カツライス(その1)
食べ物好きな両親に育てられ、それなりに美味しいものは食べていた。
しかし、貧しかった我が家には外食など習慣にも無く、家族そろっての外食など映画の中の物語の様なものだった。
第一、村から見たら大層な町の堀之内とは言っても、洒落た食堂、レストランなど無かったのだったと思う。
そんな田舎の貧乏息子が、長岡の高校に入学し、都会とは呼べないまでも、
親に連れて行ってもらった事も無い大きな町に通うことになり、町の暮らしに触れる事となった。
長岡市の外れから同じ電車で通うことになった同級生が居た。
農家の長男ながらさすがに長岡市の中心から離れているとは言え、結構世慣れした町の子の匂いを持っていた。
その友達にある日、突然「おい、豚カツを食べに行こう」と誘われた。
田舎者とてさすがに豚カツくらいは知っているし、勿論その頃は家でも母が作ってくれて食べていた。
しかし、友達が誘ってくれた豚カツ屋と言うのが、どうも想像していた雰囲気とは違う。
そして、注文に応じて出てきた品物を見て度肝を抜かれる思いがした。
(続く)