「おまえは国民の敵だ!」と罵声を浴びせられた事件が話題に。
(関連記事:4/18《現職自衛官の憂鬱》、
      4/20《暴走3佐のありがちな素顔》、
      4/25《「国民の敵」とは何か》)、
      5/4《自衛隊をめぐって 朝日の社説は意味不明》、
      5/11《シビリアンコントロールとは何か》)

★安倍首相がトランプ大統領と会談するため訪米する。
(関連記事:4/19《火だるま首相の訪米》)

★財務事務次官の福田某がセクハラで更迭。
(関連記事:4/21《セクハラに叫ぶ》)

★南北首脳会談が板門店で行われる。
(関連記事:4/27《南北首脳会談に注目》、
      4/29《南北首脳会談 そのゆくえを歴史に訊けば》)

★松山刑務所から平尾受刑者が脱走。ほぼ1週間にわたり逃走。
(関連記事:5/1《平尾受刑者 おまえもなあ》、
      5/3《平尾受刑者と自由 受刑場の運営の見直しを》)


【5月】
★自民党の改憲案について
(関連記事:5/3《憲法記念日に 改憲について考える》)

★国家防衛をアメリカに頼る日本の問題点
(関連記事:5/5《不健全なり 日本の国家防衛》)

★金正恩が再び訪中、習近平と会談
(関連記事:5/9《北朝鮮のキ●タ●》)

★日中韓サミットで北朝鮮の非核化が議題に
(関連記事:5/10《北朝鮮の武装解除は》)

★史上初の米朝首脳会談、シンガポールで6月12日開催に決定
(関連記事:5/12《米朝首脳会談のゆくえ》、
      5/13《拉致問題をどう考えるか》、
      5/14《北朝鮮は核を放棄するのか》、
      5/17《北朝鮮 次の一手は》、
      5/18《手詰まりの北朝鮮》、
      5/19《北朝鮮の手の平返しは》、
      5/26《米朝首脳会談 中止が意味するもの》、
      5/27《米朝首脳会談 トランプ氏のモノローグ》、
      5/30《米朝首脳会談 核棄てドンの目に泪》、
      6/3 《ブレるトランプ、ブレないアベ》)

★新潟女児殺害事件
(関連記事:5/16《新潟女児殺害 防止策はどれが》)

★大学教育の斜陽産業化が如実に
(関連記事:5/20《斜陽の大学教育》)

★是枝裕和監督の「万引き家族」が、カンヌ国際映画祭最高賞パルムドールを受賞
(関連記事:5/21《是枝監督 「父になる」とはどういうことか》)

★モリカケ案件で、またしても問題が浮上
(関連記事:5/22《モリカケなんてクソ喰らえ》、
      5/23《カケとアベ 今度の屁理屈は》、
      5/28《嘘の上塗り 加計学園》、
      6/1《マスコミが談合でカケ隠し?》、
      6/2《ウソつきのほころび・墓穴掘り》)

★日大アメフト反則タックル問題でマスコミが騒然。
(関連記事:5/23《カケとアベ 今度の屁理屈は》)


【6月】
★米朝首脳会談、シンガポールで開催
(関連記事:6/5《米朝首脳会談 その帰趨を決めるものは》、
      6/6《米朝首脳会談 その成功を喜べない理由》、
      6/8《北朝鮮問題 そのタテマエとホンネ》、
      6/9《北朝鮮問題 外交はプライスレス》、
      6/11《米朝首脳会談 さてさてどうなる》、
      6/12《米朝首脳会談 セントーサ島の光と影》、
      6/13《日本の核武装はどうなのか》、
      6/14《シンガポール会談の成否を問う》、
      6/15《北朝鮮と人権問題》、
      6/16《拉致問題をビジネスとして》、
      6/19《陣取りゲームの トランプと金正恩》)

★日朝首脳会談の可能性が生まれたことで、懸念も生まれる
(関連記事:6/21《北朝鮮に日本国民の血税は》)

★玄海原発4号機が再稼働、送電を開始。東京電力は福島第二原発を廃炉
にする方針を打ち出す
(関連記事:6/22《ああ原発 積もる不安と核のごみ》)

★トランプ米政権による高額なアメリカ製軍備品の押し売りが露骨に
(関連記事:6/23《陸上型イージス その配備問題によせて》)

