鉄道発射ミサイルは脅威か!
9月15日に発射された北朝鮮の鉄道発射短距離ミサイルは、機関車が押す貨車2両の最後尾の貨車から発射された。この発射の様子は北朝鮮が動画で公開している。
北朝鮮発表の動画で見ると、この場所は穏やかな山々(低くもなく、高くもない)に囲まれた山の中の線路のようなところに見える。しかし、後から出てくるGoogle Earthの上空から見た写真では、この一帯は荒地のように見えるし、山に囲まれていないように思える。
トンネルから出て来た列車は数十メートル進んだところで停車し、最後尾の貨車の天井が開いてミサイルが出てきて、大量の白煙を噴出して空へ飛んで行った。
この動画を最初に見た感想は、
・山深そうなトンネルから出て来たので、ミサイルをトンネルに隠していたのかな。そうならミサイルの事前探知は難しそう。
・単線の線路の下に撒く砂利がきれいで、線路の周囲もきれいに整備されている。(ミサイル発射のために、整備したな!)
・架線が無い。(架線があるとミサイルは発射できない)
・線路脇に信号線を吊るす鉄塔と電線が2~3本見える
・ミサイルを1発打てば、発射時の爆発的な燃焼で、発射台を載せた貨車は損傷し、使えない(はず)。それに、線路に敷き詰めた砂利が吹き飛ばされたりして、線路も損傷するかもしれない。発射台を載せた貨車と機関車の間に繋がれた貨車は、機関車の損傷を最小にするためかな。そして、線路わきに張られた通信線も損傷するはず。
などと思った。情報が少ないので、とりあえずGoogle Earthで発射場所を特定しようとしたら、既に特定した人がいた。
発射場所を特定した人がいた
「鉄道プレスネット」というサイトの9月18日付の「北朝鮮『鉄道機動ミサイル』どこから発射したのか 国際幹線ルートの線路?」と言う記事がある。この記事では、北朝鮮発表の写真とGoogle Earthの写真を比較して、発射場所を特定している。両者の地形の特徴が全く同じなので、ここに間違いない。下にGoogle Earthの写真を載せる。
・場所は、ピョンヤン(平壌)とロシア国境の町ラジン(羅津)を結ぶ幹線の平羅線のピョンヤンから150キロメートルの地点で「巨次駅」の近く。
(Google Earthに「北朝鮮 巨次駅」と入力し、「巨次駅」の左右どちらかの線路をたどると直ぐに出てくる)
・この記事によると、平羅線は電化されているので、本来なら架線があるはず。発射に合わせて架線を撤去したとこの記事は書いている。
・ミサイルを積んだ列車が出てくるトンネルは数百メートルほどかと思っていたら、ミサイルを発射した3両編成+貨車1両くらいの短いトンネルだったので、このトンネルに列車を隠すのは無理。トンネルに隠してあった列車がしずしずと出て来るような北朝鮮の演出は上手いが、下手な演出は直ぐばれる。
別のサイトの情報として、
・北朝鮮の鉄道は8割ほど電化されている
よ~く考えると、ミサイルの探知は簡単では?
これらの情報から、初めに思っていたのと違い、探知は容易(少なくとも、トラックに載せる方が探知は難しい)と思えてくる。朝鮮・韓国の人たちは演出が上手い。
・全土の8割の電化した線路からミサイル発射する場合、発射する前に架線を撤去する必要があり、衛星から監視していれば発射の兆候はわかるはず。
・残りの2割の非電化路線から発射する場合は、架線の撤去は不要。しかし、電化していない路線は幹線ではない(多分)ので、線路も整備されていない可能性大。そうであれば、重量のあるミサイル搭載列車が入線するには、線路の改良が必要。これは衛星から監視していればわかるはず。
・ミサイルを発射すると、搭載している貨車や線路、周辺施設も損傷する可能性が大きい。通常使用している線路なら、補修しないと後で使用できない。
・ミサイルを隠して保管するためのトンネルが別に必要になる。日常使用している路線には、平常時トンネル内にミサイルを隠しておけない。保管用のトンネルを作っても、そのトンネルに至る線路が必要になるので、衛星から監視していればミサイルの保管トンネルはわかるはず。
思ったほど、脅威ではない
こうしてみてくると、鉄道移動ミサイルは、あまり役に立たないのでは?と思う。鉄道発射には、発射する線路とミサイルを隠しておくトンネルが必要だけど、線路やトンネルは衛星で監視できる。
TVで鉄道から発射するミサイルを指して、「北朝鮮はよく考えている」と誰かが言っていたが、そんなに考えていないのでは?と思う。トラックなどの車両で移動するミサイルの方に自由度があり、保管場所も発射場所も見つかり難いと思う。ミサイルを積んだ列車の移動には線路が必要なので、それほど自由度があるとは思えない。
じゃあ何で北朝鮮は「鉄道機動ミサイル連隊」を作ったのか? 金正恩の思い付き? あるいはミサイルを積載するトラックなどの車両(中国製)は故障がちであるが、最近は中国から部品を入手出来ないので修理できない。それで北朝鮮国内で修理ができる鉄道を使わざるを得なかったのでは?と思う。理由は、両方かもしれない。
2021年9月22日