「今度は別の視点から」9月1日
『公設民営学校容認へ』という見出しの記事が掲載されました。同制度については、以前にも教員確保の視点から問題点を指摘しておきましたが、今回は別の視点から疑問を呈したいと思います。
記事では、『民間のノウハウを活用』という表現が繰り返し使われています。「民間のノウハウ」とは何なのでしょうか。例えば、役所の食堂を民間に委託するというのであれば、「民間のノウハウ」というのはよく分かります。民間に食堂経営を行っている企業はたくさんあるのですから。当然、それなりのノウハウをもっていると考えることは無理がありません。
しかし、現在、民間の学校はないのです。私立学校を運営している学校法人に委ねるのであれば、そこで行われる教育活動は、私立校で行われるものと違いがありません。単に、公設ということで、初期投資が抑えられその分学費が安くなるというメリットがあるだけです。それでは、看板に偽りあり、です。
『民間の人材』についても同じことが言えます。『教えるスタッフは教員免許を持つ者を想定』というのですから、『民間の方が特色ある人材を確保しやすい』という理屈は成り立たないのではないでしょうか。現在、国公立や私立の学校で教職に就いている者を採用するのでは、特色ある人材が集まることにはならないでしょうし、教員免許を持ちながら教職についていない者を想定しているのであれば、実際のところ対象となるのは、新卒者、失業者、現在の仕事に不満を持っている者などになります。民間企業で「特色」といえるほどの知識や経験、技能をもって活躍している者が、わざわざ教員になることは考えにくいと言わざるを得ないからです。
私の甥は、33歳で年収1000万円以上、様々な資格を持ち英語も自在です。彼が、年収500万円で教員のオファーを受けるとは考えられません。それとも、公設民営校の教員は年収1000万円以上を保証するのでしょうか。そうでないとすれば、汚い言葉で恐縮ですが、公設民営校に集まるのは、企業人失格者ばかりということになりかねません。
民間のノウハウや民間の人材という抽象的な言葉で語られ、具体的なシミュレーションを欠いた構想には注意が必要です。
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