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ささやんの天邪鬼 ほぼ隔日刊

世にはばかる名言をまな板にのせて、迷言を吐くエッセイ風のブログです。

内向するアメリカ

2025-06-06 09:15:32 | 日記
アメリカは世界の警察官ではない。」

こう語ったのは、オバマ米大統領である。2013年のことだ。

このことが私の頭をよぎったのは、次のニュースを目にしたからである。

トランプ米政権が5月上旬、日本政府に対し、在日米軍駐留経費をめぐる日本側負担を増額するように打診していたことがわかった。これを受け、日本政府は米軍住宅など『提供施設整備費』(FIP)について数百億円規模を上積みする方向で検討に入った。
(朝日新聞5月29日)

この記事を読んで、私は先のオバマ元大統領の発言を思いだし、
「ああ、アメリカもとうとうここまで来たか・・・」
と思ったのである。
言うまでもない。アメリカは「世界の警察官」であることを止めたばかりか、とうとう SECOM や ALSOK 並みの民間警備サービス会社に、ーー有償セキュリティー・サービス会社に、成り下がったのだなぁ・・・。そういういう感慨が私をとらえたのである。

むろんトランプ米大統領の意図はわからないではない。彼は米政府の歳出を極力、抑えたいのだ。それほど米国の財政は逼迫しているということである。

アメリカが「世界の警察官」であることを止め、民間並みのセキュリティー・サービス機関へと成り果てたこと、それは、この国が「覇権国」としての自らの地位をかなぐり捨てたことを意味している。
この体たらくをもたらしたのは、この国の財政事情だけではない。

歴史を振り返れば、ベトナム戦争に介入したアメリカが北ベトナム軍(ベトコン)に敗け、ベトナムから撤退を余儀なくされたのが、1973年。
また、2001年にはアフガニスタンに侵攻してタリバンの軍勢に攻撃を仕掛けたものの、しだいに劣勢に立ち、2021年にはついにアフガニスタンから完全撤退を余儀なくされた。
こうした数々の不名誉なバトルの記憶も、アメリカが「世界の警察官」であることを止めざるを得なくなった理由に数えられるだろう。

ともあれ、こうした成り行きの果てにトランプの「アメリカ・ファースト(自国第一主義)」があるとすれば、このあからさまな自閉症の傾向は「自分のことを考えるので手一杯なのだ。他人のことなど構っていられないのだ」という「なりふり構わず」の(追いつめられた)状態の表現にほかならない。

今後、この「腐ってもタイ国」の唯我独尊、夜郎自大の老リーダー・トランプは、なりふり構わず、我が国にどういう要求を突きつけてくるのだろうか。
やれやれ・・・

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2人の原爆少女

2025-06-04 10:24:22 | 日記
NHKの番組「映像の世紀バタフライエフェクト ヒロシマ世界を動かした2人の少女」を見た。
リアルタイムではなく、ベッドの上でスマホを取りだし、「NHKプラス」を開いた。明け方、午前3時頃のことである。

スマホに映し出されたのは、衝撃的な映像の数々だった。これを見て、(ずっと眠れずにいた)私の心は激しく揺さぶられた。

動揺とともに、記憶がよみがえった。私は(半世紀以上も前の)大学生だった頃、ヒロシマの原爆資料館を見学したことがある。ヒッチハイクの途中だったが、展示のおぞましさ・残酷さに圧倒され、吐き気を禁じ得なかった。それほどの衝撃だった。あの衝撃は今でも忘れない。

けさがたスマホで見た原爆の映像は、それと同じぐらいの衝撃を、年老いた私に与えたのである。

番組のナレーションによれば、原爆投下後しばらくの間、(米軍を主体とする)進駐軍は言論統制をしき、原爆の「真実」を伝える報道を禁じたという。戦後80年たった今、封印され、忘れ去られようとしている歴史のその「真実」をあえて明るみに出そうとしたNHK制作班の英断に、拍手を送りたい。
かつては戦火を交えた敵国とはいえ、今や「同盟国」となったアメリカである。この国の名をはっきり名指しするのにも、それなりの覚悟がいったことだろう。

映像が伝えるその「真実」はどんなだったか。それを言葉で忠実に再現する能力を私は持たない。残念なことだが、番組の後半に紹介された少年の言葉が心に残っている。原爆のために夭逝した少女・サダコに向けて、少年は追悼文集の中でこう語りかけるのだ。

