goo

本と鍵の季節 米澤穂信

一言で言えば、高校の図書委員である主人公が持ちかけられる様々な謎を明晰な頭脳で解き明かしていく青春連作ミステリー。全般的に高校生にしては会話が哲学者のように大人っぽい気もするが、自分のことを振り返ってみると、高校生くらいの時の方が今よりもずっと思弁的な言葉を発していたような気もする。本書の大きな特徴は、事件の真相を明らかにした後の主人公の振る舞いだ。単に犯人の企みを指摘するだけとか、犯人に同情して見逃すといった単純な結末は一つもない。そこにあるのは、正義感とか犯人への共感という言葉だけでは捉えられない若者らしいものの見方だ。このあたりがありがちな普通の青春ものとは違う本作の大きな魅力だと感じた。(「本と鍵の季節」 米澤穂信、集英社)

コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )