ほぼ週二 横浜の山の中通信

人と異なる視点から見る

技術に絶対は無い ~池袋の暴走事故と練馬区の地面陥没~

2021年03月22日 | 科学・技術

「1場所を2日で暮らす大横綱」

 

「1年を20日で暮らすよい男」(要は昔の力士のこと、1年に20日しか興行が無かった)という言葉があるが、最近は「1場所を2日で暮らす大横綱」です。

 

ここから本論。

技術者は技術に詳しいので、技術の限界を知っている。だからこそ、技術者は一般の人よりも技術に懐疑的だと思う。そういう観点から下記の二つの事故について考える。

 

池袋の暴走事故

 

これは、高齢でヨボヨボの元通産省工業技術院長が、プリウスを運転中に池袋の繁華街で暴走し、自転車に乗った女性とその子供を死亡させ、通行中の数人を負傷させた事件。

 

報道によると、プリウスが暴走した原因はアクセルとブレーキを踏み間違えと推定されている。しかし、元工業技術院長は裁判でプリウスが誤動作したと主張している。これに対して検察は、トヨタの技術者にプリウスの誤動作は無かったと証言させている。

 

ここからは一般的な話。半導体回路は電気ノイズで誤動作する可能性もあるし、組み込んであるソフトにバグがあると、限られた条件で誤動作する可能性がある。

 

これらも一般的な話。昔Macを使っていた頃、突然フリーズして作成中の文書がパーになり、「スティーブ・ジョブズのバカヤロー!」と叫んだことが何回かあった。最近でも、Windows10で動くEdgeで、Edgeがうまく立ち上がらないことがあって「ビル・ゲイツのバカヤロー!」と叫んでいる。

 

私の仕事でも、社内の同僚技術者の作った半導体回路のソフトにバグがあり、大事件になったこともあった。

 

池袋の話に戻すと、トヨタのプリウスの半導体回路は正常に動作したのか、それとも誤動作したのか、これを後から確実に証明するのは難しい。それで、車の制御信号を記録する必要があるが、プリウスにはこういう装置はあったのかな? 車のように、重大事故に関わるものについては、このような装置が必要と思う。メディアの報道を聞いたり読んだりしていると、プリウスにはこのような装置が無かった(明確には書いていない)と思われる。

 

練馬区の道路陥没と空洞

 

これは、東京都調布市の東京外郭環状道路(外環道)トンネル工事現場付近で起きた道路陥没事故。この事故のあと、現場の近くの地中を調べると何箇所かの空洞が見つかっている。当初NEXCO東日本は、この陥没事故や空洞はトンネル掘削との関係は不明と言っていたが、素人が考えてもトンネル工事が原因と直ぐにわかる。

 

このトンネルは、地下40mより深い部分を掘り進む大深度地下の工事。掘削する部分が地下40mより深いなら地表の家に影響を及ぼさないということで、地表の住民の許可が不要という法律を国土交通省が作った。

 

しかし、道路陥没事故が起きた周辺では、トンネル工事が始まってから、振動や物音、それに住宅のひび割れが住民から指摘されているので、地下40メートルより深い部分の掘削であっても、土質や工事方法によっては地表に影響することを示している。

 

大深度地下の法律を作った時は、地下40メートルより深いなら地表への影響はまず無いと技術者は結論した(あるいは経済的な面から行政官が決めたのかも?)のであろうが、一律に40メートルでは不十分だったことになる。

 

リニア中央新幹線工事でも、地下40メートルより深いところを掘削することになっているので、練馬の陥没事故の影響は大きい。

 

技術に絶対は無い!

 

もうひとこと言っておきたいのは、こういう技術的な問題を技術に詳しくない裁判官が判決を出すのは茶番劇だと思う。(池袋の事故は裁判になっているが、練馬区の事故は未だ裁判になっていない)裁判官が技術的な判決をすることについては、いずれ書きたい。

 

裁判に絶対は無い!

 

2021年3月22日

 


最新の画像もっと見る

コメントを投稿