ヒマローグ

毎日の新聞記事からわが国の教育にまつわる思いを綴る。

知って、想像して、対策する

2024-03-02 08:31:02 | 我が国の教育行政と学校の抱える問題

「手遅れ」2月25日
 読者投稿欄に、和歌山県公務員F氏の『ゴミ分別 見学で反省』と題された投稿が掲載されていました。その中でF氏は、『小学生の頃、社会科見学で資源ゴミのリサイクル工場に行った』ときのことを書かれています。
 『鼻が曲がりそうな異臭がした。つい顔をゆがめてしまう。スタッフは無心に作業にあたっていたが「くさい」と窓から顔を出す同級生もいた。学校に戻ると、先生が悲しげに話した。「あの臭いはみんなが出したゴミの臭いだよ。みんなのために頑張っている人に「くさい」というのはどうかな」。全員の顔がこわ張った』。
 F氏はこのときのことを今でもふと思い出すそうです。F氏にとってどのような意味をもつ記憶なのかは分かりませんが、私には担任教員の未熟さを表すエピソードとしか思えません。
 それは、子供理解、教材理解が共に不足しているからです。小学校中学年の子供は正直に反応するものだという理解、ゴミリサイクル工場は臭気がするという知識、この二つを合わせれば「臭い」という声があがることは容易に想定できますし、その言葉がスタッフを傷つけることも十分に想像できます。
 なんの手立ても取らなければ、望ましくない事態が生じると分かっていれば、事前にそれを防ぐ手立てを講じる、それが教員の務めです。それを怠って、問題を生じさせてから、注意したり指導したりするというのは、自分の未熟さの結果を子供に押し付け、心理的な負担を負わせる行為であり、避けなければなりません。
 ゴミを出したのは誰か、ゴミが放置されたままだったらどうなるか、という問いからゴミの処理、リサイクルの必要性や意味に気づかせる、しばらく放置した少量のごみをビニール袋に入れて保管しておき、その臭いを一瞬かがせることで、ゴミを集めるとき処理をするときの苦労を想像させる、作業に従事するスタッフの方にどのように接すればよいか考えさせる、そうした指導を経て、社会科見学に出かける、それが教員に求められる指導の一例です。
 社会科見学等の校外学習は、関係する人々の善意による協力で成り立っています。そんなことはないと思いますが、もし、リサイクル工場の方々が子供の態度、教員のいい加減さに不快感を感じ、今後は見学お断りということにでもなれば、未熟な教員一人の行為が、今後のその学校の学習に大きなマイナスをもたらす。そんな可能性さえあるのです。
 教員って、そんなに気楽なものではありません。

 

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