ひまわりの種

毎日の診療や暮しの中で感じたことを、思いつくまま書いていきます。
不定期更新、ご容赦下さい。

コメントをお寄せ下さった方へ

2011年07月10日 | 東日本大震災
たくさんのコメントをいただき、本当に感謝しております。
ただ、どこの誰かがわかってしまうコメントもありまして、
大変申し訳ございませんが、アップしませんでした。

 ・・・って、わたしがどこの誰かはもうすでにわかる方にはわかってると思いますが・・・(^_^;)

それで、一部を抜粋し、この場を借りて御礼申し上げます。

 flyingtenorさん:
  「地味だけれど,こんな風に「闘って」いる人もいる。いい加減な情報を鵜呑みにしたり,
  さらにはそれを流したりしないようにしたいと思った。
  ~福島で暮らすということ~小児科医として思うこと - ひまわりの種 http://t.co/UeqKE1x(07月05日) Twitterから 」

  ありがとうございます。

 Unknownさん:
  「引き続き福島の子供達をよろしくお願いいたします。」

  はい。がんばります。(ウチは夫婦仲はいいですよ・・(^_^)b )

 自主避難しているお母さま:
  「結局は自分たちの「残る」という選択を正当化したいがため、尊いものと説きたいがために、
   逃げる者の足を踏んづけているのです。

   じゃあ、あなたは、こどもがもし病気になったとして、因果関係を国が認めてくれると本当に思えますか?
   水俣、原爆症、B型肝炎、薬害エイズ…
   これらの悲劇の歴史をみて、誰がそんなことを信じられますか?

   わたしは今回の国の対応を見て、自分の身は自分で守らなければならないんだと痛感しました。
   こどもにもそれを伝えていくつもりです。

   あなたの発言で、「地元の小児科の『先生』が避難させるのはおかしいと言ってる。おおげさだ。ヒステリーだ。」
   と自主避難者を非難する声が高まっています。
   避難するのに家族を説得するのにとても大変な思いをした人もいます。
   夫や両親に「帰ってこい」と言われ続けて、それでも帰らない決意をした母子もいます。
   どうか、避難するものの邪魔をしないでください。

   わたしは避難しない(できない、ではなく)人の選択を尊重します。
   どうぞこれからもお達者で。」

  わたしの真意が伝わらないことは残念ですが、
  ”逃げる者の足を踏んづけている”つもりでも、”邪魔をする”つもりでもありません。

  避難するにせよ、ここで生活するにせよ、そのことで家族や友人関係に軋轢を生じている、
  その原因のひとつは、放射線への正しい理解がないこと、なのだと思うのです。
  さらに、この原因を作っているのが、かめ吉さんがコメントなさっている状況だと思います。
  わたしはそのことをとても残念に思うのです。
  「反原発」の活動と「福島の子どもを放射線から守る」こととは、区別すべきだと思っています。
 
  もちろん、自主避難なさったお母さま方が、理解がない、という意味ではありません。
  何を、どう怖がるかは、個人個人で受け止め方が違います。
  自主避難という方法を決断した、その時の親としての思い、そのことには自信を持っていいと思います。

  ただ、これから先、わたしのブログが、
  自主避難をなさった方々にも、今後の福島県を考える上での参考のひとつになれば、と思っています。
  その意味で、ロッカーさんのコメントは、とても詳しく丁寧に解説されていると思いますので、
  これも参考のひとつになさっていただけますか。
  
  自主避難なさったお母さまとお子さまが心穏やかに暮らせますよう、心から祈っております。

  


メディアの功罪

2011年07月10日 | 東日本大震災
 「ペンは剣よりも強し」

このことを、常に心にとめて記事を書いて下さるジャーナリストの方々は、
いったいどれだけいらっしゃるのだろう?

・・・と書くと、まるで報道関係者はみんないいかげん、
とわたしが思っているように捉える方もいらっしゃると思うのが、そういう意味ではない。

わたしたち医師はふだん、患者さんたちにご説明する時に、
「絶対」という表現はできるだけ使わないようにしている。

「それはほとんどの場合、大丈夫です。心配はありません。」

という表現でも、「絶対大丈夫です。」という意味では、実はないのだ。
わたしのブログのずっと以前の記事にも書いているけれど、
医療にかかわることで、いや、世の中のほとんどのことで、
「絶対に~」と言い切れることなんて、ないんじゃないか?

 その最たるものが、今回の原発事故だけどさ。

説明するわたしたちの口調や表情と、説明を受ける患者さん側との、
その場における「人と人」とのやりとりの中で、言葉の表現は微妙に異なってくる。

それを、文字にしてしまうと、第三者として読む人がどのように解釈するかで、
また微妙に意味合いがズレてきてしまうことがある。

取材を受けるときにも、医師は「絶対に~だ」とは言わない。
それを「絶対に」という端折った表現には置き換えないで欲しい。

文字を用いることを生業にする方々は、自分の用いた言葉がどのように読み手に伝わるか、
そのことをしっかり考えて書いて欲しいと思う。
「まずはシナリオありき」では書かない。
それは最低条件ではないかな。

