Trapped in me.

韓国漫画「Cheese in the trap」の解釈ブログです。
*ネタバレ含みます&二次使用と転載禁止*

秋夜のキス

2014-04-10 01:00:00 | 雪3年3部(秋夜の二人~意識する雪まで)
「雪ちゃん」



暫し雪の肩に頭をもたげていた淳であったが、不意に彼女の名を呼び顔を上げた。

淳の心は弾んでいたのだ。今彼女が自分の隣に居ること、静かな場所で自分の理解者と共に居ることに。

「あ、はい‥」




そして雪は彼の方を向いた。

何か話があるのかと思って。





チュッ、と淳の唇が雪のそれに軽く触れた。





何が起こったのか分からない雪と、嬉しくてニコニコ笑う淳と。





何、と言いかけた彼女に、再びキスをする彼。

二回目のキスは、一回目のそれより深く触れた。



えっ?



見開いたままの瞳の先に、超至近距離で彼の顔があった。

今さっき何をされたのか、そして今何をされているのか。

雪はようやくそれに思い至る。


「@#%$?!せせせ先輩ーーー?!?!」



雪は大赤面し、思わず唇を両手で押さえた。

そんな動揺しまくりの雪に対して、淳は一つも取り乱さず彼女のことを見つめている。

「い、い、い、い、いきなりなにっ‥!」



雪の心臓は早鐘を打ち、全身に変な汗が噴き出していた。

しかし淳は尚も雪に近づくと、優しく彼女の頬に触れる。

「どうして? 誰も見てないじゃない」



淳は囁くようにそう口にした。

先ほど皆にキスを強要された時に、彼女が何度も口にしていたその言葉‥。

だから何でみんなの前で‥!



ということは、皆が見ていないところならば良いことになる。

そんな根拠を味方につけて。






未だ目を見開いている雪に、ゆっくりと彼の影が覆いかぶさる。

淳は左手で雪の頬を撫ぜながら、もう一度その柔らかな感触を味わう。





秋の夜。

夜の路地。

涼しい風が吹いていた。どこかで秋の虫が鳴く声が聞こえた。

もう、何も見えなかった。

目を閉じていたから。










ネオンが溶けたような都会の夜空はぼんやりと明るい。

その空の下で、今日も人々は行き交いすれ違い、思い思いの場所を目指す。



世界は何も変わらず、今日も地球は回っている。

けれどその世界を見つめる自分の目は、何かのきっかけで変わることがある。



見慣れた道。

石畳の敷かれた細い路地。

聞こえて来るのは遠くの喧騒、秋に鳴く虫の声。

そして、隣で眠る彼の寝息。



規則的な、けれど温かなその吐息を感じながら、

雪はポカンと口を開けていた。

先ほどまで、その唇は彼のそれと触れ合っていた。



雪は膝を抱えた体勢のまま、じっとその場に座っていた。

肩にかかる彼の重さすら、気にならないくらいだった。



ポケッとした表情で、彼女は空を見つめている。

丸い月とネオンの光で、ぼんやりと光ったその夜空を。






そして雪はその夜空に、先ほどのことを思い出してその記憶をなぞってみた。

すると自然に、彼の方に顔を向けた。よく眠っている。



雪はぎこちなく彼に手を伸ばした。

柔らかなその髪に触れると、さらさらと指の間から零れ落ちるようだ。



そして気がついたら再び、唇を押さえていた。

色々な感情が胸の中を騒がせ、変な笑いとなって溢れ出るのだ。

「は‥」



一度口から笑いが溢れると、それは止まらなくなってしまった。

「ははは‥」



はははは‥と、その後も雪はその場で笑い続けた。

静かな寝息を立てる彼の横で、変な高揚が彼女の笑いをいざなう。



紅葉し色付いた葉が、様々な光を受けて淡く煌めく。

秋の夜の澄んだ空気のせいだけじゃなく、雪の目にそれはとても美しく映った。

ぼんやりと光るネオンの空、その遥か上に、眩いばかりの満月が輝く。



世界は変わらず今日も回っている。

けれど彼とのキスが、雪が見る世界を少し変える‥。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<秋の夜のキス>でした。

いや~~雪と淳もここまで来ましたね!!読者としては長かった‥!
(漫画の中では付き合って二ヶ月ですが、読者にとっては一年半ですって^^;)

先輩の嬉しい気持ちが溢れてましたね‥。初キス、おめでとう~~


次回は<心ここにあらず>です。




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