巨大ショッピングサイトの物流センターから発送された荷物が爆発する事件が起こる。爆発物は梱包された荷物の中に、いつどこでどうやって紛れ込んだのか。ブラックフライデーというショッピング業界における稼ぎ時を狙った事件。目的も分からず、爆発物がどれだけあるのかも分からない。ただ、配送を止めて原因究明を行う選択肢はないのだ。品物を発送しなければ売り上げは立たず、荷物を配達しなければ運送会社も配達を請け負っている委託業者も売り上げを立てる事が出来ないのだ。ショッピングサイトの物流の流れには、川上から川下まで多くの企業と多くの人が複雑に絡み合う。
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映画は物流倉庫を舞台にし、それに「アンナチュラル」と「MIU404]のエッセンスを注入した「犯人は一体だれなのか?」というエンタメ映画なのだが、私は物流業界の流れとパワーバランスがとにかく気になってしまって仕方なかった。
効率と言う名の元の過酷な「やりがい搾取」と、疲弊した人を「能力不足」と切り捨てるパワーバランスの冷たさ。
トラック事業者はドライバーの確保が出来ず輸送が出来ない可能性、荷主は配送業者から輸送を断られる可能性、消費者は当日や翌日のスムーズな配達サービスが受けられない可能性・・・
トラックドライバーの時間外労働の960時間上限規制などが適用され、労働時間が短くなることで輸送能力が不足する事が問題となっている物流の2024年問題の事が気になってしまい、火野正平と宇野祥平が演じる委託の配送業者や、大手ショッピングサイトから配送業務を請け負っている羊急便の局長阿部サダヲにもっとスポットが当たって欲しいと思いながら鑑賞。
勿論、巨大ショッピングサイトの物流センターという大きな怪物の存在も忘れたわけではない。マネージャー役を演じる岡田将生の佇まいからその効率主義のあれこれを色々考える。