★二階幹事長の少子化対策関連発言が物議をかもす
(関連記事:6/27《少子化の現状を見据える》、
      6/29《二階発言について、さらに考える》、
      6/30《二階発言と軍国思想の神話》)

★サッカーW杯、ポーランド戦における西野監督のパス回し作戦が物議をかもす
(関連記事:7/1《西野ジャパンと健さんの美学》、
      7/2《敗者の美学と評価の色眼鏡》)
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2018年をふり返る(2)

2018-12-25 17:38:06 | 日記
あ〜、疲れた。「2018年をふり返る」の作業は、単純な事務的作業なのだが、遅々として進まない。事務的作業というのは、かえって疲れるものである。加えて、きょうは朝から来客ラッシュ。

まず、9時から介護認定のため、調査員が来る。「今の季節は何ですかね?」と訊くので、「今は夏・・・・・・ではないですよね」と私。冗談半分、いじわる半分のからかいである。一瞬ぎょっとした調査員の顔が見ものだった。

次には、口腔ケアのため、歯科衛生士のお嬢さんがやって来た。毎度のことだが、歯の磨き残しがあると文句を言われた。

午後は弟が。そしてリハセンの家庭調査が。そんなこんなで、こま切れの時間ばかり。集中する時間がまったく取れず、ブログ書きに専念することができなかった。「2018年をふり返る」のまえがきとして、ちょっとした文章を書こうと思っていたのだが、叶わなかった。あしたは、そう、訪問リハビリで電動車イスの練習があるのだったな。やれやれ。すっかり師走の慌ただしさを味わった気分の天邪鬼爺である。


【2月】
★自民党の緊急事態条項案。「私権」の制限を盛り込む。
(関連記事:2/1《私権の制限について》、
      2/2《喫煙の自由と私権の制限》、
      3/9《ヤバいぞ、緊急事態条項》)
★平昌五輪開幕。南北の融和ムードが高まる中、開会式に金正恩の妹・金与正が登場。南北統一をめぐる北と露の目論見について、諸説紛々。
(関連記事:2/4《南北統一 その可能性と不可能性》、
      2/10《五輪をめぐるテロと人質》、
      2/11《文在寅 恋は盲目》、
      2/11《コメントのご意見に答えて》、
      2/13《平昌五輪 開会セレモニーに見る政治的なるもの》、
      2/14《平昌五輪 底にうごめくポリティカ》、
      2/25《半島情勢の今後を読む》)
★日本に厳しい寒波。イワシの大量死。
(関連記事:2/5《イワシの国の笛吹き首相》、
      2/9《イワシ 大量死の真相》)
★羽生結弦、フィギュアスケート男子・金メダル獲得。
(関連記事:2/18《よくやった、羽生!おめでとう。》)
★働き方関連法案をめぐり、与野党で論戦。
(関連記事:2/27《定額働かせ放題なのか》)
★トランプ米大統領の長女・イヴァンカが韓国を訪問し、平昌五輪閉会式に出席。
(関連記事:2/23《イヴァンカさんが訪韓すれば》)
★米朝のチキンレース、再開の動き。
(関連記事:2/24《米朝直接対話のゆくえ》)
★働き方改革法案がもたらす「裁量労働制」に、非難のつぶて。
(関連記事:2/27《定額働かせ放題なのか》)


【3月】
★「森友学園」問題に関して、財務省が決裁文書を改ざんしたのではとの疑惑が、朝日新聞の報道で浮上する。
(関連記事:3/4《過去記事をめぐって》)

★米朝直接対話の兆し。北朝鮮・非核化の問題が浮上。
(関連記事:3/7《米朝直接対話のゆくえ》
      3/8《北朝鮮の非核化とアメリカ》)

★政権の悪事を知りすぎた男・籠池某が(口封じのためか)異常に長期にわたり、牢獄に閉じこめられ、公僕であるはずの財務官僚が政権の僕となって、その存続のために公文書を改ざんする。また、一度だけ政権に弓を引いた男・前川某が後々までふるまいを監視され、地方の一中学校で行った講演の内容にまでチェックの手が及ぶなど、さながら独裁国家の様相。
(関連記事:3/22《渡る世間は俗物ばかり》
      3/23《情報の改ざんはどうよ》)

