カツライス(その2終わり)
なんと、豚カツとご飯はそれぞれ別の大皿、そして手前にはナイフとフォークが置かれているではないか。
田舎者の私が驚くにはそれだけでも十分だと言うのに、誘ってくれた同級生はさも慣れたと言わんばかりの手つきで、
左手のフォークの背に右手のナイフでご飯を盛りつけ、スムースに口元に運ぶではないか。
「初めてだ」とはとうとう言い出せなかったが、手つきと戸惑ったさまで十分に初めての経験だと言うことは、
伝わった事だったと思う。今では長岡の名物と知られた洋風カツどん「洋カツ」だと後日知ったのだが。
帰宅し、その話を母にして、ナイフとフォークの購入を早速頼んだ。
当時スプーンはフォークはまだしも、ナイフなど一本も無かった我が家だったのでしたから。
それからは軟派を気取って同い年の従姉を誘いだし、映画を見たり、
どきどきしながら喫茶店に入ったことなども懐かしい。
その頃は田舎出の高校生の私も喫茶店デビューも果たしていたのです。
(終わり)