「まずはシナリオありき」・・・医療界でこれをやったら「ねつ造」ですよ・・・。

福島県小児科医会から県への要望書・地元紙のこと

2011年07月10日 | 東日本大震災
6月の始めに県小児科医会の理事会があった。
7月3日に開催される総会及び講演会の打ち合わせだ。
その席で、県小児科医会としても具体的な要望書を県宛てに出そうということになった。
理事会で話し合い、6月下旬に提出した。
以下ははその全文。

__________________________________________


福島県知事 佐藤雄平殿
平成23年6月15日

                           福島県小児科医会
                            会長 太神和廣

              要 望 書

  放射線被曝から小児の健康をまもり、未来ある子どもたちを育むために

 この度の東日本大震災による震災、津波の被害に加え、本県では東京電力福島第一
原子力発電所の事故による放射線汚染という未曾有の災害にみまわれました。今現在
もこれらの災害に懸命に対応されている県知事以下県職員ならびに関係者の皆様方に
は、心より敬意を表します。
 さて今回の原発事故に伴い福島県を中心とした広範囲な地域において放射性物質の
飛散・降下により多くの一般市民が放射線を被曝する事態となっております。とりわ
け子どもたちにとってはその影響は心身両面において特に憂慮されるべきものであり
ます。また子どもたちの保護者においても子どもの健康に対する不安は高まっており
ます。
 私たち小児科医は小児の健康と命を預かる立場より、今後および将来にわたって放
射線被曝の直接的影響および風評被害を含む間接的影響から福島県の子どもたちを守
るために以下の事項を要望いたします。

1. 福島県内のすべての地域において子どもたちの放射線外部被曝線量を調査し、ま
 た内部被曝の可能性がある地域については個人レベルでの内部被曝も測定し、また
 その結果を速やかに公表することを要望する

2. 県内すべての地域の子どもたち(および事故当時妊娠中の母親より出生した子ど
 もたちも含む)に対し放射線被曝による健康影響について包括的かつ長期的な健康
 管理を行なうことを要望する

3. 県内すべての子どもたちおよびその保護者に対し、放射線被曝や避難に伴う不安
 の有無、風評被害に伴う精神的ストレスなどの有無について調査し、必要な場合に
 はカウンセリングなどのこころのケアおよび避難(自主避難も含む)に伴う具体的サポ
 ートを受けられる体制を整備することを要望する

4. 現在の被曝線量を出来る限り速やかに低減するために、表土除去をはじめとする
 放射性物質除染を子どもたちの行動範囲すべてにわたり、可及的速やかに行うことを
 要望する

5. 福島県の子どもたちの心身両面での健康かつ安心な生活を将来にわたり保証し、
 また子どもたちの受ける将来的な風評被害を避けるために、福島県は県内の原子炉を
 すべて廃炉とする方針を明確にすることを要望する

 将来をになう今の子ども達が心身共に健やかに成長することなしに、福島県の復興
はありえないと私どもは考えております。そのためには、福島県小児科医会総員をあ
げて地域医療を守り協力する所存であります。これらのことを鑑み、何卒最大限のご
配慮をいただきたく、ここに要望書を提出いたします。
________________________________________

この要望書は、7月3日の総会でも事後承諾ではあったが、承認された。
当日、地元紙2社の記者さんも取材にいらしていた。
会長が対応し、その後は忙しい会長に代わってわたしが補足した。
補足の内容は、今日(7月3日)のメインは、
この報告その他事務的な報告だけではなく、講演会2題なんです、と。
お時間があれば、ぜひ聴いていって下さい、と。
プログラムと、この要望書のコピーもお渡しした。

講演1が、国立成育医療センター感染症科の先生の、
  「新しい予防接種とそのすすめかた」
    
講演2が、産業医科大学放射線衛生学講座の先生の、
  「小児科医が心得ておくべき放射線被ばくの基礎知識~原発事故を中心に~」

特に講演2は、メディアの方々にもぜひ聴いて欲しかった。

その翌日。
地元紙の一面を飾ったのは、福島大学で行われた広瀬隆氏の講演会と、
それを聴きに来る市民の方々の様子を取材したもので、
「後悔したくない わが子と「県外脱出」探る母」
と大きな見出し付きだった。

県小児科医会の総会の記事は、県内版に小さく載った。
新しい会長就任と、こんな講演がありましたよ、という数行だけだった。
もちろんこの要望書の内容にも触れていないし、講演の内容も、出席者の感想もなしだ。

わたしは、小児科医会の活動が一面記事にならないことを不快に思ってるのではない。

広瀬隆氏は、もともと反原発の立場でのさまざまな著書がある。
早稲田大学理工学部を卒業しているが、原子力の専門家ではない。もちろん、放射線医学の専門家でもない。
いわゆるノン・フィクションライターだ。
書くことは個人の思想の自由だから、そのことを非難するつもりはない。

ただ、同じ日に偶然にも、原発事故による放射線リスクのとらえ方に関する講演会が県内で行われたのに、
「危険だ」を声高に主張する方の記事のみを大きく取り上げる地元紙の姿勢は、残念だと思う。

こうやって、「今、本当に伝えなければならない’まっとうな’情報」は、埋もれてしまう。

メディアなら、双方の情報をバイアスなく伝えるのが仕事ではないのかな・・・。
しかも、地元紙なら、なおさら。