★ロシアのプーチン大統領が再選を決め、通算4期目に入る。得票数、不正工作により7割越え。
(関連記事:3/19《独裁の形について》、
      3/20《独裁者 権力の維持とその末路》)

★中国では、改憲により、習近平が終身国家主席になれることに。
(関連記事:3/19《独裁の形について》、
      3/20《独裁者 権力の維持とその末路》)

★自民党、首相の改正案に沿って改憲案を取りまとめる。
(関連記事:3/2《改憲論議をどうする》、
      3/24《自民党の改憲論議》、
      3/25《自民党の改憲案はどうよ》)

★北朝鮮の金正恩委員長が中国を訪問。南北朝鮮の融和ムードが高まり、米朝首脳会談が見えてきた中、この振舞いが憶測を呼ぶ。
(関連記事:3/29《金正恩 訪中の藪から棒》、
      3/30《ドンの訪中 どちらが何のために》、
      4/3《中朝そして露朝へ》)
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2018年をふり返る(1)

2018-12-25 08:38:54 | 日記
きょうは週に一度の「出勤」の日で、近所のリハビリ施設にでかけた。この「リハビリ施設」だが、これからは「リハセン」(リハビリセンターの略)と呼ぶことにしよう。この施設は「◯▲□★地域総合ケアセンター」と称しているからである。

さて、きょうリハセンに行ったら、利用者のお婆さんたちが「どうも今年はお世話になりました」、「どうぞ良いお年を」などと挨拶を交わしている。そういえば、いつの間にか、もうすっかり年の瀬。今年の「出勤日」はきょうが最後なのだ。

私も年末恒例の(といっても、去年始めたばかりだけど)「今年をふり返る」の記事を書くとしよう。これはけっこう煩雑な事務的作業を強いられるが、いったん作ってしまえば、健忘症気味の私には身近な備忘録として、とても重宝するのである。

まずは手始めに1月から。


【1月】
★北朝鮮の金正恩委員長が「新年の辞」で、平昌五輪への参加を示唆し、南北関係の改善に意欲を示すとともに、大陸間弾道ミサイル(ICBM)の実戦配備を宣言し、アメリカ全域を攻撃できる「核のボタン」が自分の机の上にあると言明。
(関連記事:1/7《北の態度軟化の不気味》、
      1/11《北朝鮮の態度変更 その報道に見える北の思わく》)

★沖縄米軍ヘリの不時着事故。
(関連記事:1/10《沖縄の基地をどうする》)

★成人の日に「ハレノヒ」の詐欺騒動。
(関連記事:1/12《成人式の裏側で》)

★西部邁氏自死。
(関連記事:1/23《西部邁の死を悼む》)

★北朝鮮の平昌五輪参加をめぐる関係諸国の思わく。そのあれこれ。
(関連記事:1/17《平昌五輪 南北協議のゆくえ》、
      1/20《五輪をめぐる北朝鮮とアメリカ》、
      1/24《北朝鮮 五輪参加の裏で》、
      1/25《五輪開会式 安倍首相はどうする》、
      1/28《平昌五輪と日本の両面作戦》、
      1/30《平昌五輪 北の揺さぶり》、
      1/31《平昌五輪 北の揺さぶりに韓国政府は》)

                          (つづく)
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米軍撤退と宇宙軍

2018-12-23 11:40:26 | 日記
トランプ米大統領は先日、シリアから米軍部隊2000人を全面撤退させると表明したのに続き、アフガニスタンに駐留する米軍部隊も約1万4千人から7千人減らす方針だと表明した。

この報道に接して、「トランプの自己中引きこもり路線も、ここに極まれりか・・・」、「アメリカは経費削減のため、自国を優先して、世界の警察官であることをやめたのだな」といった思いが浮かんだが、「いや、待てよ。これは案外、合理的な判断に基づく、適切な戦術転換なのかも知れないぞ」と私は思い直した。そして、「この合理的な判断によって、トランプは米軍をいっそ沖縄からも撤退させればいいのに」と考えた。