君を殺したのは誰だ。憎い憎い原爆だ。君を慰める唯一の道は、原爆をこの地上からなくすことだ。

「君を殺したのは誰だ。憎い憎い米軍だ。トルーマンだ!」と書けなかった、いたいけな少年の姿が痛ましい。

ともあれ、久々に良い番組を見た。
NHKの「朝ドラ」あんぱんでは、しきりに厭戦思想が語られているが、やはり(創り物ではない)実録の映像は迫力が違う。

鮮烈なその感動を記念して、あえて駄文を草する次第である。


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革命の使徒トランプ その政策の意味を問う(その2)

2025-06-02 09:45:19 | 日記
(承前)
ハーバード大学への助成金を打ち切り、それを国内の職業訓練学校に振り向ける。ーーこの措置によって、トランプは一体、何をどうしようと考えているのか。
これだけを見れば、彼の意図はまったく理解不能で、支離滅裂としか言いようがない。そこで、次のような記事が出ることになる。

ドナルド・トランプ米大統領は24日、同国の名門ハーバード大学を『反ユダヤ主義の極左機関』だと非難した。同大はトランプ政権による助成金凍結の差し止めを求め、連邦地裁に提訴している。
(AFP=時事4月25日配信)

この記事は、ハーバード大学への助成金を打ち切ったトランプ大統領の措置を、「反ユダヤ主義の排斥」という意図から出たものと見なす、憶測の観点から書かれている。
つまり、

「イスラエルを支援するトランプは、米国内の大学にはびこる『反ユダヤ主義者』を一掃しようとしている。そのために、『反ユダヤ主義』の学生を野放しにするハーバード大学にプレッシャーをかけているのだ」

というわけである。

たしかに、親イスラエルのトランプは、「反ユダヤ主義者」を排除したがっているのかもしれない。しかし「反ユダヤ主義者を排除するため」という理由は、ハーバード大学への助成金を打ち切るためのイチャモンというか、いわば口実であって、それ以上のものではない。
彼がこの措置を実行しようとするホントの理由は、「革命」の目的を達成しようとする底意から出ていると考えるのが妥当だろう。

どういうことか。
ハーバード大学は、言うまでもなくホワイトカラーのエリート層を養成する機関である。これに対して職業訓練学校は、ブルーカラーの優秀な労働者を養成する機関である。
だからこの措置は、ホワイトカラー階級からパイをぶんどり、それをブルーカラー階級の振興のために振り向ける、という「革命」の目標に、充分合致しているのだ。

話はそれるが、上で引用した朝日新聞の記事は、トランプを、ロシアのプーチンに匹敵するアブナイ「拡張主義者」として特徴づけていた。この捉え方は完全に的を外している。

西側自由主義圏の盟主・アメリカのリーダーが「革命」の使徒として「ブルーカラー労働者の復権」を目指し、東側共産主義圏の盟主・ソ連の末裔であるロシアの、そのリーダーが「帝国の復権」をめざす。
ここには何やら皮肉な事態が生じていると言わなければならない。


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革命の使徒トランプ その政策の意味を問う(その1)

2025-05-31 14:02:49 | 日記
かつて私が次のように書いたことを、読者は覚えておいでだろうか。

「トランプの2回目の当選は、階級闘争がもたらした『革命』の成果だった。
革命の主体、それは(職を失って路頭に迷った)ブルーカラーの労働者たちである。」
(5月27日《トランプの復権と革命 その意味を問う(その2)》

ここからの帰結として、当然のことだが、トランプが米大統領に返り咲いた直後に打ち出した数々の政策は、「革命」の目的を達成するための手段として捉えるとき、はじめて理解可能になる。
逆にいうと、トランプが打ち出した政策のこうした意味を見失うと、トランプが米大統領として何をしようとしているのかを見誤ることになる。
トランプは「革命」の目的の忠実な遂行者なのだが、このことが見失われるとき、彼はもっぱら「MAGA(メイク・アメリカ・グレイト・アゲイン)」なるスローガンのひたむきな実行者と見なされることになり、ロシアのプーチンに匹敵するアブナイ「拡張主義者」のレッテルを貼られることになる。

朝日新聞に次のような記事がのっていた。

『米国の黄金時代が今始まる』
そんな言葉で始まった1月20日の就任演説で、トランプ大統領は、こうも言い切っていた。
『アメリカ合衆国は再び自らを成長する国と見なす。富を増やし、領土を広げ、新しく美しい地平線に旗を掲げる国だ』
『米国第一主義』を原則とするトランプ氏だが、第2次政権ではデンマーク自治領グリーンランドやパナマ運河の領有を掲げ、隣国カナダを『51番目の州』にすると主張し、拡張主義的な言動が際立つ。

