ほぼ週二 横浜の山の中通信

人と異なる視点から見る

日本の企業は如何に衰退するか

2012年09月19日 | 会社

-技術系のM氏が会社で経験したこと

 

M氏は私の旧来の友人で、知り合ったのは20代でした。そのM氏と酒を呑みながらいろいろ議論した内容が面白かったので、私なりにまとめてみました。)

 

M氏が就職したのは、東証1部上場企業でしたが、その頃は決して大きい会社ではなく、本社は軍需工場を転用した地震が来たら倒れそうな3階建でした。その後、規模が拡大し、今ではほとんどの人がその名前を知っていると言っても良い大きい会社になりました。

M氏が入社したころは、技術開発に社運を賭けているといっても良いほど、金・人員を投入していました。その頃に、M氏は技術系として入社しました。しかし、M氏が中間管理職になるころは、その技術も製品も成熟し、次第に新しい大・中技術が出なくなりました。しかし、新しい大技術が出なくなっても、小技術を使って商品は次々と発売されて、想像以上の利益が出ていました。

 

そうなると、以前は技術開発能力を持った人物が評価されていましたが、昨今はトラブルを最小に抑えてスケジュール通りに、間違いなく製品化できる人物が評価されることになりました。役員クラスもそういう人物が多くなったそうです。製品を出すまでのトラブルを最小に抑える一番の方法は、製品に投入する新しい技術は最小限にして、大きく製品構成を変えずに、しかも新しい製品のように見せるということです。これはこれで、一つの技術能力かもしれませんが。

 

他社の中には、小技術の改良だけで製品を出し続けていて、かつ利益を出している会社も多いと思いますが、残念ながらM氏の会社は世界と競争していることもあり、小技術で改良しただけの製品ではそのうち行き詰ると考えています。しかし、現在は未だ利益を上げているので、しばらくは過去の遺産で食っていけると思います。

 

入社したころは、会社が小さいながらも新製品・新技術で社内に活気があったこともあり、その頃に行き詰った他社の話を聞くと、「なぜ、技術で華々しい成果をあげていたあの大企業が?」と思ったそうです。しかし最近は、自分の周囲の会社環境を観察すると、大企業が栄えてそして衰退していく理由の一端がわかった気がするそうです。

 

会社が衰退するいくつかの要因

1. 脅威となる製品が増える

当たり前ですね。小技術の改良やコストダウンをして製品を出しているうちに、他社あるいは他の分野で、その製品を脅かす製品が徐々に増えてくる。利益率が大きければ大きい製品ほど、他社の商品化の意思は強くなる。

 

2. 自社製品が売れているうちに茹で蛙状態

当初は、これらの製品は技術的に大きな脅威ではなく、しかも自社製品が売れているので、これらの製品を軽視している。しかし何年かするうちに、他社製品の品質も向上すると同時に、自社製品に無い特徴を出してくる。このようなことが続いた後、他社製品は自社製品のシェアを徐々に奪っていることに気がつく。 

 

3. スケジュール優先の製品開発

製品をスケジュール通りに出すことで利益が最大になると、これが最優先になり、スケジュールを遅らす要因になる製品での冒険(新しい企画や新技術を取り入れたり、新しい分野に対応できるような性能を出すよう設計する)をしようという気が、会社(販売・工場・企画部門・設計部門)に無くなる。

 

4. 仕事が非効率になる

会社が小さいうちは、仕事をする上で、その部門の長や個人の自由度が大きく、仕事は効率的に行える。しかし、会社が大きくなると、その部門の長や個人の自由度が狭まり、ダイナミックさが失われる。一例として、個々の部門の事情に合わせて規則を作ると作業が煩雑になるので、本社部門はそんな大変な仕事はしない。したがって、全社に合わせた統一的な規則を決めるので、ある部門では規制が厳格になりすぎ、弊害が多くなる。良く知られる例として、何をするにも口頭ではなく、文書での申請・連絡が求められ、やたらと書類が多くなる。

 

5. 暗黙のサボタージュ1
(これは、あまり話したくないと言っていましたが)新しい大・中技術が出なくなると、自分たちがいかに一生懸命やっているか、自分がマネジメントしている新技術開発がいかに重要かをトップに上手に説明する人が出てきて、トップは知ってか知らずか、こういう人を重宝します。テレビでNHKの深刻なドキュメンタリー番組ばかり見ていると、民放のおばか番組を見たいと思う気持ちと似ているのかも知れません。しかし、この人に新技術を製品に入れる気は毛頭ないようです。なぜなら、何もしないほうが、新技術を製品に入れるよりリスクが小さいからです。

 

M氏が製品開発部門だったので、製品開発部門の例で話しましたが、販売・工場・企画部門でも似たようなことが起きているのかもしれません。

 

 

6. 暗黙のサボタージュ2

新技術が出ないと、新技術を開発している部門の年齢構成が年々上昇していきます。そうすると、彼らは自分たちの使い道が次第に無くなるという立場を知っているので、自分と家族の生活をなんとか守ろうとします。例えば、他の部門に移って新しい仕事にチャレンジするという大きいリスクを取るよりは、現在の部門で何とか過ごせるうちは過ごそうという、よりリスクが小さい(と思われる)選択を行います。そのために、彼らはあらゆる手段をとって、開発/研究部門に残ろうとします。こういう部門からは、何年経っても新しい技術は出てきません。

 

こういう状態に会社が陥ると、個人の少しの力では変えられなり、内部からの変革は難しくなります。なぜなら、一部の人たちがこういう状態に陥っているのではなく、社内のかなりの部分の人がこういう状態なので、内部から変えるのは至難の業です。そうすると、外部の力を借りる必要が出てきますが、外部の力はきっかけにすぎず、長続きしません。ほんとうに変革するには、やはり内部が変わらないと状況は好転しないと思います。

 

日本の多くの会社にはそれぞれ違った事情があり、その内部の様子は外部からは窺い知ることもできないので、上記の要因が他社にも当てはまるかどうか、わかりません。 しかし、世間には、似たような会社があるのでは?と思っているそうです。

特に、最近の電気メーカーの惨状を見ていると、その原因の一部は経営の拙さもありますが、一部にはM氏の経験と似たようなことが起きているのでは?と思っています。

 

2012.09.19


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