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ぶらり世界裁判放浪記 原口侑子

世界中でNPO活動を行なっている著者が訪れた国々で街を観察したり、裁判所を傍聴したりした経験を綴ったエッセイ集。訪れるまで名前を知らなかったという国にバックパックを担いで行ったり、言葉の分からない国の裁判を傍聴したりと、内容はかなり大胆。各国での裁判の傍聴では、裁判の内容や日本との法律の違いなどだけではなく、裁判所の建物の佇まい、裁判関係者の服装や態度などを観察するのだが、これが意外なほど様々なことを教えてくれる。著者の些細なことから本質を読み取る洞察力、観察力、それ以上にその背後にある行動力には脱帽だ。裁判所という社会の歪みとか問題が如実に現表れる場所だけにその内容は極めて重い。トルコでの裁判所を見学するまでの係員とのやりとり、ブラジルの裁判の完全公開など面白い記述も満載の楽しい一冊だった。また、かつて欧米の植民地だった国の司法制度が、欧米流の司法と現地の伝統的な規律の2層構造になっているという点について、日本でも司法の場や判決文で「社会通念に照らして」とか「社会的制裁を受けている」といった表現の中にそうした仕組みが内蔵されているとの指摘はとても面白かった。欲を言えば、訪問した国にアジアの国が少ないので、続編として「アジア編」を是非とも期待したい。(「ぶらり世界裁判放浪記」 原口侑子、幻冬社)は
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