(朝日新聞5月18日)

腐ってもタイ(?)国である。トランプが「革命」の目的を達成するために打ちだした政策、たとえば関税政策は、その波及効果の大きさから、日本をはじめとするほとんどの国の屋台骨をぐらつかせた。その意味では、トランプはたしかに世界各国を脅かす「アブナイ暴走老人」と言えなくもない。

しかし、である。こんなふうにトランプをがむしゃらな「拡張主義者」と見なすことで、彼の政策はある程度理解可能になるとしても、次のようなニュースを、我々はどう理解すればよいのだろうか。

トランプ米大統領は26日、自身のソーシャルメディアへの投稿で、ハーバード大学への助成金30億ドルを打ち切り、国内の職業訓練学校に振り向けることを検討していると表明した。
(ロイター5月26日配信)

ハーバード大学への助成金を打ち切り、それを国内の職業訓練学校に振り向ける。ーーこの措置によって、トランプは一体、何をどうしようと考えているのか。
(つづく)

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ブタと私の40億年の旅

2025-05-29 08:51:05 | 日記
昨夜、眠くならないので、ベッドの上でスマホを取りだし、「NHKプラス」を開いて次の番組を見た。

NHKスペシャル 人体Ⅲ 第3集 命のつながり 細胞40億年の旅

番組の冒頭に、炎のともるロウソクが出てきた。ゆらゆらと白くゆらめく炎は、「命の炎」だという。炎のゆらめきとともに、少しずつ短くなっていくロウソクは、さしずめ生き物の身体(からだ)といったところか。
ロウソクが無くなるときが、命の尽きるときなのだろう。

生き物の生命(いのち)と身体(からだ)の関係をロウソクに喩えるこのイメージに、私は「うん、たしかに、そうだよなぁ」と納得した。

ところが、番組を見ているうちに、私のこの生半可な理解はぐらつき始めた。番組の説明によれば、我々の身体(からだ)は40兆個の細胞からできていて、この細胞のそれぞれは、40億年前にたった1つだった原始細胞(LUCA)が分裂を重ねた末に今に至った結果だという。

この分裂の過程で、ある系統は人体になり、ある系統はブタの身体になり、はたまたイルカの身体やチューリップの茎や花弁になったりしたのだという。
つまり、ブタやイルカのような動物も、あるいは松やチューリップといった植物も、生き物はみな我々人間と「細胞兄弟」の関係にあるというのである。

番組では、その証拠として、腎臓移植が必要になった(人間の)女性に、(他の人間の腎臓ではなく)ブタの腎臓を移植する手術(異種移植手術)が行われ、成功している実際のケースが取り上げられていた。ブタの腎臓は、サイズが人間の腎臓と同じくらいなのだという。

これは私の想像をはるかに越えていた。この私のこの身体が、ブタやイルカや松やチューリップの身体と「同じ穴のムジナ」だ、なんて!
ブタやイルカや松やチューリップの身体が、また、それらの細胞が、我々人間のそれと「兄弟」の関係にあるとすれば、それらが燃やす「命の炎」も我々のそれと基本的に変わらないことになる。

ベッドの上でウトウトしながら、私は考えた。
快や苦痛の感覚は「生命の炎」が感じるのだろうか、それとも、我々の身体が感じるのだろうか?身体を成り立たせている40兆個の細胞一つひとつが感じるのだろうか?

私自身のことをいえば、70歳の坂にさしかかった頃から、毎朝ベッドから起き上がるのに、しんどさを感じるようになった。この辛さ・しんどさの感覚は、若い頃にはなかったものだ。
快や苦痛を感じるのが身体であり、それを成り立たせている個々の細胞だとすれば、若かった頃の私の身体や細胞の、その感じ方は70歳を過ぎた私の身体や細胞のそれとは明らかに異なっている。

この感じ方の違いは、私の感じ方と、ブタやチューリップの感じ方との違いと、同質のものなのだろうか、それとも、まるきり別のものなのだろうか・・・。ブタなら辛さ・しんどさは感じるかもしれないが、梅やチューリップはしんどさを感じるのだろうか・・・?

そんなことを考えながら、いつしか私は寝入っていた。自分がブタになる夢を見た。


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