なぜ合理的な判断なのか。というのも、このところアメリカは、地上戦から、来るべき「宇宙戦」へとシフトする傾向を強めているからである。核を振りかざす北朝鮮といい、北朝鮮に対する経済制裁といい、アメリカも(本来、世界の警察官たるべき)国連も、中露の横槍によって空振りを強いられ、充分に「世界の警察官」としての機能を果たせなくなっている。ならば、「宇宙軍」を創設して、来るべき宇宙戦の機先を制し、中露を抑え込むのが先決だ。そう考えるのは自然な成り行きだろう。トランプ大統領は、米軍を世界各国から撤退させることにより、宇宙戦に備えるための予算をひねり出す腹なのだ。

近い将来、起こると予想される宇宙戦の、その主戦場はサイバー空間になる。アメリカは最近、中国を相手に何かとバトルを繰り広げ、中国政府傘下のIT企業・ファーウェイをやり玉にあげるが、それもこれもサイバー空間で覇権を握るためであり、延いては来るべき宇宙戦に勝利するためであるとすれば、世界各地からの米軍の撤退と、ファーウェイ製品締め出しの動きは、決して無関係ではない。ーーそう思う天邪鬼爺であるが、いかがだろうか。
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クジラに目くじら

2018-12-22 12:54:17 | 日記
日本政府が国際捕鯨委員会(IWC)から脱退する意向だという。反捕鯨国が過半数を占めるIWCでは、商業捕鯨の再開は難しいと判断したからだろう。

このニュースを聞いて、私の中に疑問とも怒りともつかぬ二つの感情が沸き起こった。
一つは、なぜ日本政府は国際社会を敵に回してまで、商業捕鯨にこだわるのか、という違和感である。

個人的なことで恐縮だが、私は中学生の頃、学校給食で鯨肉の竜田揚げを食べた記憶がある。その頃はまだ食糧難の時代で、育ち盛りの児童のタンパク源として、鯨肉は貴重だった。だが、今は違う。今は飽食の時代で、巷にはいろいろご馳走があふれ、鯨肉がスーパーの店頭から姿を消して久しい。

自民党の二階俊博幹事長が、商業捕鯨を認めない反捕鯨国の姿勢に関して、「他国の食文化に文句を言う国があるか。日本がそんなことを他国にしたことがあるか」と言い放ったという。二階氏は、捕鯨の伝統を持つ和歌山県の、衆院小選挙区選出の議員である。彼の地盤には、昔から鯨肉を食べる「食文化」があるのだろうが、この「文化」は限られた局地的なものでしかない。たかだか二、三県にしか見られない限定的な「文化」を表看板として掲げ、国際社会を敵に回すのは、「どうなのだろうなあ。ちょっと場違いじゃないのかなあ」と思うのである。

けれどもその反面、私はこういう思いも禁じ得ない。反捕鯨国はなぜそこまで「日本たたき」にこだわるのか。商業捕鯨は許されない、と言うが、では「許されない」と考える、その根拠は一体何なのか。クジラは哺乳類だから、保存のために管理する義務がある、と言うのなら、同じ哺乳類である牛や豚はどうなのか。商業捕鯨は「許されない」と主張する反捕鯨国は、商業目的で牛や豚を殺し、その肉を食することを「許されない」ことだと主張するのだろうか。

クジラは絶滅の恐れが強いから、保護されなければならないのだ、とする意見もあるようだが、それを言うのなら、クジラを絶滅の危機に立たせたのは、一体どこの国なのか。その昔、アメリカやオーストラリアやノルウェーが鯨油をめあてに乱獲を行ったからではないのか。ーーそれに、日本の調査結果によれば、クジラの頭数は徐々にだが回復傾向にあるという。捕獲枠の範囲内でなら、商業捕鯨を行っても、なんら問題はないのではないか。

ムスリムには「ハラール/ハラーム」なる食の規範があり、豚肉を食べることが禁じられているという。ムスリムが(信仰に根ざす)この規範にこだわるのは勝手だが、(イスラム教を信じていない)日本人やアメリカ人に向かって「豚肉を食することは許されない!」と息巻くムスリムがいたら、我々はこのムスリムに対して、「余計なお世話だ、アタマは大丈夫か!」と、腹立たしさを禁じ得ないだろう。私が(日本たたきに余念がない)反捕鯨国に対して懐くのも、これに似た感情である。
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