「風土と性格」11月6日
読者投稿欄に、大阪府の大東明弘氏の『教育委員への恫喝許せぬ』という表題の投書が掲載されていました。数日前にも同じ趣旨の投書があり、取り上げることにしました。大東氏は、『女性教育委員に対する威圧的な発言が問題となった大阪府の中原徹教育長は、教育界に籍を置く人間としては失格』とし、中原氏について、『「誰のおかげで教育委員でいられるのか。罷免要求出します」という発言は恫喝』『府教委の課長たちからも「ワーッと言わないでほしい」「部下の話を聞いてほしい」などと13項目もの問題点を指摘された』と具体的に問題発言を紹介しています。
私は、アンチ中原ではありません。中原氏が府立高の校長時代に行った口パク検査についても、以前にこのブログで擁護しています。それでも、中原氏の今回の発言には驚いています。しかし、この問題を正確に理解するためには、ただ中原氏を非難するのではなく、華原氏個人の資質の問題と大阪府庁の風土の問題とに分けて考える必要があります。
まず、課長への対応ですが、中原氏の個人的な資質、自分に対する過大評価、部下を職務運営のパートナーではなく指示通りに動くロボット視している独裁者体質、などが要因として占める部分が大きいように思われます。
一方、教育委員への恫喝については、大阪府庁の風土が大きな影響を及ぼしていると思われます。なぜなら、教育長よりも教育委員の方が「偉い」という事実があるからです。従来の一般的な教育委員会制度下では、教育長も教育委員の一員ではありますが、他の教育委員が、教育委員会のトップである教育委員長になることがある(一般的には委員間の互選制)のに対し、事務局トップという位置づけの教育長は教育委員長には就任できない、一段格下の教育委員なのです。もちろん、実質的権力は教育長が優っているのですが、あくまでも格下なのです。
さらに、教育委員を辞めさせることは、教育長にはできません。教育委員は議会の同意を得て任命されているのですから、教育長ごときが罷免できることはありません。しかし、大阪府の場合、絶対権力者である知事と陰の実力者である橋下大阪市長、2人が牛耳る府議会の維新勢力という政治家集団と密接な関係があるということ、しかもその政治家集団が教育行政への積極介入を是としているという背景が、中原教育長の問題発言を可能にしているのです。
より重視し問題にすべきはどちらなのかといえば、答えは明らかだと思います。よいことではありませんが、トップが部下の話を聞かず独走しようとするというのは、どこの組織にもあることです。私も、ずいぶん難しい上司に仕えたことがあります。
一方、教育長が教育委員を恫喝するなどという「下剋上」は、ほとんど目にしません。異例中の異例なのです。大阪府、維新の会、橋下代表という土壌でのみ起きる出来事なのです。今は、大阪のみですが、今後各地で「教委改革」が進み、ミニ橋下、ミニ維新が教育行政への関与を深めていけば、全国共通の減少となっていくのです。私は、中原氏の個人的資質の問題に矮小化し、中原氏を攻撃して溜飲を下げて終わりにはしてほしくありません。