ささやんの週刊X曜日

世にはばかる名言をまな板にのせて、迷言を吐くエッセイ風のブログです。

無い物ねだりの戦略で

2020-11-29 11:44:35 | 日記
無い物ねだり。人は失われたものをこそ希求する。老子が言う通りだ。

大道廢、有仁義。智惠出、有大僞。六親不和、有孝慈。國家昬亂、有忠臣。
(書き下し文:「大道廃(すた)れて、仁義有り。智恵出でて、大偽(たいぎ)有り。六親(りくしん)和せずして、孝慈(こうじ)有り。国家昏乱(こんらん)して、忠臣有り。」
現代語訳:「人間本来の自然な生き方である「道」が失われてしまったからこそ、人々が仁義などと言い出すのだ。小賢しい知恵を振りかざす者がいるからこそ、人々は偽り合う様になったのだ。家族が仲良く暮らしていないからこそ、孝行とか慈愛とかが重んじられるのだ。国がひどく乱れて安定しないからこそ、忠義の臣などがもてはやされるのだ。」)

アベ前首相は現職のとき、さんざん嘘をつきまくった。モリカケ問題然り、「桜」問題然り。アベ首相は見え透いた嘘をついている。国民のだれもがそう信じていた。そう信じる国民は、モラル・ハザードを嘆き、激しくモラルの回復を求めている、ーー安倍内閣の大番頭として、アベ首相の虚言の尻拭いをしてきたスガ(前)官房長官は、そのことを身をもって感じていたはずだ。

東京地検が最近、「桜」問題をめぐるアベ前首相の嘘を暴きはじめた。その背景には、体調が回復し、復権の動きを見せて首相の座を脅かしはじめたアベ前首相の、その復権の芽を事前に摘もうとするスガ首相の思惑が働いているのではないか。これはあながち根拠のない推測ではない。

かつては上司、今やライバル。いつまでも目の上のたんこぶのようなこの厄介な存在の、その復権の芽を早急に摘むべし!かつての大番頭スガ氏がそう考えたとしたら、彼は(モラルの回復を希求する)国民の願望を味方につけ、アベ首前相の虚言を明るみに出すのが効果的だと踏んだに違いない。

ただ、このたたき上げの苦労人は、一つ大事なことを忘れている。嘘をついた当人はもとより、嘘の隠蔽に加担した大番頭その人も、モラル・ハザードの元凶として非難を免れないことである。スガ首相はあるいは「刺し違えて死んでもかまわない」と思っているのかもしれない。そう思うほど、それほど彼はアベ前首相を憎んでいるのだろうか。

国家昏乱(こんらん)して、忠臣有り。

「忠臣」が求められないのは、国家が混乱していない証である。新型コロナが猛威をふるいはじめた昨今、「日本は安泰だ」などと言っていられるのは、今の内かも知れない。
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