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法医学者が見た再審無罪の真相 押田茂実

こうした新書としては異例な感じだが、本の冒頭、著者の略歴が延々と数ページに亘って書かれており、少し戸惑ってしまった。もしかすると、自分が読みたいと思った過去の再審裁判についての解説書・啓蒙書ではなく、現役を引退した学者さんの思い出話集の類ではないか?本の選択を誤ったかも?と思ったのだが、本文にまで読み進めていくと、日本の再審裁判の歴史やパターンを丁寧かつドラマチックに解説してくれるちゃんとした解説書・啓蒙書であることが判ってホッとした。さらに読み進めていくと、本書の著者は本書に掲載されたいくつもの裁判に直接関与した人であることが判り、しかもその本文の記述が、冒頭の著者の略歴のなかのある時期の記述と呼応して、解説に深みを与えているということが判ってびっくりした。再審裁判の歴史に深く関わった人でないと成立しない構成で、この人でなければ書けない本ということは間違いないだろう。しかも、裁判の過程で、著者と見解を異にした学者、あるいは著者の意見を証拠として採用しなかった裁判官に対する舌鋒の鋭さは相当のもので、解説書ながら読んでいて大変面白い。流石に、著者が「経歴詐称に等しい」となじる研究者の実名は伏せられているが、各裁判の担当裁判官の名前は実名で書かれており、本書の刊行で随分敵を作っただろうなぁと思った。著者がそれだけのリスクを承知で書いた本だけに面白さは折り紙つきだ。(「法医学者が見た再審無罪の真相」押田茂実、祥伝社新書)

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