ささやんの天邪鬼 座右の迷言

世にはばかる名言をまな板にのせて、迷言を吐くエッセイ風のブログです。

北方領土交渉 その軍事的側面

2019-01-23 15:03:41 | 日記
国家は国民の苦しみや悲しみなどにお構いなく、それ独自の論理に従って動く。今の日本が沖縄の住民の、その苦しみや悲しみを全く顧みず、一途に米軍基地建設に邁進する現実が、そのいい例である。

北方領土交渉を動かしているのも、国家の論理であり、島民や元島民の苦しみや悲しみ、その苦い記憶は、当然のように二の次になる。国家の論理の、その根底にあるのは各国の〈力への意志〉であるが、その動力源になるのは軍事的な思惑であるから、交渉は一筋縄では行かず、紛糾を重ねることになる。

言い換えれば、軍事的な思惑が北方領土交渉の成り行きを左右することになる。ロシアが交渉に当たって「引き渡し後の2島に米軍基地を造らない」という確約を日本側に求めたのは、当然といえば当然だろう。ロシア側が警戒しているのは、米軍が引き渡し後の2島に軍事基地を建設し、イージスアショアを配備することなのだ。イージスアショアが2島に配備されれば、ミサイルを搭載したロシアの潜水艦はレーダーで補足され、米軍のミサイル防衛システムのターゲットにならざるを得ない。

そのような軍事的理由から、ロシア側は折にふれ、引き渡し後の2島に米軍基地を造らないよう確約せよ、と強硬に要求してくるだろうが、これに対して、もし安倍首相が「はい、わかりました。確約します」と応答したら、今度はアメリカ側が猛然と怒りの抗議を仕掛けてくるに違いない。米軍からすれば2島、とりわけ択捉島は、北朝鮮のICBMを迎撃するために欠かせない、格好の要衝なのだ。

あちらを立てればこちらが立たず。板挟みの安倍首相はさてどういう決断を下すのだろうか。以上の記事を書くために、私はサイト「JBPRESS」に掲載された記事《誰も指摘しない北方領土の軍事的価値ーー軍事カードが大きくものを言う領土交渉の現実》(1月23日配信)を参照した。

この記事の筆者は、数多久遠氏。この人は「小説家、軍事評論家、元幹部自衛官」の肩書を持つ人物である。彼は上のような軍事的見解を示した上で、「筆者は北方領土交渉の行方を決して悲観しておらず、妥結の可能性があると考えています」と書くが、この「妥結の可能性」については全くふれていない。数多氏はどうしてそれについて書いてくれないのだろうか。まあ、結果は間もなく出るのだろうけれどね。
コメント
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