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屋根裏の美少年 西尾維新

シリーズ3作目でようやくこのシリーズとの付き合い方に慣れてきたような気がする。読みながら何かを期待するというよりも、読んでいる時の軽妙な感じを楽しんだり、ちょっとした仕掛けに驚いたりしながら気楽に読む、何だか本シリーズはそんなライトノベルとの付き合い方の1つを教えてくれているような気がする。ライトノベルを読むことに時間を費やすことが性に合う人と合わない人がいるだろうし、それぞれのライトノベル作家には個性があると思うが、少なくともこの作家の作品は読んでいて気持ちが良い。巻末をみると、もう次の次まで刊行予定が決まっているようで、ビックリだ。本書からイラストレーターが変わっているが、作品の刊行にイラストレーターが追い付けないという噂は本当なのかもしれないと思った。(「屋根裏の美少年」 西尾維新、講談社文庫)

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水族館の殺人 青崎有吾

「体育館の殺人」に次ぐシリーズ第2作目の本書。第一作目と同様、主人公の少年が小さな事実から事件の真相を推理していく過程は見事というしかない。あまりにも見事すぎて、前作同様本作でも、何だか騙されているというか煙に巻かれているような気分になってしまった。また、本格ミステリーとしてみた場合、推理を進めるための材料は全て提示されているという意味ではフェアなのだろうが、文字で書かれたものと実際の現場の状況を実際に見るのとでは大きな違いがあるはずで、その意味でやはりフェアじゃないという気になってしまうし、現場の状況を頭の中で再構築して自分で推理してみようという気にならない。そういう点が不満につながるかといえば、このシリーズの場合、それはそれでやはり面白という気になってしまうから不思議だ。自分で推理することを放棄してしまえば気楽に読めるし、ある意味、推理の過程を全部読み飛ばしてしまって主人公のたどり着いた結論だけを読んでもそれはそれで楽しめる。単純に登場人物のキャラが立っているからかもしれないが、そのあたりがこの作者独特の才能なんだろうなぁと感じた。(「水族館の殺人」 青崎有吾、東京創元社)

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レプリカたちの夜 一條次郎

各方面で高い評価を受けているようなので、読んでみることにした。舞台は、多くの動植物が絶滅してしまったという近未来。未来とはいってもあまりテクノロジーは進歩していないところが面白い。主人公は、その未来世界で、絶滅してしまった動物の観賞用のレプリカを作っている工場で働く青年で、その彼がある日工場内で絶滅したはずのシロクマが歩いているのを目撃するところから話は始まる。その後も、かれの周りでは様々な奇怪な現象が巻き起こる。荒唐無稽な出来事が起こる物語では、通常読み手の関心は、これがこの作品の世界の中で本当に起きている出来事なのか、それとも主人公の心の中の妄想なのかという点に収れんする。前者ならばすごく立派なSF作品ということになるだろうし、もし後者であればSFというよりは幻想小説ということになる。本書はそのちょうど中間のようなものかもしれない。ビックリするような結末ではないが、読んでいて面白かったし、色々考えさせられる一冊だった。(「レプリカたちの夜」 一條次郎、新潮社)

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