ささやんの週刊X曜日

世にはばかる名言をまな板にのせて、迷言を吐くエッセイ風のブログです。

クジラに目くじら

2018-12-22 12:54:17 | 日記
日本政府が国際捕鯨委員会(IWC)から脱退する意向だという。反捕鯨国が過半数を占めるIWCでは、商業捕鯨の再開は難しいと判断したからだろう。

このニュースを聞いて、私の中に疑問とも怒りともつかぬ二つの感情が沸き起こった。
一つは、なぜ日本政府は国際社会を敵に回してまで、商業捕鯨にこだわるのか、という違和感である。

個人的なことで恐縮だが、私は中学生の頃、学校給食で鯨肉の竜田揚げを食べた記憶がある。その頃はまだ食糧難の時代で、育ち盛りの児童のタンパク源として、鯨肉は貴重だった。だが、今は違う。今は飽食の時代で、巷にはいろいろご馳走があふれ、鯨肉がスーパーの店頭から姿を消して久しい。

自民党の二階俊博幹事長が、商業捕鯨を認めない反捕鯨国の姿勢に関して、「他国の食文化に文句を言う国があるか。日本がそんなことを他国にしたことがあるか」と言い放ったという。二階氏は、捕鯨の伝統を持つ和歌山県の、衆院小選挙区選出の議員である。彼の地盤には、昔から鯨肉を食べる「食文化」があるのだろうが、この「文化」は限られた局地的なものでしかない。たかだか二、三県にしか見られない限定的な「文化」を表看板として掲げ、国際社会を敵に回すのは、「どうなのだろうなあ。ちょっと場違いじゃないのかなあ」と思うのである。

けれどもその反面、私はこういう思いも禁じ得ない。反捕鯨国はなぜそこまで「日本たたき」にこだわるのか。商業捕鯨は許されない、と言うが、では「許されない」と考える、その根拠は一体何なのか。クジラは哺乳類だから、保存のために管理する義務がある、と言うのなら、同じ哺乳類である牛や豚はどうなのか。商業捕鯨は「許されない」と主張する反捕鯨国は、商業目的で牛や豚を殺し、その肉を食することを「許されない」ことだと主張するのだろうか。

クジラは絶滅の恐れが強いから、保護されなければならないのだ、とする意見もあるようだが、それを言うのなら、クジラを絶滅の危機に立たせたのは、一体どこの国なのか。その昔、アメリカやオーストラリアやノルウェーが鯨油をめあてに乱獲を行ったからではないのか。ーーそれに、日本の調査結果によれば、クジラの頭数は徐々にだが回復傾向にあるという。捕獲枠の範囲内でなら、商業捕鯨を行っても、なんら問題はないのではないか。

ムスリムには「ハラール/ハラーム」なる食の規範があり、豚肉を食べることが禁じられているという。ムスリムが(信仰に根ざす)この規範にこだわるのは勝手だが、(イスラム教を信じていない)日本人やアメリカ人に向かって「豚肉を食することは許されない!」と息巻くムスリムがいたら、我々はこのムスリムに対して、「余計なお世話だ、アタマは大丈夫か!」と、腹立たしさを禁じ得ないだろう。私が(日本たたきに余念がない)反捕鯨国に対して懐くのも、これに似た感情である。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 若者たち 続篇 | トップ | 米軍撤退と宇宙軍 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

日記」カテゴリの最新記事