Trapped in me.

韓国漫画「Cheese in the trap」の解釈ブログです。
*ネタバレ含みます&二次使用と転載禁止*

心ここにあらず

2014-04-11 01:00:00 | 雪3年3部(秋夜の二人~意識する雪まで)
夜も更けたこの時刻に、一人笑いながら歩いている女が居た。

「ハハハハ‥ハハハハ‥」



そう、赤山雪だ。雪は一人、笑っていた。

「ハハハハ‥ハハハハ‥」



彼女は帰路の間中、笑い続けた。

地下鉄も、階段も、彼女の家の近くの道でさえ。

  

胸の中がこそばゆく疼いて、とても頭や理論では整理出来なかった。

高揚する感情にまかせながら雪は、ずっと一人で笑い続けていた。



二杯飲んだ焼酎の仕業では、勿論無いだろう。

それ以上に刺激的な体験が、雪を少しおかしくさせる‥。





ふぅ、と亮は秋の空気の中に煙を吐き出していた。

ここは店の横の細い路地。亮は煙草を吸いきると、地面に捨てたその火を足で揉み消した。

「とにかく静香には言葉が通じねぇ‥」



その独り言からすると、一緒に暮らし始めた姉に亮は手を焼いているようだった。

この数日くさくさしている亮を見て、今日は蓮が煙草をくれたのだ。肺の中を煙が燻る。



燻っているのは煙だけではない。

亮は今の自分の状況を思い、俯きながら小さく舌打ちした。



ふと顔を上げると、大通りを歩いて行く彼女の姿が見えた。

亮の脳裏に、先日期せずして思い出した思惑が蘇る。

‥そうだ‥お陰で思い出したぜ。忘れていたことを‥



雪に近付いた本来の目的を、亮は先日思い出したところだったのだ。

亮は急いで路地を出ると、歩いて行く雪の背中に声を掛けた。

「おい!ダメージヘアー!」



わりと大きな声で呼んだのだが、彼女は振り返らなかった。

亮は不思議に思い彼女に近付くと、軽くその髪の毛を引っ張った。

「おいってば!」 「うわっ!」



そして雪は、突然の出来事に心底驚いた。口にする言葉も切れ切れだ。

「んなっ‥なっ‥なっ‥!」「んだよ?」



顔を青くして驚く雪。

亮はそんな彼女に近づくと、あることに気がついた。

「お前なんか酒臭ぇなぁ?焼酎と焼肉のニオイがプンプンするぜ」



そう言って身体を近づける亮と、少したじろぐ雪。

二人はそのまま並んで歩き出す。

「最近は日が落ちんのも早ぇし、早く帰ってこいよ。親心配してたぞ」 「ん‥」



亮はそう雪に声を掛けるが、彼女は心ここにあらずといった体で、どこか上の空だ。

ポケッと空を見つめて、ぼんやりと歩いている。



亮はそんな彼女の後ろを歩きながら、どこかいつもと違うと感じていた。

「あー‥今日は店寄らねぇのか?」



亮が投げた問いかけにも、

「はい‥」



と小さく返事をするだけだ。

「あ‥そう?」



亮はそう言って頭を掻くが、依然として雪は亮の方を振り返りすらしない。

亮は少しきまり悪い気分で彼女を見つめた。



それならこれならどうだと、亮は話題を変えることにした。

「あのよぉ‥ピ‥ピアノのことなんだけどよ」



しかしいざ口に出してみると、思うように喋れない。

亮は軽い調子を装って言葉を続ける。

「お前の叔父さん、アレもう処分しちゃったか?カフェの片付けもそろそろ終わりだしよ‥」



亮はピアノに執着する理由を言い訳しながら言葉を続けた。

白々しく頭を掻いて笑う顔が、なんともぎこちない。

「いや~その、あれだ!一度言った言葉を取り消すのは男として‥なぁ?」



けれどやはり雪は何も反応しない。

ぼんやりとして上の空のままだ。



亮は頭を掻きながら言葉を続ける。

「‥だからその‥」



そして次の言葉を口に出した途端、雪は弾かれるように振り返った。

「淳に言われたからじゃなくて‥」「えっ?!」



これまでどんなに話しかけても耳から抜けていっていた雪なのに、

彼女は淳の名前を聞いた途端反応した。



亮はそんな彼女の反応に目を剥いたが、なぜ雪がそんな反応をしたのかに、詳しく気づいてはいなかった。

雪は驚いた顔をした亮を見て、少し我に返った。

「いや‥え?何‥?」 「いや‥だからピアノを‥」



再びピアノを口にする亮だが、なんだかそれ以上言葉を続ける気がなくなった。

そしてドギマギしている雪を眺める内、彼女の髪に何かついているのに気がついた。

「おいお前何かついてっぞ? 顔に‥」



そう言って亮は雪に向かって手を伸ばした。

「いや頭か‥」 「えっ?!口に?!」



雪は意識するあまり、口を押さえて飛び上がった。

亮は目を丸くして手を止め、雪は「しまった」という表情で口を噤む。



二人の間の空気は微妙な雰囲気になっていく。

とりあえず亮は雪の髪についていたゴミを取ってやったが、気まずい空気はそのままだ。



雪は変に意識した自分が恥ずかしく赤面した。

「ハハ‥ハ‥あり‥ありが‥」



数々の挙動不審な行動を繰り返す彼女に、今や顔を顰める亮‥。

しかも加えて、次の瞬間雪はしゃっくりをし始めたのだ。

ひいっく!



ひっくひっくと、雪のしゃっくりは止まらなかった。

口を押さえて顔を背ける彼女を前にして、亮はドン引きだ‥。



亮は息を一つ吐くと、彼女から背を向けて後ろ手に手を上げた。

「あーもーいーや。行け行け」



雪はどこかきまり悪い気持ちで、背を向けた亮に声を掛けた。

「あ‥ハイ‥それじゃあ‥」



そう言って雪は小走りで駆けて行った。

彼女が走り去ってから、亮はどこか不審だった雪の影に視線を送る。



いつも何か企みを持って彼女に近づくと、上手くいかない。

亮はどこか煮え切らない気持ちのまま、店に戻って行った‥。


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<心ここにあらず>でした。

雪ちゃん挙動不審‥(@@:)

そして初の喫煙亮さんですね~。気怠いですね‥。



次回<意識>です。

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